2,白川ユキ
「私の名前は
しばらくして、俺達は互いに自己紹介する事になった。まず少女が先に自分の名前を
そして、どうやら今度は俺の番らしい。俺が名乗るのをユキはじっと
「……俺の名前はクロノ。
「遠藤……クロ、ノ……?」
ぴくりとユキの方眉が
そんな彼女に俺は僅かに
「どうかしたか?ユキ……」
「ううん、何でもないよ。それより君は
「……………………」
俺は僅かに黙り込む。さて、其処はどういう返答をすれば
考え込む俺。そんな俺を、今度は彼女が
ユキは怪訝そうな声で俺に
「そういえば、その
「……はぁ、まあ良いか。あまり言いふらさないで
俺は観念して正直に
多分だけど、彼女はそんな人物ではない。と、俺は思う。
……そう
「俺はつい最近まで
「コールドスリープって、人体を冷凍保存するあの
彼女の言葉に俺は静かに頷いた。まあ、俺もその技術についてはさほど
そもそも、俺はこの時代の事だって詳しく知らない。この時代は俺の
少なくとも、
俺は何も知らない。だから知らないといけない。生き残った者の
「そうだ、俺は多分崩壊した文明の生き残りなんだと思う。まだ
そう言って俺は話を
そう思っていると、ユキは何かを考え込むようにぶつぶつと呟きながら
「なるほど……確かに彼は。いや、でも……いや、だからこそ。でも……」
「えっと、ユキ?」
「っ、え?いや何でもないよ‼うん、何でもないから……」
慌てるユキの姿に、俺は軽く首を
何だろう?何か、様子が
それに、あまり深く
彼女の腰にさげた無線機がけたたましく
「はい、白川です。何かありましたか?」
『何かありましたか?じゃねえ!あれほど単独行動は
無線機から男の声が響く。いかにも面倒そうな、それでいて僅かな
俺は呆れた視線をユキに向ける。少しだけバツが悪そうな顔をするが、しかしそれでも全く反省の色が見えないところ彼女は常習犯なのだろう。やれやれだ。
思わず、僅かに苦笑を
『それで?そっちは何かあったか?』
「それなんですが、身元の
『何だと?』
無線機から聞こえてくる声に怪訝な色が籠もる。どうも不審に思っているらしい。
それを
「ですが、かなりの戦闘能力を持っているのは確かですね。
「おい、ちょっと
俺は反論をしようとする。しかし、それはさらっと
何だ?いきなり何の話をしている?
『いや、ですがの意味が分からんぞ。しかし、あの甲殻バジリスクを一太刀か……』
「はい、きっと大戦力になるかと思いますが」
何だかとんとん拍子に話が進んでいくような気がする。流石にこれは
そう思っていると、無線機の声が俺に向く。
『おい、その大戦力とやらは
「……はい、何でしょうか?」
『お前、ユキに何かしたんじゃないだろうな?
…………はい?
「「は?」」
突然の言葉に、俺とユキの言葉が
しかし、無線機の向こうの男は胡散臭そうに話すばかり。若干疑わしげでもある。
『いや、だってユキだぞ?あのユキがそうそうに相手をそこまで
「あの、私は怒ってもいいですよね?ヤスミチさん?」
みしいっと、ユキが
ユキの声音に僅かな
そして、無線の相手であるヤスミチもそれは重々に
『わりいわりい、別にそこまで怒らせる気はないんだよ。ただ俺だって少しくらいは気になるんだよ』
「……………………」
胡散臭そうに半眼を
……というか、俺は一体どういう印象を受けているのだろうか?少しだけ気になる気もする。
なので、此処で俺は無理矢理話に
「あー、別に俺はユキを相手に何もしてませんよ?いかがわしい事も全く」
『む、そうか?それにしては随分と
……本当に、随分と疑われたものだ。少しこの男の脳内を
しかし、それは黙っておく。それは流石に言わぬが花だ。
「そこまで信頼されるような
ん?と、其処で無線の奥から疑問の声が
『ちょっと待て、甲殻バジリスクに
急に雰囲気が怪しくなった。ユキはびくりと肩を
何かあったのか?と、少し怪訝に思う俺だが既に後の
『馬鹿野郎っ‼あれほど
「っ⁉」
『お前、以前もオオムカデに襲われたばかりだろう‼なのに、また襲われるとは少しは学習しろっ‼』
「す、すみません……」
『すみませんじゃねえっ‼‼‼』
こんこんと
完全にヒートアップするヤスミチさん。流石の俺も
無理矢理話に割り込むように俺は間に入った。
「あー、とりあえず
『む?』
「クロノ君……」
怪訝な声を上げるヤスミチさんと、
……まあ良い。俺はそのまま
「その話は後ですればいいじゃないですか。今はもっと他にするべき話がある筈ですよね?」
『……そうだな、その話は後でじっくりとする事にしよう』
ほっと胸を
そして、そのままヤスミチさんの
『で、だ……今は特に何も言わない。しかしお前が身元不明である事に
「話を……?」
ああ、とヤスミチさんは同意した。同意して、鋭く
『とりあえず、お前の身元はそこでしっかりと話してもらう。くれぐれも嘘やごまかしは言わないよう気を付ける事だな……
直後、無線機は切れた。どうやら話は
しかし、正体不明ね。本当に随分とまあ
ユキは苦笑を浮かべながら俺に手を合わせてきた。何か、
「……えっと、何だ?」
「今の
いや、何が?とは言えなかった。それを言う前にユキは続きを話す。
「多分、ヤスミチさんにはかなり
「ああ、うん……」
少し気分が重くなる気がした俺だった。全く、やれやれだ。思わず苦笑を
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