第3話

 僕が鳥に落とされた場所。

 背後には切り立った崖ッ!

 前方にはどこまでも広がる森ッ!


「……前だな」

 

 後ろに進んだらそのまま落下。

 その下にあるのは大海。死んでしまう。


「ふぅー」

 

 8歳でしかない僕……脆弱なこの身ではあるが、この世界には魔力を使う魔法という奇跡の力がある。

 魔法を活用し、こっそり持ってきたドワーフ製の短剣を利用すればなんとかこの見知らぬ森であってもなんとかなるはずである────ッ!!!

 さぁッ!働けッ!!!

 YouTubeで培ったサバイバル知識よッ!

 

 ■■■■■


 三日後。

 ジメジメとした森の中。


「駄目だ……死ぬ。死んじゃう……食料がァ……」

 

 僕は木の下で蹲り、空腹を前にして頭を抱えていた。

 森の中で三日間過ごした僕は食糧不足に陥ってしまっていた。

 

 この森の中に生えている木の実や葉っぱ、きのこ……どれも食べれるがどうかわからないものばかり……この三日間の間で食べられたのは運良く狩れた小動物のみ。

 それ以外は口に出来ていない……なんとか水は確保できているけど……。

 圧倒的食糧不足。ご飯食べなくても一週間は大丈夫らしいが、僕はとてもじゃないが一週間も耐えられない。


「このきのこを……食べるか?」

 

 僕の視界に入るのは……毒々しい色のきのこ。

 これを食べるのは、しばし勇気がいる。

 というか、死ぬだろ……これ。普通に死んじゃうでしょ。こんなの食べたら。


「……」 


 拝啓。

 お父さん。お母さん。

 国元より追放した二人の娘はこれより毒キノコを食べ、死ぬことになりそうです……三日も、頑張りましたよ。

 この8年間。

 同性ということを利用して女の子たちに抱きつき、くんくんし、脇毛ハムハムし、ペロペロし……既に人生を謳歌しました。

 僕の生涯に悔いはなさそうです。

 

「いただきます……」

 

 僕は毒キノコへと手を伸ばし……採取する。


「……っごく」

 

 僕はつばを飲み、毒キノコを口に入れる……その寸前。


「人の声ッ!!!」

 

 遠くから。

 誰かの声が聞こえてきたような気がし、僕は慌てて顔を上げ、毒キノコを捨てる。


「……っ」


「よし、間違いなく……いる」

 

 遠すぎて何を言っているのかはわからないけど……間違いなく人の声はした。


「これでラノベのように誰かが襲撃されているんだけど……ッ!奴隷商人とかはやめてよね!」

 

 僕は油断なく、音を極力出さないように注意しながら声がした方向に向かって行動し始めた。

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