44、兎と少年
旧アメリカ、かつてワシントンDCと呼ばれた地区の
「は?今なんて言ったんだ?」
思わずといった風に少年は
もちろん、トバルカインというのは
要するに、神話の中の人物から勝手に名前を
「だからな、この近辺の草原地帯を
「いや、
「ああ、だからとっとと兎の
「オマエ、ふざけてんのか?」
思わず口調が
例え、
そもそも、どうして少年にそんな
だが、所長は至って
「いや、まあお前が以前言っていただろう?今から大体百五十年くらい
「予言じゃねえよ。あくまで
そう、少年の異能はあくまでも高度な未来予測だ。あらゆる
しかし、その言葉に所長は
「いや、お前の予測は限りなく予言に近いものがある。実際に今まで
「同時に未来は
「それはお前の予言があってこそさ。無ければその通りになっていたね」
はぁっと少年はため息とも
「そこで、だ。将来現れる筈の
「……それが、どうして僕が生贄になるという話に?」
「だから、その為の交渉だよ。お前に交渉役を
そう言って、所長は話してくれた。その話ははっきり言って少年が耳を
自覚、してしまった。
「その兎の怪物、準王級ヴォーパルだが。最近ある
「ああ、限定的な
「そう、より
「生体、金属……?」
聞きなれない言葉に、少年は首を
「そう、生体金属だ。つまり、金属と細胞のハイブリッドだよ」
つまり、意思の波により
そして、同時にヴォーパルの骨格と牙は生体細胞と金属のハイブリッドらしい。
それにより、通常よりも強靭な肉体を保有し激しい
「つまり、それを利用しようと。そういう話デスか?」
「まあ、そうだな。その兎の怪物に
「……えっと、つまりその兎の
「端的に言えば、そういう事だな」
「……正気の
「俺だってそう思っているよ。けど
思わず、少年は
しかし、同時に納得もしてしまった。どうやら、その
つまり、その計画が上がった
僕が不本意に言わなければ。僕が
そう、自責の念に
「……なら、
「?」
「いや、良いです。分かりました」
そう言って、少年はその場を
・・・ ・・・ ・・・
「レン!」
「シンシア?」
研究室を出た少年に一人の少女が
まあ、
まあ、それは今は
「レン、聞いたわよ。貴方、ヴォーパルと
「ああ、今から行く所だ」
「そんな、
シンシアは顔を
少年自身にその自覚はない。
思わず、少年は
「まあ、仕方がないさ。全て僕が
「そんなの関係ないわよ!貴方が
「そう言ってくれると
そう言って、少年はそのまま彼女に
少年の背後から、シンシアの心配する声が聞こえてきた。少年の胸の奥がちくりと痛んだような気がした。
・・・ ・・・ ・・・
「む、僕に一体何の
ヴォーパルは、
少年はそんな大兎になるべく
「少し、交渉に来たんだ」
「交渉だって?この僕に?」
「ああ、僕の
「……何でもって」
若干大兎がドン引きしているように見える。実際、大兎は僅かに
まあ、少年自身もこれはどうかと思ってはいたが。けど、それでも少年は一切退かないで交渉を
「まあ、実際は僕自身が聞ける
「……………………」
僅かに
しばらくそれが続いた後、大兎は僅かにため息を吐いた。
「分かった、じゃあまずは君の頼みを聞こうか」
少年は頷くと、事のあらましを
・・・ ・・・ ・・・
「という話なんだが、どうだ?」
「うん、別に僕からしたらどうでも良いんだけど。正気の沙汰じゃないな」
「言うな、僕だってそれは
そう言って、少年はため息を吐いた。全く、どうしてこうなったのか?研究施設の所長がうらめしくなってきた。自分の撒いた種だと少年は自分を納得させたが。
そんな少年を、ヴォーパルはどう
「……じゃあ、今度は僕の
「ん?ああ、あまり
「別にそんな無茶な望みじゃないよ」
そう言って、ヴォーパルは少年に望みを言う。
「僕と
「は?」
思わず、と言った感じで少年は真っ直ぐヴォーパルを見る。しかし、どうやら彼は本気らしい。
真っ直ぐと、少年を
「昔、僕に
「……つまり、それが
「端的に言えば、そうだね」
しばらく考える少年。どうやら、この大兎は人間に対して
或いは、自分に立ち向かう人間の
でもまあ、基本悪い
「分かった。
こうして、少年はその日人外の友達が出来た。なかなか
「ところで、君の
「うん?僕の名前か?僕の名前はレンだ。レン=バードだよ」
少年、レン=バードは大兎の怪物ヴォーパルにそう
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