第22話 旅立ちの前(検証まとめ)

「もう一度確認させていただきますが、ソーマさんは騎士団に入っていただけませんか?」


街に戻るとライヤーはファーガスにアンデットはすべて倒され、街の安全が確保されたことを伝えた。

ファーガスは信じず警戒態勢を維持したまま偵察に何人か出されることになった。


「申し訳ないですが今のところ組織に所属するつもりはありません。」


「残念です。今後は魔法を学びに?それともハンターとして活動を?」


「そうですね。魔法は学びたいですが生活にお金も必要ですしハンターとしてもやっていくつもりです。」

「貰った報酬で普通の生活ならできるんでしょうけど良い装備はとんでもない価格みたいなので。」


「ではハンターギルドを使うことになると思うので騎士団の推薦書を出します。」

「これを登録時に出せばBランクで登録できると思います。」


そう言うとライヤーからPRに推薦状が届く。


「Bランク?かなり高いと思うんですけどいいんですか?」


「ハンターはEからはじまってAランクまであります。」

「騎士団の大隊長格くらいがBランクにあたります。そこからB+、A、AA、AAAランクが最上位ですね。」

「実力がある人が低いランクでいるのは損失だし、他の低ランクの人の迷惑になることもあります。」

「少なくともソロでスケルトンを数百倒せるBランクはあまりいないと思います。」

「まぁ実際ソーマさんのランクで直接誰かが損や得をするわけでは無いので気にしなくていいと思いますよ。」


「そういうことならこれで登録させてもらいます。」

「明日には発ちたいと思いますので、団長へ報告とお礼をお伝えください」


「街の事後処理含めお任せください。今回は情報不足のなかご協力ありがとうございました。」


ソーマは宿の部屋に入り一人になる。

シオンからも何か話しがあるかと思ったが何も言ってこなかった。

宿も騎士団の宿舎を利用するようだ。


(失敗で気まずいからか?俺を見捨てて逃げて後ろめたくなってる?)


ソーマとしては、シオンの失敗すら想定内であった。

最悪まったく戦力にならない可能性すら考慮しそれでもなんとかなると思っていたので、

初手で3割も削ったという結果はそう悪い物でも無かった。

結果として自分の手の内をシオンや騎士団に知られなかったからむしろよかったまである。


(落ち着いたら団長へ挨拶してシオンにも声をかけるか・・・)

(それよりも今回の戦闘で魔力、魔法についていくつか検証できたし分かっていることを整理するか。)


ソーマはこれまでの戦闘や騎士団の人に聞いた内容をもとに現状を整理する。


騎士団の推薦でBランクハンターに推薦されることになったが、実際の力という点ではソーマは実力不足と感じていた。

Bランクは大隊長クラスの力という事だが、今のソーマに模擬戦で戦ったゴドル大隊長ほどの力は無かった。

模擬戦はあくまで訓練で、命のかかった真剣勝負だったら結果はまったく違っていただろう。

スケルトン相手に勝てたのは強いというよりも、ソーマの戦い方が知能の低い相手と相性が良く、

魔力の使い方が燃費よくできただけであった。


(身体能力強化や、武器の強化は中隊長クラスくらいか・・・)

(魔法はまだレツとシオン以外比較ができないけど、おそらく威力はベテラン以下かな。)


魔力を使って身体能力強化を得意とする戦士タイプ。

魔力を武器や防具に纏わせ強化を得意とする魔剣士タイプ。

魔力を炎や氷に変え攻撃する魔術師タイプ。


この世界では魔力をどう扱うかによって戦士、魔剣士、魔術師と呼ばれている。

魔力は空気と同じように存在し、人間や魔物の中にもあるが、

それそのものを使うと言うよりは、体内の魔力を使って存在する魔力を操作すると言った方が正しい。


戦闘に使えるレベルに魔力を扱える人間は1%前後と言われ、

更にそのうちの7割が戦士、魔剣士タイプで魔術師タイプは3割程度。

男性は戦士、女性は魔術師が多い傾向にある。



(やっぱり魔法をもっと鍛えないといけないかな・・・)


ソーマはスケルトンを一気に数百も倒したシオンの雷魔法を見て改めてそう感じた。

大隊長クラスより力は劣るがそれを剣技で補えば勝つことも可能だし最悪負けない戦いはできるだろう。

だがあの魔法を受けたら一撃で死ぬだろうし、回避すらできるかどうか分からない。

魔法での防御するか、遠距離の攻撃手段が無いと魔術師や遠距離で攻撃する魔物相手に何もできない。


(魔法を妨害できる速さと威力の魔法をまずは使えるようになるか・・・)

(風魔法は相手に悟られにくいし弾速も早い。射程と威力をもう少し上げられたら実戦で使える。)


スケルトンに何度か使ってみたが距離による減衰があって射程はせいぜい50mほどだった。


(シオンは数百m離れた場所から詠唱も無く高威力の魔法を放っていたからあれを防ぐとなるとどうする?)

(いや、叫ぶ前に間があったな?あの間に魔力をこめていたとしたら溜めは数十秒はあるか?)

(とりあえず100m以上でも威力のある魔法は覚えたいな)

(魔力。魔法のある世界。魔物もいれば盗賊もいる。少なくとも生き残れる力がないとな。)


魔物についてもソーマは騎士団で聞いたが、魔力が固形化したものが魔石だが魔石が生じる際に魔物として実体を持つらしい。

実体が維持できなくなると身体は消え魔石が残る。その時に強すぎる魔力で傷つくと魔石は残らない。

魔石はこの世界でエネルギーとして使われているため価値を持つ。

強い魔物程大きな魔石を核とし、より大きな価値を待つ。


(そしてスケルトンは何百も倒して気づいたけど、戦う前と比べて俺、強くなってるよな。)

(倒して魔石になるときに生じる魔力を吸収している?身体能力強化と武装強化がより強くなったけど。)

(逆に魔法は何度か夜に訓練したときに分かったけど使えば使うほど成長してる。)

(威力、消費魔力、コントロール。それに体内の魔力総量も増えている気がする。)

(倒した魔物から魔力が吸収できるなら魔術師より近くで戦う戦士が成長し易い気がするけど、

逆に魔術師なら戦闘しなくても訓練で魔法使い続けるだけでも成長できるのか・・・)

(魔物倒して成長するってゲームみたいだな・・・ああ、でも強すぎる攻撃で魔石壊したら吸収できないのか?)

(自分が強くなったら強い魔物を倒さないと実質成長できないのか?威力を落として戦えばいいのか?)

(・・・・レツを貫いた後、それまで使うこなせていなかった火の魔法が使えるようになった。)

(その場の魔力をある程度吸収できるのはたぶん間違いない。)

(それにシオンの雷魔法を何度か受けたら俺の雷魔法の制御力も上がった。)

(威力の高い魔法を受けるリスクはあるけどチャンスがあれば検証したいな・・・)


(この国だとエレノア団長、バレンシア家の紹介状があるからいろんな面で役に立つんだろうけど・・・)

(侯爵家の名前を出し過ぎると逆に悪目立ちもあうるよなぁ・・・)

(変に目を付けられたくも無いし別の国に移るか。)

(とりあえずフランスに行った後どうするか決めるか。)

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