第11話 戦いの始末
「終わったのか・・・」
「そうだ、、、レツ!」
戦いが終わって緊張から解かれ座り込みたい気持ちだったが、
烈の傷が思い出せれあわてて駆け寄る。
馬車の近くで震えている商人の横に矢が刺さり肩から斬られた烈が横たわっていた。
「そうまさん、、、俺の魔法はすごいんですよ・・・」
「そうだな、、、何人も盗賊を倒したもんな・・・」
悠樹は答えながら回復魔法を使う。
肩の傷は少し塞がっていくが出血しすぎているのか、烈の肌は青白く血の気が引いていた。
「なんで、、こんな目に合うんですかね・・・」
「これから、冒険者になって、このせかいで、、、」
「おれは、、、しなないですよね?」
「・・・・・・」
言葉がだんだん弱くなっていく。
悠樹は焦りと諦めが混ざった複雑な気持ちの中、回復を続ける。
そのおかげか少し回復してきたのか血色もよくなったようだった。
すると突然烈は立ち上がり叫んだ。
「おかしいだろうがぁ!」
「おれは選ばれた勇者なんだぞっ、、、!魔法も一番使えたんだっ!」
「なんで、、そのおれが、、、しなないといけないんだ!」
「お前らが!おまえらがおれを見殺しにしたんだ!」
突然烈は叫びだし火球を手のひらに作る。
「烈止めろ!何をしている!」
「俺だけ死ぬのはおかしいだろうが!死ぬなら弱いお前らが先なんだよ!」
「あああああああっ!」
烈は痛みからか魔法を制御できず、身体が炎に包まれ絶叫する。
「あ、、、、えっ、、、?」
「すまない・・・」
悠樹は烈の炎に少し焼かれながらもその身体に剣を突き刺していた。
引き抜いて下がり、その最後を看取る。介錯した者として。
「いやだあぁ!しにたくな、、、い、、、たすけ・・・」
最後まで助けを求めた声は呪詛のように悠樹の耳に、記憶に残るのだった。
烈と一緒にすぐに戦いに参加していたら全員死んでいたと思う。
あの時の選択は間違っていなかったと思うが、それでもある意味見捨てたことは間違いないのだ。
「烈さんは、、、?」
「俺が殺した。」
紫苑の問いかけに、直接的に間接的にも殺したのだと自分に言い聞かせ悠樹は事実だけ簡潔に答える。
「仕方なかった、、、と、思います・・・」
「相手は数も力も私たちより強くて、、、」
「それに、もしかしたら私が早く魔法を使う決断をしていたら全員助かったかもしれません。」
「自惚れるな。烈は自分の力を過信したから死んだ。」
「紫苑。君が制御できない魔法を使っていたら全員巻き添えになって死んだかもしれない。」
「・・・・そうですね。」
だが紫苑か商人が積荷にあるポーションをすぐに使ってくれていたら、
あるいは烈は助かったかもしれない。
だがそれは結果論であり、常に最適な判断を下せる者はいない。
「と、と、盗賊たちを皆倒しちまったのか!?あんたたちすごいな!」
「たぶん、こいつは懸賞金がかかってるやつで大物だぞ!」
「・・・・・」
「・・・・・」
商人は荷物や命が助かったからか突然興奮し喜び、饒舌になったが、
仲間を失って、また人間と初めて命のやり取りをした二人は喜ぶ気にはなれなかった。
「あ、ああ、すまない。仲間が死んじまったんだよな・・・」
「だが、こんなご時世なんだ。悲しんでばかりもいられない。」
「盗賊に襲われたことを街で報告しないといけない。」
「分かっています・・・せめて仲間だけでも弔ってやりたいんですが。」
「分かった、商品のスコップを使って埋葬してやるといい。」
「野ざらしだと、魔物や魔獣に荒らされるからな。」
悠樹は焼けた烈の身体に水魔法で水をかけてやる。
スコップを使う前に土魔法を試すと、地面が抉られ小さく隆起した。
できた穴に列を横たわらせ土をかけてやる。
焼け焦げたタンパク質の匂い、焼けただれた皮膚の感触も忘れてはならないと、
悠樹は記憶に焼き付けるのだった。
「この世界に来て、烈は嬉しそうだったな。」
「望んだ結末じゃなかったかもしれないけど。」
「死んだのは、私たちだったかもしれません。」
「いつ誰がどんな理不尽な目にあって死ぬかもしれない世界なんですね・・・」
烈を弔い馬車へ戻ると商人が武器や鎧を荷台に積んでいるところだった。
「何をしているですか?」
「盗賊たちの持ち物を回収してたんだよ!」
「盗賊の持ち物は基本的に討伐者に権利があるからな。」
「あ、勿論ネコババしようなんて思ってませんよ!助けてもらったお礼に運ぶの手伝ったんだからな!」
「とりあえず、盗賊たちが身に着けてたPR3つと財布を渡しておく。」
受け取ると悠樹と紫苑は馬車に乗り込み、商人は馬車を出す。
「武器や防具はどうする?街までは一緒に運んでやるがかさばるし買取ろうか?」
「とりあえず、一番いい剣と鎧は残して後は買取ってください。」
