05 打ち明けた想い

 優也に直人への気持ちを打ち明けてからというもの、直人への想いは日に日に募っていった。やっぱり、ただの親友だけじゃ足りない。もっと特別な存在になりたい。その想いばかりが俺の頭を支配した。

 そして、俺の想いを知ってなお、優也はラインを欠かさなかった。彼とのやり取りは、すっかり生活の一部になっていたから、俺も返信を怠らなかった。

 しかし、そろそろ優也からの想いにケリをつけなければ、と思ったのは、こんなメッセージが届いたからだった。


「直人先輩とのこと、応援してます」


 それが来たのはおやすみの挨拶の後で、俺は自室のベッドで一人、スマホを握り締めながら目を閉じた。


「やっぱり、言おう」


 俺は優也に電話をかけた。


「……海里先輩?」

「おう。今、大丈夫か?」

「はい。海里先輩から電話だなんて、嬉しいです」


 思わずきゅっと下唇を噛んだ。俺はこれから、残酷なことを優也に言わなければならない。


「あのさ。直人とのこと、応援するって、本心か?」

「ええ、そうですよ。おれ、好きな人には幸せになって欲しいですもん」

「それじゃあ、俺、明日直人に告白するぞ? それでもいいんだな?」

「構いません。それでもおれは、海里先輩のことが好きですから……」


 電話口の声は、深く沈んでいった。俺は言った。


「ごめんな、優也。お前と付き合ってやれなくて」

「いいんですよ。もし直人先輩に振られたら、おれのところ来てください! 待ってます!」


 いつもの調子に戻った優也は、そう宣言した。

 優也との電話を切ってから、俺は直人にラインを打った。大事な話があるから、明日の放課後、中庭で話そうと。直人は快く承諾してくれた。




***




「どうしたんですか、海里。改まって、大事な話なんて」


 季節はすっかり夏になっていた。蝉の声がうるさかった。俺は直人を見上げ、声を振り絞った。


「俺な、直人。お前のこと、好きなんだわ。普通の好き、じゃなくて、その……優也が俺のことを好きなのと一緒」


 ぽたり、と俺の汗が流れた。直人はただでさえ大きな目を見開いていた。


「海里……」

「ごめんな、いきなりこんなこと言って。でも、もう我慢できなかった。俺、お前にとって特別な存在になりたい」


 直人はそっと、俺の手を取った。


「僕も、同じ気持ちですよ。ずっと前から、そう想っていました」


 それから、直人は少し身をかがめ、俺にキスをした。


「つっ……!」


 驚いた俺は一歩退いた。


「こんなことなら、僕ももっと早く、海里に言えば良かったです。ずっと、嫉妬していたんですよ? 優也くんが現れてから」

「えっ、マジで?」

「はい。その内優也くんに取られるんじゃないかと、気が気じゃありませんでした」


 直人は青白い頬を緋色に染めた。何もかもが吹き飛んだ俺は、直人を抱き締めた。彼の鼓動もまた、高鳴っていた。


「全然、そんな素振り見せなかったじゃねぇか……」


 抱き締め合ったまま俺が言うと、直人が返した。


「僕は隠し事が得意ですからね。この想いも隠しておこうかと考えていました。けど、もうその必要もありませんね?」


 そうして、俺たちは二回目のキスをした。甘ったるくて、とろけるような、深いキスを。

 でも、いつまでもそうしていて、誰かに見られてはたまらない。俺たちは身体を離した。


「優也くんには、僕から告げておきますね? もう僕が海里の恋人になったと」

「うん、あいつさ、俺が直人のこと好きだってこと、気付いてたらしくてさ。応援してくれるって言ってた」

「なるほど。彼は本当にいい子ですね?」


 その日は、二人きりになれるところに行きたくて、直人の部屋に行った。想いを通じ合わせた俺たちは、我慢することなく、互いの衝動をぶつけ合った。

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