第229話


「おぉ…マジか」


ロックゴーレムの上位種である以上何かしらの特殊能力をもっているであろうことはあらかじめ予想ができた。


だが、まさか周囲の岩からさらにロックゴーレムを生産する能力があるとは思わず俺は少し驚いてしまう。



“ファッ!?”

“ゴーレム生えてきた!?”

“ファーーーーーw w ww w”

“増殖系の能力か”

“だるいな”

”そういう系か“

”ゴーレムはやしてて草なんよ“

”親玉はこいつか“

”どんだけゴーレム生やしてくんだよ“

”だるいけど……まぁこの程度神木にとってはピンチですらないやろ“

”神拳でまとめて消すべ^^”

“神止で全員切り刻むべ^^”



視聴者もまさかのキングロックゴーレムの能力に驚きつつも、しかしピンチだとは認識していないようだった。


それだけ俺の実力が信用されているという証左だろう。


であれば、その期待には配信者として応えなければならない。



『『『『ウゴゴゴゴゴォオオオオオ!!!!!!!』』』』



壁や地面から生えてきて、今や完全に形を得たロックゴーレムたちが、一斉に俺に向かって突っ込んでくる。



「ふん!」


俺はそんなロックゴーレムたちに向けて衝撃波の拳を放った。



ドガァアアアアアアアアン!!!



爆発するような衝撃が起こり、ロックゴーレムたちがバラバラになって吹き飛ばされる。



グニャグニャ……



ムクムクムク……



『ウゴォ…』


『ウゴゴォオオオ…』


『ォオオオオ…』


「まぁそうだよな」


こちらに向かってくるロックゴーレムたちをひとまず倒したのだが、しかしロックゴーレムはキングロックゴーレムの力によって次から次へと生み出される。


その生産力に今の所限界のようなものは見えない。


ということは生み出されるロックゴーレムを地道に倒しても意味がないということだ。


ロックゴーレムを作るための岩は、ダンジョンというフィールド内において尽きることのない無限のリソースであり、つまり俺にとれる選択肢はこうなってくると限られてくる。


「本体攻撃。まぁこれだろうな」


キングロックゴーレム本体を攻撃して、ロックゴーレムの生産を断つ。


これが一番手っ取り早い方法だろう。


「神止」


すべきことが自分の中で固まった瞬間、俺は即座に『神止』を発動した。


時間を停止し、音がなくなった世界の中を俺はキングロックゴーレム本体に向かって悠々と進んでいく。



「神拳」


そして十分な距離まで接近した俺は、神止を発動しながら容赦なくその胴体部分に向けて神拳を使用した。


ブゥウウウウン


漆黒の渦が出現し、キングロックゴーレムの本体の中心部分をごっそり削り取っていく。


「これでよし……神止解除」


完全に致命傷となりうるダメージを与えたと判断した俺は、神止を解除した。


バシュゥウウウウウウウ…!!!


毎回ながら俺の動いた軌跡に歪みが発生し、豪風が吹き荒れる。


”うおおおおおおおおおお“

”きたあああああああああああ“

”まただああああああああああ“

”あ、ワープした“

”お、これは…“

”使ったな^^“

”使ったか^^“

”どりゃあああああああああああ“

”勝ち確ムーブきたああああああああ“

”最強のコンボきたああああああああ“

“画面が途切れて神木がワープした。ということは…?”

“えー、勝ちです^^”

“勝ったな、風呂入ってくる”



『『『『ウゴォオオオ!?!?』』』』



視聴者はすでに、何が起こったのか察している。


ロックゴーレムたちが風圧に耐えられず、吹き飛ばされて宙を舞い、キングロックゴーレムは、いきなり自身の目の前に現れた俺に驚いている様子だった。


『うゴォオオオオオオ!!!!!』


咆哮し、その巨大な腕を俺に向かって振り下ろそうとする。


「気づいていないのか?」


『ウゴ…?』


「よく自分の体見てみろよ」


『ウゴ……?ウゴォオオオオオオオオオオオオオオ!?!?』


キングロックゴーレムは自分の胴体の中心部がごっそりと削らられてなくなっていることにようやく気づいたようだ。


悲鳴のような鳴き声あげ、二、三を後ずさる。


そのままくるりと向きを変えてまるで俺から逃げるように一歩を踏み出すが、二歩目を踏み出す前にバランスを崩し、地面に倒れた。


そのまましばらくモゾモゾと動いていたが、やがてぴたりと静止する。



俺の神拳はしっかりとキングロックゴーレムの核を仕留めていたようだ。



巨体が地面に溶けるようにして飲み込まれていくのと同時に、周りではダンジョンの壁から生産されたロックゴーレムたちが次々に形を失い崩れていった。


そしてそのまま、キングロックゴーレムと一緒にダンジョンの地面に飲み込まれて消えていく。


「勝ちました」


深層に入ってから初めての勝利宣言を俺は行う。


今日初めての新種の深層モンスターの戦いを難なく制し、まずまずのスタートと言えるだろう。


“うおおおおおおおおおおおおお”

“どりゃあああああああああああ”

“きたあああああああああああああ”

“よっしゃあああああああああ”

“よーーーーーーーーーーーし”

“よーーーーーーし”

“よーーーーーーーーーーーーーーし”

”いくぞぉおおおおおおおおおお“

”盛り上がってきたぁああああああ“


¥10,000

とりあえず今日最初の赤スパ置いとく。

新種討伐おめでとう


¥20,000

即死コンボナイスです大将。

今のあなたに勝てる存在はこの世にいません


¥50,000

投げ忘れるかもしれないから今のうちに上限額置いとくわ。

踏破目指して頑張ってくれ神木。


¥40,000

マジで大将強すぎて攻略失敗する未来が見えないw w w

応援してますがんばれw w w


「スーパーチャットみなさんありがとうございます。応援よろしくお願いします、頑張ります…」


チャット欄も大いに盛り上がり、スパチャもかなり飛んでいる。


同接もすでに250万人を突破し、破竹の勢いで伸びていっている。


ここまでのところ、第二回未攻略ダンジョンソロ踏破配信は怖いぐらいに順調だった。



「どんどん行きます」



俺はこの勢いに乗り、さらなる配信同接記録を目指し、高みに上り詰めようと、意気揚々と攻略を進めていくのだった。

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