第17話 討伐任務

「紹介状は投資と言ったが、本来であれば投資に見合う能力を見せてもらわなければならないのは分かるな?」

「模擬戦を見てある程度の力は見せてもらった。話しをして人柄も分かった。」

「だが実績が無い。実績が無いからテイトのように文句を言う奴が出てくる。」


「たしかに無名な者がいきなり侯爵家から支援を受けるとなると反発が大きいでしょうね。」


「そこで仕事を1つ頼みたい。」


「私にできることであれば。」


「魔物の討伐だ。タラガの街でアンデットが大量発生する予兆がある。」


「エレノア様!?」


テイトが口を挟もうとするがエレノアは手で制し話を続ける。


「我々騎士団は現地の部隊含めて異邦人対応が最優先事項になって出せる人手が無い。」

「ソーマにはこれの討伐に当たってもらいたい。」


「エレノア様!今回のアンデットは数百の大規模発生で大隊で対応する予定のものですよ!?」

「それをソーマさんだけで対応できるとは思えません!」

「失敗した後の被害やその後の対応を考えると反対させてもらいます!」


「テイト、私はソーマ一人で対応しろとは言っていないぞ。」

「シオン、初任務だ。ソーマと共にアンデット討伐に当たれ。」

「実績の話はソーマだけではない。副長の価値を証明しろ。」


「承知いたしました。」


シオンは即答し任務を受ける。


一方の悠樹は即答はせずに質問する。


「いくつか質問があります。」


「何だ。」


「大隊の派遣を考えていたようですが大隊の規模はどれくらいでしょうか?」


「大隊長の下に中隊長5人、小隊長25人、隊員125人。その下に見習いが入る場合もある。」


「・・・・私達二人にそれと同等以上の戦力があると思いますか?」


「無いのか?さっきの模擬戦の時点では無かったかもしれないが今ならあるんじゃないか?」



「・・・・たしかに今はあのときよりもっと戦えるとは思います。」

「しかし数の差がありすぎます。一対一だと百回二百回やっても負けませんが百対一だと勝てません。」



「それを含めてできると判断した。」

「模擬戦で魔力を最小限でゴドル大隊長の攻撃を捌いていたのを見た。」

「逆にゴドルだと一対一を百回やる前に魔力が尽きる。」

「魔力に頼らない剣技や立ち回りを評価している。」

「シオンの魔法だけでも百や二百は削れると思う。それでも二人ではできないと言うなら期待外れだな。」



「・・・やれると思いますがシオンの安全の保障までは自信がありません。」

「騎士団の貴重な人材を危険に晒すよりは私だけで任務当たりたいと思います。」


身体能力強化する悠樹は最悪劣勢になれば逃げることはできる。

だがアンデットに囲まれたときにシオンの剣技と身体能力では離脱は難しいと思われた。


「ソーマさん余計なお世話です。団長がおっしゃられたように私は私自身の価値を証明しなければなりません。」

「私の魔法の威力や制御も上がっています。一人でも対応できます。」



「最初から二人でと言っている。ソーマ。お前の意思に関係なくシオンの任務なのだ。」

「任務中にもし死ぬようなことがあれば私の見る目とシオンの実力が足りなかっただけの事。」


「二人がそういうのでしたら・・・」



話が終わった後、悠樹達はそれぞれ部屋に案内されたが悠樹は城の訓練場を借りPRの収納を試していた。


(使い込んだ装備を収納って自分の魔力を通して馴染むという事か?)


訓練場のショートソードを手に取り魔力を流し武器を強化する。

収納をイメージするも剣は握られたまま何も変化が起きない。


(たしかにこれで収納出来たら店とかでも盗み放題だよな・・・)


魔力を流す量なのか期間なのか。条件さえ分かればかなり使い勝手が良いと思われたが、

予備武器を収納したくてもすぐにできないのではあまり意味があるようには思えなかった。


(そもそも収納の原理自体意味が分からないな。魔力が影響しているとしてどこに消える?)

(亜空間?三次元空間?仮に今とは違う空間に送るとしてその空間に何が入っているかどう判断するんだ?)

