4.準備

 翌日の昼、結城は小さな旅行鞄を一つ持って、東京近郊にある純心寮に行った。八城はもう来ていて、結城のために2階の空いている部屋を用意してくれていた。


 寮に入ると、結城はまず八城に言った。


 「八城先生。今日13日の金曜の夜から、2階のトイレは絶対に使わないように女子寮生全員に連絡していただけませんか。1階のトイレは使っていただいて構いません。不便ですが、1階で全員が用を足してください」


 「はい。分かりました。それで・・結城先生は?」


 「僕は、今夜から2階のトイレにずっと入って、張込はりこみをします。と言っても、夜だけですが・・」


 「やはり、2階のトイレで何か起こるんでしょうか?」


 「分かりません・・だが、何か起こるとしたら今夜でしょう」


 「それで・・私は?」


 「八城先生は2階のトイレの前に椅子を出して、椅子に座って待機してください。申し訳ありませんが、今夜、僕に付き合ってください」


 そう言うと、結城は八城と一緒に、2階のトイレに行ってみた。七海のノートにあった通りだ。トイレの中はモスグリーンで統一されていて、個室が3つ並んでいた。個室の中には最新式の洋式便器が備えてある。便器の色もモスグリーンだった。

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