夜の校舎

 あっという間に夏休みに入った。

 私は抜け殻のように過ごし、時間を無駄にしている。


 シイナを見ると、落ち着かない。


 避けるようにして、過ごしていたある日。

 シイナから連絡があった。


 *


「普通、夜の校舎に呼び出す?」

「だってぇ、全然遊びに誘ってくれないんだもん!」


 校門前で立っていたシイナに声をかけると、心の叫びが返ってきた。


「ぐすっ、酷いよ」

「な、泣かないでよ」


 シイナが涙を拭い、手を取ってくる。


「行こ」

「どこに?」

「えー、と。ぷ、プール?」


 この子は、急におかしなことを言いだした。


「鍵閉まってるでしょ」

「ううん。鍵壊れてるから、プールの入り口、開けっ放しなんだよ」


 不用心な学校だな、と思った。

 都会だったらあり得ないんだろうけど。

 何分、田舎の学校では普通にあることだった。


「なんで、プールに入りたいの?」

「入るんじゃなくて、二人で、その、一緒に過ごせる場所が良かったの」

「そういうのは、好きな人に対して言うものでしょ」

「……言ってるもん」


 怒ったシイナがそっぽを向く。

 でも、手を握る力は少しだけ強くなっていた。

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