「よっしゃ。恩人だから色を付けて剣やボウガン全部で50万でどうだ!」
「あと、怪我してるだろ?そこのポーション一本使ってくれ。」
「どうも、、、ではそれで。」
「あと、騎士団へ報告の際に念のため証人としてついてきてください。」
悠樹は身体的、精神的な疲労から少し休みたかったので適当に相槌を打つ。
「ああ、勿論それくらいさせてもらう。」
「これで市民登録分の資金貯まったんじゃないか?」
「PRを口座や収納もできるいいものを買うならまだ足りないがな。」
街まで寝ようと体を横にしたが、商人が知らないことを話すので起き上がる。
「すみません。PRの収納って何ですか?」
「ああ、この前は話さなかったな。PRの高級品は言葉のまま、収納ができる。」
「収納は使い込んだ武器とかを1、2本リング内に保管できる。」
「武器をしまえて便利だし、予備を持ち歩けると考えればかなり使えるだろ?」
「リング内に収納?どんな原理なんですか?」
まさにファンタジーゲームの世界だった。
ゲームでは剣や鎧を所持品枠でいくつも持てたり、
重量制限の範囲、あるいはインベントリなどで現実よりはるかに多くの物が持てる。
だが実際に剣を何本も持って移動したり、ましてや戦闘などは当然できない。
「原理?そんなの考えたこともなかったな。変わったこと気にするんだな。」
「別に付与師や職員になるわけじゃないんだろ?便利なものがある。それでよくないか?」
「そうですね・・・いや自分でも仕組みが分かればできるのかなと。」
「そんな簡単なもんじゃないとは思うが。気になるなら自分で調べな。」
「そうですね。武器1、2本って言ってましたけど際限無くは入らないんですね?」
「そりゃそんなのがあったら俺達みたいな商人には便利だがなぁ。」
「剣にしたって、いきなり買った剣とかは収納できないし、
自分の魔力を何度も通した使い慣れたものだけだな。」
「だから剣にしたって馴染んだ剣が10本も20本も無いだろ?だからひょっとすると数はもっと入れられるのかもな。」
「なるほど。もし収納できるPRが手に入ったら試します。」
「シオン、今の話どう思う?ゲームの様じゃない?」
「制限がいろいろあるみたいですからわかりませんけど、
私達だけ容量無限のインベントリが使えたら夢が拡がりますますね。」
「まぁ、収納付のPRがいくらくらいかわからないけどできれば早く欲しいね。」
烈の死を思い出さないよう、あえて二人は日常であるかのようにこの世界について話す。
「そういうえばシオンの魔法ってもっと威力上げたり範囲を絞ったり拡げたりできる?」
「そうですね、使うたびに馴染んでる気がするので、出来ると思います。」
紫苑は集中し指先に小さな電気を発生させる。
「シオン!、、、その髪!・・・」
「え?髪?どうかしました?」
今までは黒髪だった紫苑の髪が薄い紫色に変化していた。
「髪の色が変わってるけど・・・」
紫苑は指摘されセミロングの自分の髪を取り見つめる。
「え、えっ、これ、私の髪?」
(ファンタジー世界だと属性のイメージが髪色のキャラが多いけど、
そうだとするとたしかに雷って紫っぽいイメージがあるな・・・)
「ええっと、俺の髪は黒のまま?」
「黒いままですね・・・」
「ええっと、、、雷属性っぽい髪色なのかな?」
「雷って紫ですか・・・?」
「まぁゲームのイメージだと、紫なんじゃない?」
「二人とも何騒いでるんだ?」
二人の慌てた声が聞こえたのか、商人が声をかけてくる。
「すみません。髪の色が突然変わったんですけど何か知っていますか?」
「お、おお!、たしかに前と違うな!特別高い魔法属性の適性があれば髪色が変わることがあるらしい。」
「火だと赤、水だと青、あんたは紫だから雷じゃないか?」
「雷属性で高い適性ある人間なんて滅多にいなかったと思うぞ。」
「なるほど、、、じゃあ俺はそんなに魔法の適性が高くないんですかね?」
「まぁ少なくとも今のところはそうなのかもな。適性と今の魔力の高さとかもあるからな。」
「あとから変わるかもしれないしな。そもそも髪色が変わるくらい強い魔力の人間自体少ないからなぁ。」
「むしろ変わる人間が特別なだけで変わらないのが普通だからそう気にすることは無い。」
「そもそも、魔法が使えない人間が大多数なんだから使えるだけで羨ましい限りだ。」
「特別だそうだぜシオン。」
「自分の姿が見えないのでまだ髪色のイメージはできないんですが慣れるしかないですよね・・・」
「さぁ、もうすぐ街に着くぞ。」
商人の言葉に馬車の前を見ると、森を抜け広い平野が広がっており海と街が見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます