「ラジオ」「アブラゼミ」「前髪」

夏の暑い時期だった。前髪が伸びすぎたので近くにあった理髪店に行った。そこは古めかしい理髪店で、もちろんラジオも完備されており、そこの音楽を聴くのが毎回の楽しみであった。

"本日のお料理コーナー"

髪を切りながらラジオを聞いていると料理コーナーが始まった。

おかしい、いつもはこの時間はクラシックのはずである。

"今日は茶碗蒸しを作っていきます"

"まず最初にアブラゼミを茶碗の内側に貼り付けていきます"

"これで上質な油ができるんですねー"

ラジオはめちゃくちゃなことを言っている。

"次にミキサーにかけた蚊を先程の茶碗の中に入れていきます"

"赤く色づいてまいりました"

血を吸っていたらしい。

"イナゴを茶碗の中に入れていきます"

まだ解るものがきた。

"茶碗虫の完成です"

そこは虫のでもいいから卵を入れて欲しかった。

「……お客さん、終わりました。」

目が覚めた。

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