第231話


『グギャァアアアアア!!!』

『グォオオオオオオオ!!!』

『ギェエエエエエエエエエ!!!!』


上位ドラゴン三体との同時エンカウント。


俺はかつてない事態に片手剣を握る手に力を込める。


『ォオオオオオオオ!!!』


「来ます!」


ファイアードラゴンの腹部から爆発的な熱が放出される。


どう見ても炎のブレスを放つ予兆だ。


俺は片手剣を構えて身構える。


やがて


『グギャァアアアアア!!!!!』


ゴォオオオオオオ!!!!


ファイアードラゴンの口から炎のブレスが放たれた。


高音の紅蓮の炎が俺を焼き尽くそうと迫ってくる。


「ふん!」


斬ッ!!!


俺はこちらに向かってくる炎を斬撃で切り伏せる。


「はぁっ!!」


ドガァアアアアアアアン!!!


たて続けに左拳で衝撃波を放ち、周りの炎もまとめて吹き飛ばした。


『グギャァアアアアア』


『グォオオオオオオオオ!!』


「おっと」


炎のブレスを回避したのも束の間で、今度は不死竜とドラゴンゾンビの二体が俺に向かって襲いかかってくる。


「はぁああああああ!!!」


斬斬斬ッ!!!


俺はいくつもの斬撃を放ち、ドラゴンゾンビと不死竜を切り伏せ、なんとか突進を止める。


『グギャァアアアアア…』


『グォオオオオオ…』


だが斬撃によって切り落とされた部分は、ドラゴンゾンビの場合、そのまま別の生き物のように動き出し、不死竜は難なく回復する。


どちらも非常に生命力に長けた個体であり、やはり大技を使わなければ仕留めるのは不可能そうだった。



“こいつらだっる”

“面倒くせぇな”

”やっぱ三体並ぶと強いな“

“ドラゴンゾンビも不死竜もダメージを普通に刻むのは無理そうだな”

”やっぱ神拳しかないやろ“

”こう言う時の神拳よ“

“どっちも生命力がエグすぎる”

“とりあえずファイアードラゴンから倒すか”

“ファイアードラゴンは火力はあるけど回復力はないやろ。神斬りで鱗貫通して殺そうぜ”

“ファイアードラゴンからでよくないか”

“大将いけぇええええええええ”

“上位ドラゴン三体は確かに強いけど俺はまだ焦ってないぞ”

“三体ならぶと圧巻だけど神木ならいけるやろ”

“ちょっと流石に大将でも危なくなってきたか?”

“まぁ神木のことだからいきなり本気を出さずに、まずは普通に戦ってみてるんだろ。正直いざとなれば、神止からの神拳でいいわけだしな”



ドラゴンゾンビの切断部分が地面で動き回り、不死竜がみるみる欠損部分を回復していくのを確認しながら、俺はコメント欄をチラリと見る。


上位ドラゴン三体との戦いに視聴者は大いに盛り上がっているようだった。


同接もぐんぐん伸びていき、あっという間に300万人を超えて320万、325万とどんどん増えていく。


やはりドラゴンとの戦いは盛り上がる。


見た目が明らかに強そうだし、深層最強種族の一角であることは少しダンジョン配信に知識があれば誰だって知っているからな。



(もう少し引き伸ばすか…)



三体は厄介で相手にするのはそれなりに神経と体力を使うため、俺はそろそろ不死竜かあるいはドラゴンゾンビにたいして神拳でもお見舞いしようかと思っていたがやめることにした。


配信の盛り上がり的に、もう少しこのドラゴンとの戦いを引き伸ばしたい。


そう思った俺はとりあえずファイアードラゴンの方から仕留めてしまうことにした。



(ちょっと新しいこと試してみるか…)



前々から頭の中にあった技を俺はここで試してみることにした。


俺は片手剣をグッと引いた。


そして、それをそのまま神斬りを使う時と同じ速度と強さで、斬るのではなく突いた。



「神突き」



ドヒュゥウウウウウウウウウ!!!!



黒の虚空がぐんと直線に伸びて、ファイアードラゴンに襲いかかった。



ボゴォオオオオオオオンン!!!!



『グォオオオオオ!?!?』



ファイアードラゴンの硬い鱗が貫通して、その胸部に大きな穴が開く。


神斬りの威力をそのままに突くという動作に変えた新技、神突き。


初めてだったがあらかたイメージ通りの技が出せた。


これなら周りのモンスターやダンジョン全体にダメージが入ることなく、倒したいモンスターをピンポイントで遠距離から倒すことができる。



”ええええええええええええ!?!?“

”ファーーーーーーーーw w w w w“

”新技きたぁあああああああああああ“

”うおおおおおおおおおおおおおお“

“どりゃああああああああああああ”

“まさかの新技どりゃぁあああああああ”

“すげええええええええええええ”

”神斬りが進化したぁああああああああ“

”ふぉおおおおおおおおおお!?!?“

”やばすぎぃいいいいいいいいい“

”強すぎw“

”えっっっっっっっっっぐ“

”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!“



いきなりの新技の登場に視聴者は大いに盛り上がる。



『グォ…ォオオオオ…』



神突きによって胸を貫かれ穴が空いたファイアードラゴンは、力無い声と共に地面に倒れた。


どうやら核に命中したらしい。


俺は何が起きたのかは見れば一目瞭然だが、一応解説を視聴者に添えておく。



「ファイアードラゴンを倒しました。一応説明すると、神斬りの威力をそのまま突き攻撃にした新技です。これなら、神拳と違って遠距離からでもピンポイントでモンスターを仕留めることができます。神突きってこれから呼びたいと思います」



”えぐすぎw w w“

”また新技生み出したのお前?w“

”遠距離からでも神拳見たいな威力が出せるようになったのまじでえぐいわw“

”突きの攻撃でドラゴンの体が鱗ごと消し飛んだぞw w w“

”ほぼ遠距離からでも使える神拳やんけww w“

”ついに近づく必要すら無くなったんかお前“

”どんどん強くなるなw“

”日に日に人外になっていく神木“

”まじでえぐい“

”もうなんでもありやん(定期)“

”うーん、このw“

”まーた人間やめたの?君“

”大将自重して;;“

”えー、まだ深層第二層です“

”今日飛ばし過ぎじゃない?“

”第二層でもう新技か……このペースだとこの配信中にもう一個ぐらい来るんじゃ…?“



新技の登場で大盛り上がりの視聴者たち。


おそらく早速切り抜き班やクリップ班が動いて今のシーンをSNSなどで拡散してくれることだろう。


この調子で見どころをどんどん作り、いろんなところから視聴者に来てもらうとしよう。



「さて…あとはお前らだな」



『グギャァア…ァアアアアア…』


『グォオ…ォオオオオ…』


ファイアードラゴンの巨体がダンジョンの地面に飲み込まれていく中、その隣ではドラゴンゾンビと不死竜が蠢いている。


2匹とも生命力の強い個体で、あれだけ斬撃で切り刻んでもほとんどダメージは皆無と言って良かったが、しかし俺の新技を見たからだろうか、まるで俺を恐るようにして先ほどのように突撃してくることはなかった。





〜作者から重要なお知らせ〜


お世話になってます。


作者のtaki210です。


この度皆さんの応援のおかげでこの作品、


【悲報】売れないダンジョン配信者さん、うっかり超人気美少女インフルエンサーをモンスターから救い、バズってしまう


の書籍がアルファポリス様より発売されることになりました。


発売日は1/23日です。


近況ノートの方で書影なども公開しています。


書店で見かけた際にはぜひ宜しくお願いします。












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