(ラノベのアイテムボックスに無数に入れた物の情報はどう管理される?)

(入れたら文字で内容が記録される?だがリンゴを入れたとして鮮度も大きさも一個一個違う。)

(スタックとか可能なのか・・・・?)


悠樹は考えていたがそもそも非現実の小説やゲームを基準に考えても当てはまるわけがない。

ご都合主義では無い以上、何か論理的な説明ができるはずなのだ。


(魔力とは何だ。火や雷に変換できる何らかのエネルギー・・・・)

(収納も魔力が働いているなら変換・・・物質を魔力に変換、、、再構築?)

(仮に変換だとして一度魔力に変換された物質を元に戻す?その時に何が必要か・・・?)

(少なくとも取り出すときにそのものを認識していなければならない・・・)

(認識?長く使うことで「自分の剣」を重さや形状、傷など認識する?)


悠樹はぼんやりと考えをまとめ試しにコンタクト型のデバイスのカメラ機能を使い手元のショートソードを撮る。


(これで「今持っている剣」の情報を確定、認識できた。)


そして収納することをイメージするとスッと剣はその場から消えた。


「おおお!」


悠樹は次にライブラリから先ほどの剣の画像を見ながら取り出すイメージをする。

すると先ほどの剣が目の前に現れ慌てて手にする。


「これってひょっとしてデバイス使えば無限に収納できるんじゃないか!?」


悠樹は興奮して訓練用の槍や剣、斧などを収納、取り出していく。


(すごいな・・・商売したらめちゃくちゃ儲かりそう。)

(デバイスの組み合わせできるのって俺だけなんじゃないの?)

(これは誰にも知られない方がいいな・・・ここで試すのはこれくらいにしておくか・・・)


「相馬さん、明日はアンデットとの戦いなのにこんな時間まで起きて訓練ですか?疲れますよ?」


悠樹は収納のテストに集中しており、突然話しかけられ驚きながらも返事をする。


「ああ、、、やられないように少しでも試しておかないとな。」

「そうだ。改めてだけどその相馬さんっていうのはやめてソーマでいい。」

「相馬とソーマ、ほぼ同じかもしれないけどニュアンスで気づかれることもある。」

「あくまで俺は元々この国の開拓村出身のソーマとしてひとまず今後も過ごす。」

「だから今後は二人の時もソーマと呼び捨てで構わない。敬語もいらない。」

「俺も紫苑はこの世界のシオンとして接するよ。」


「分かりました。・・・・分かったわ?」

「意識するとなんだか難しいかな?」


シオンは少し照れて嗤う。


「それにしてもアンデット討伐よく即答で引き受けたな。怖くは無いのか?」


「う~ん、どうだろう。少なくとも人じゃないしゴブリンみたいな生き物じゃないのは気が楽かも?」

「それに魔法のコントロールも分かってきてたぶんなんとかなると思うしね。」


「・・・・力を急に手に入れた時が一番危ないと思う。正直今回も敵の数や強さが正確に分からないのは避けたかった。」

「死ぬときは一瞬だからお互い気を付けよう。」


「・・・そうだね。」


お互い烈のことがよぎったのか少し気まずい雰囲気となる。


「今回の任務は近接の俺がシオンを出来る限りフォローするから。」


「出来る限りって。普通絶対守るからとか言うとこでしょ?」


「いやいや、数百のアンデット相手に一人じゃ厳しくない?あくまで出来る限りね。」

「自分の身は最後は自分で守れるようにシオンも身体能力強化は試しておいた方がいいと思う。」


「あっ、それならソーマ程じゃないけど少しできるようになったから大丈夫。」


「それなら案外今回は余裕かも?ま、油断せずいこう。」

「俺はもう少し明日に備えて魔法とか試すけどシオンはどうする?」


「今日色々ありすぎて疲れたから寝るわ。眠れなくて来たけど話したら少しすっきりして眠れそう。」


「それは良かった。おやすみ。」


シオンは部屋に戻り、ソーマは剣や魔法をその後数時間試した。

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