第230話
深層第一層は、その後特に新種のモンスターと出会うことなく攻略することができた。
キング・ロックゴーレムを倒した後に出てきたのは、レイスやリザードマン、キングスライムといったいつものメンツで俺は特に苦戦することもなくそれらを倒し、深層第一層の最奥に辿り着いた。
「それではこれから深層第二層に潜っていきたいと思います」
深層第二層の入り口を前にしてそんなことを言いながら、チャット欄をチラリとみる。
”もう第二層か“
”はっっっっっや“
“一瞬だったな”
“第一層は新種はキングロックゴーレムだけだったか…”
”ここまで順調だが油断するな。深層はマジで何が起こるかわからん“
”もうなんか全然危なげなく踏破するから感覚麻痺してるけど、深層って名だたるクランが大勢で金と情報を費やして命をかけてクリアするところだからな“
”マジで負ける未来が見えない“
”正直今の神木に勝つどころか苦戦させることのできるモンスターすら想像が出来ないわ“
”相変わらず人外みたいな攻略してんな“
”同接も300万人もうすぐ行きそうやね。なんか回をおうごとにどんどん規模がデカくなってきてんな、神木の深層配信は”
同接は現在285万人。
もうすぐで300万人に届きそうな勢いだ。
(これは前回の最高記録を超えられそうだな)
前回の最高同時接続数が500万人だった。
現在、深層第一層攻略時点でその半分以上の同接を得ている。
これはもしかするとまた自身の記録を更新できるかもしれないと俺はそんなことを思った。
なんだか俺の深層配信、回数を重ねるごとにどんどん規模が大きくなっている気がする。
日本国内でダンジョン配信を見る分母というのは限られているのでどこかで頭打ちになると予想していたのだが、今の所数字は右肩上がりだ。
(海外勢が参戦しているのが大きいのかもな)
チャット欄には今でも英語やスペイン語をはじめとした外国の言語によるコメント投稿がされたりしている。
同接が順調に伸びていっているのは海外勢が見てくれていることももちろん影響しているのだろう。
ダンジョン配信とは言葉がわからなくても楽しくみられる配信の代表例なので、日本語がわからない海外ニキたちも案外楽しんでくれているのかもしれない。
「それじゃあ、第二層潜っていきます。入りまーす」
俺はキングロックゴーレムよりももっと強いモンスター、もしくは配信映えするような見た目のモンスターが出てくればいいなとそんなことを考えながら深層第二層へと足を踏み入れるのだった。
= = = = = = = = = =
『グギャァアアアアア!!!!!』
「うおっ!?」
深層第二層に足を踏み入れた瞬間に、ものすごい咆哮があたりの空気を震わせた。
聞き覚えのある咆哮が、前方から断続的に聞こえてくる。
“いるな”
“早速おるな”
”これは…“
”くるぞ…“
”早いな“
”早速か“
“もうかよ”
“今回もお出ましか”
チャット欄でも視聴者たちが察し始めた。
俺は一応遠距離からの『ブレス攻撃』なんかを警戒しながら鳴き声のする方向へ向かってまっすぐに進んでいく。
『グギャァアアアアア!!!』
「まだ弱い方か」
予想違わず、そこには深層モンスター最強種の一角がいた。
竜種、ドラゴンだ。
だが、ドラゴンはドラゴンでも、序列は低いリトルドラゴンだ。
こいつと最後に出会したのはいつだっただろうとそんなことを考えながら、俺は距離を詰めていく。
『グギャァアアアアア!!!』
リトルドラゴンは、無造作に距離を詰めてきた俺に前足の鉤爪を振り下ろしてくる。
最初にこいつと出会した時は、服を脱いだりなんかして結構気合いを入れて戦いに挑んだと記憶しているが、今はそんなことをする必要を全く感じなかった。
他にいくらでも強いドラゴンと戦ってきたし、こいつは特殊能力がないからな。
特に警戒したり、時間をかけたりする必要もない。
「ふん!」
ギィン!!!
俺は無造作に片手剣を振り、ドラゴンの前足を跳ね返す。
そしてそのまま怯んだリトルドラゴンに向かって、神斬りの半分程度の力で斬撃を放った。
斬ッ!!!!!
『グ……!?』
鋭い切断音と共にリトルドラゴンの首が切断され、地に落ちる。
頭部を失ったリトルドラゴンの胴体はしばらく静止していたが、やがてずぅうううんと音を立てて地面に落ちた。
巨体が、ゆっくりとダンジョンの床に回収されていく。
“よーーーーーーーし”
“よーーーーーし”
“よーーーーーーーーーーーし”
“よーーーーーし”
“つっっっよ”
“強すぎ”
“えぐい”
”竜種をこんなにあっさりと…“
”こいつドラゴンだぞマジかよ“
”強すぎてくさ“
”神木の成長を感じるわ“
”こんな雑魚が配信におけるラスボスとして扱われていた時代もあったな“
”最初は服脱いだりして神木も気合い入れて相手してたモンスターだったのに…“
”まぁこいつの上位互換と死ぬほど戦ってきたから今の神木にとってはこんなもんだよな“
‘神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”
「リトルドラゴン倒しました」
討伐報告をしてコメント欄を見る。
視聴者たちに特に驚いた様子はない。
このぐらいを簡単に倒すのは俺にとって当たり前だと誰しもが思っているようだ。
実際その通りだし、もっと強いモンスターと戦わないと今の視聴者では満足してくれないだろう。
「次に行きます」
だが最初に出てきたのがリトルドラゴンである階層は期待できる。
基本的にダンジョンの階層は奥にいくにつれて強いモンスターが出てくる構造になっているし、もしかしたらこの階層で、今までにないぐらい強くてワクワクするモンスターに出会えるかもしれない。
そんなことを考えながら俺は第二層を進んでいく。
『グギャァアアアアア!!!』
『グォオオオオオオオ!!!』
『ギェエエエエエエエエエ!!!!』
リトルドラゴンを倒して間も無く、今度は三つの咆哮が同時に空気を伝って聞こえてきた。
どれも明らかに竜種の特徴的な咆哮だった。
“一気に三体!?”
“うおおおおおきたああああああ”
“ドラゴン三体きたああああああ”
“盛り上がってきたぁあああああああ”
“三体はえぐい”
“くるぞ”
”三体同時は初なんじゃないか!?“
”この階層は期待できる!!!“
”三体は流石に神木でも苦戦するんじゃないか?“
”ドラゴン三体は何気に神木でも危ないやろ“
”ようやくハラハラする戦いが見られるのか…“
”キタキタキタキタぁああああああ“
チャット欄が一気に盛り上がる中、俺は早く映像を画面に捉えようと深層第二層の通路を小走りに進んでく。
そして…
『グギャァアアアアア!!!』
『グォオオオオオオオ!!!』
『ギェエエエエエエエエエ!!!!』
ドラゴン三体と邂逅する。
「おぉ…これはなかなか」
圧巻の光景に俺は思わずそう漏らしていた。
リトルドラゴン三体が並んでいた、なんてつまらない結末じゃなかった。
そこに待っていたのは、炎を口から吐くファイアードラゴン。
腐臭を漂わせるドラゴンゾンビ。
そして真っ白な体躯の不死竜の3匹だった。
「これは……流石にちょっと気合いを入れないといけないかもしれません…」
ドラゴン上位種の三体との同時邂逅。
流石に先ほどのように余裕ぶってはいられないなと俺は自信に気合いを入れ、片手剣を強く握り直す。
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