第3話 俺「よっしゃ水車作ったろ」

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この辺りの動画が参考になるかもね

https://youtu.be/cfbSxvS2z24


「不器用にもほどがあらぁ。これじゃどんな職人になるのも無理だな」

 切り口がぐにゃぐにゃに曲がっている端材を片手に村の家具職人はわらった。


 貧乏教会に居候している男がバイトを探している、という話はまちにほんのり( みんな興味がないわけではないがすごく興味があるというわけではない)としたスピードで広がり、それを聞き付けた村の家具職人がなら短期だがうちでどうだと話を持ってきてくれた。

 弟子入りしている人間の親戚が病気になり、保養地までつれていくということで休みを取っているのだとか。

 その間の下働き、ようは店先の掃除や注文聞き、注文先までの荷物もちといった雑用をやってくれる人、がほしい。やってくれるなら高くはないが安くもない相応の給金を出すということで話はきまって働くことになった。


「水車をつくってみたり?ノコギリでまっすぐ木もきれねぇやつがなに生意気言ってるんだよ」

 作業の間の休憩時間、ものはためしだやってみろと端材とノコギリを渡された。

 なんでもこの家具職人に弟子入りする際にはこれでテストをするらしい。

 テストの合格条件は、ノコギリ一本のみで板にまっすぐひかれた線にしたがって板を切断するということ。

 簡単なようだがこれが意外と難しい。気づいたら切り口が曲がって線からずれてしまう。

「これ木とか当てて切るのはダメなんですか?」

「素人の工作じゃねぇんだからいちいちそんなことしてちゃ時間がかかってしょうがねぇ。このくらいの板なら線引いてその上をまっすぐ切るのは入門条件だぜ。そこら辺のガキだってすこし仕込んだらできることだ」

 親方はお前さんはちょいと酷すぎるぞと笑いながら、自分のノコギリをつかって転がっていた端材を切り始めた。


「ノコギリや道具の使い方なんてのはまぁ1ヶ月もありゃ覚えられる。それをうまく使えるようになるのは、まぁお前さんみたいなど下手くそでも一年やればまぁまぁうまくなれるさ。それで家具をつくるなら、現場のサイズを図って必要なサイズの設計しなきゃならん。作り方の基本はあるといっても必要な大きさや設計ははまちまちたまからな。これがトラブルなくできるようになるのはセンスがいいやつでも数年はいる。それではじめて一人立ちできるかね」


 そんな話をする間に、家具職人は端材を真っ二つに切断してそれを男に渡した。。

 男のぐにゃぐにゃな切り口とは全く違う、線にしたがってまっすぐな切り口だ。しかも早い。


「それに水車なんかのでかいもの作るなら人を使わないとだめかもしれん。そうなるとお前さんみたいにノコギリも使えねぇやつがあれだこれだと偉そうな口聞いても舐められるだけだからな。それでも金さえ払えば一応の仕事はするだろうが、できの良さをわからないやつは手を抜かれるかもしれん」

 異世界転生したというよくわからない人間があれをつくれと命令したところで簡単にいくわけないのだ。

 当たり前な話ではある。

「もし作るなら人に頼むしかありませんかね」

「それも難しいだろうよ。信頼がないんお前さんみたいなよそ者からでかい仕事受けようなんてやつはいねぇ。貴族様や村の代表に話しつけて、って話しになるだろうが、そいつらだってお前さんの話を聞く義理なんざないわけだからな」

 なんとも世知辛い話である。

 男のチートと呼べるのはスマートフォンだけだ。本人になにかしらの才能や知識があるわけでもないし、手先も不器用だ。

 聞き齧った知識があったところでなんになるのか。

「身の丈あった暮らししかないんでしょうかね」

「てめぇの身の丈がわかるだけ賢いさ。身の丈に合わないことやろうとして破滅した人間なんざ世の中腐るほどいるんだから」

 家具職人はなかなか考えさせられる発言をしてちょっと悲しくなってる男を励まし、昼から客先にいくから手伝えと命令した

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