第18話 爆発
「はあ……助かった」
堤防の上にまで上がった俺は、ほっと一息つく。俺たちを追跡してきたうみうしは、自分たちの分の敵を対処し終わった他のプレイヤーによって、排除されつつあった。
「うー、気持ち悪い」
身体から粘液を漏らして、砂浜のゴミへと変わるうみうしを見て、七里が顔をしかめる。
「俺に比べりゃましだ。アホ」
俺は慎重に毒液のついていない部分を摘まんで、来ていた服を脱いだ。すぐさま、事前に準備していた、予備の服に着替える。素材等は全く同じものだ。
「まー、みんな無事だったからいいじゃーん」
七里が罪悪感を誤魔化すように口笛を吹いた。
「……くない」
「え? 由比、なに?」
「良くない! 七里ちゃんは自分勝手すぎるよ!」
突如、目を見開きそう吐き捨てた由比ちゃんは、自らの役割を放棄するように杖を地面に叩きつけた。
「な、なに? そりゃ、ちょっとはしゃいじゃったかもしれないけど、そんなに怒ることないじゃん。由比は怪我一つしてないんだし」
いつもは朗らかな由比ちゃんが感情を剥き出しにした姿に、七里は気圧され気味に反論する。
「そういう問題じゃない! いっつも、いっつも、お兄さんに迷惑ばっかりかけて、それでも七里ちゃんはお兄さんの妹なの!?」
「そんなの当たり前じゃん」
七里が唇を尖らせる。
優しい由比ちゃんは俺のことを心配してくれていたのか。そう考えると思わず胸が熱くなる。しかし、ぶっちゃけもう、俺は七里の傍若無人にはすっかり慣れてしまって、特に迷惑だとも意識しなくなってしまっているのだけれど。
「当たり前じゃないよ! 大和さんみたいな兄がいることが、どんだけ幸福なことか、七里ちゃんは全然わかってない。甘えるのはいいよ。兄に甘えるのは妹の当然の権利だし、むしろ、甘えないのはお兄さんに対して失礼。だけど、それはわがままとは違うんだよ。妹は兄に与えられた以上の愛情を返す義務があるの。それが、正しい妹の――」
あれ? なんか方向性がおかしくね?
「もう、ごちゃごちゃうるさいなあ。お義兄ちゃんと私のことは、部外者の由比には関係ないでしょ」
七里が由比ちゃんの言葉を遮って、ぼそっと漏らす。
瞬間、確かに俺はブチッと由比ちゃんの頭の血管が切れる音を聞いた気がした。
「……関係ある」
「はあ? どんな関係があるの。言ってみてよ」
七里が挑発するように由比ちゃんに向けて中指を立てた。
「私が……私が、大和さんの本当の義妹だ!」
由比ちゃんが叫ぶ。
なにそれこわい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます