帰り道

 何度も通った通学路を今日も二人で歩く。


 私たちの町は、海に面した場所だ。

 行く先々で川があったり、潮のにおいがしたり、海に関するものに恵まれている。


 だけど、遊べる場所は極端に少ない。

 もっぱら、釣りとか、浜辺で遊んだりとか、海沿いの公園でグデっとしたりとか。


 山ではないけど、キャンプができる場所もある。

 まあ、木造の小さい小屋に寝泊まりする、キャンプと呼んでいいか分からない施設だけど。


 防波堤に沿って歩いていると、シイナが言った。


「もうすぐで夏休みだね」

「んー、やっとだよ」

「夏休みは、予定とかあるの?」

「全然。家でグダグダしたり、テレビ観たり、……動画観たり?」


 信じられないけど、本当に田舎ではやることが少ない。


「シイナだって、似たようなものでしょ?」

「あちひは、し、小説書いたり、とか。えへへ」

「好きだもんねぇ。よっ。先生」

「え、へへ」


 照れくさそうにシイナが笑う。

 でも、未だに小説を読ませてもらったことがない。

 人に読ませるのって、やっぱり勇気がいるんだろうか。


 そんな事を話していると、後ろから掛け声が聞こえてくる。

 振り向くと、ジャージ姿の男子たちが汗だくになって走ってきた。

 その中に、見知った顔を見付ける。


「シュウちゃんだ。がんばれーっ」


 名前を呼ばれた色黒の男子が顔を上げる。

 親指を立てて笑みを見せると、後ろからは怒号。


「おら、走れ!」

「うす」


 そして、向こうに行ってしまった。

 中井シュウジは近所に住む、幼馴染だ。


 彼とも腐れ縁で高校まで一緒。


「三年なのに、部活参加して偉いよね」

「……うん」

「シュウちゃん頭良いからなぁ。勉強の必要なかったりして」

「ユズキちゃん」

「ほいほい」

「明日、一緒にお勉強しない?」


 そう提案をされ、明日の予定を思い浮かべる。が、特に何もなかったので、すぐに了承した。


「いいよん」

「じゃあ、明日」


 と、言って、シイナがスカートの端を握ってきた。


「いや、パンツ見えるから」


 頬を小さく膨らませ、くいくいと引っ張ってくるのだ。

 本当に男子が苦手なんだな。


 あまり、離れると本当にパンツが見えるので、歩幅を合わせて肩を並べた。

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