第226話


無数の破片となって切り刻まれたロックゴーレムが、地面に転がる。


体のどこかに核があったのか、再生することはなかった。


不死竜ではないのだし、ここから再生するような術を持っていなかったのかもしれない。


「新種のモンスター……ロックゴーレム(仮)討伐完了です」



俺はダンジョンの地面がロックゴーレムの無数の死体を回収するのを確認してから討伐報告を行う。




”うおおおおおおおおおお“

”きたあああああああああああ“

”どりゃあああああああああああ“

”よっしゃあああああああああ“

“よーーーーーーーーーーし”

“よーーし”

“よーーーーーーし”

“やあああああああああああああ”

“ざまぁああああああああああああ”

“かっけぇえええええええええええ”

“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”


チャット欄が一気に沸き立つ。

神止を使ったためにおそらく画面上では俺がいきなりワープして気づいたらロックゴーレムがばらばらになって死んでいった……という映像になっていたと思うが、視聴者も何が起きたかは理解したようだった。



”マジで強いw“

”即死コンボw“

”最強すぎるw“

”マジでかっこいいw“

”その技俺にもやらせろw“

”リアルお前はもう死んでいるやんw“

”時が止まって気づいたら体が無数に刻まれてるとかモンスター視点に立つと強すぎるw“

“マジで今日の探索これだけで勝てるぞw”

“のっけから飛ばすねぇ!!!”

“気合い入ってんなw”

“もうはっきり言って今日この二つだけで勝てそうw”

“やっぱり神止強すぎるwどうみても時間停止能力やんw”

“もはやどんな能力持ったモンスターならこいつに勝てんの?w”



¥10,000

切り抜きです。

いつもお世話になってます。

早速見所ありがとうございます。

切り抜いて拡散さえていただきます



¥20,000

神木拓也さんお疲れ様です。

いつも勝手ながらクリップを上げさせてもらっているものです。

早速見所作ってくるの流石です。

今日はたくさんいいクリップが取れそうで期待しています



¥10,000

英語版の切り抜き師です。

翻訳に時間がかかるので若干ラグはありますが、早速切り抜いて動画にしたいと思います。




「あ、スパチャありがとうございます。切り抜き師さんたちいつも感謝してます。どんどん拡散しちゃってください。そのほうが配信が盛り上がるので」



いきなりの大技に視聴者が大盛り上がりし、同接がグングン上がる中、切り抜き師たちからもたくさんスパチャが飛んできた。


早速切り抜いて拡散に協力してくれるらしい。


ありがたい限りだ。


”切り抜き4444“

”切り抜き4“

”古事記44444“

”自己主張4“

”自己主張すんなごみ“

”切り抜き4“

”クリップ古事記4“

”翻訳古事記44444“

“自己主張4”

”黙って切り抜け”

“しゃしゃってくんな”

”自己主張すんな“

”なんだこいつら“

”金の亡者ども”

“古事記野郎どもがよ”


「……はーい、喧嘩しないでくださいねー。先に進みまーす…」



そして相変わらず切り抜き師たちと対立しているうちの視聴者たち。


俺はこれ以上チャット欄が悪化しないうちにさっさと探索を再開させる。



(いいね……つかみはバッチリだったってところかな?)



正直言って神拳一発で終わりそうだったロックゴーレムとの戦いに神止を使用した甲斐があり、同接はどんどん伸びていく。


深層配信のつかみは完璧といったところだろうか。


この勢いに乗ってさらに同接を増やしていきたい。


そんなことを考えながら、俺はダンジョンの地面に回収されかかっているロックゴーレムの死体を

踏み越えて、その先に進む。



「お、おお…?」


しばらくすると、前方にたくさんのモンスターの気配を感知した。


俺が片手剣を鞘から抜いて構えながら進んでいくと、そこに広がっていたのは通路のあちこちにわかりやすく岩が点在していうという光景だった。



“まさか…”

”またか…“

”多いな“

”これ全部か“

“一気に増えたな”

“1匹じゃダメだったから今度は大勢でってか?”

“数できたな”

“いけるのか神木?”

“再生能力持ちがこんなに…?”

“結構厄介で草’

”今回の深層配信は一味違うな‘

“今回モンスター側も普通に強いぞ”

“お前ら忘れてるかもしれないけどここ未攻略ダンジョンだからな?モンスターが強いのは当たり前なんだよ”

“めっちゃきたああああああ”

“一気に狩にきてる感じでいいね”

“ダンジョンが殺しに来てるやんw”



その光景に視聴者も何が起こっているのか察したようだ。


俺は足を止めて、たくさんの岩が点在する中に足元の小石を拾って投げ込んだ。



『ウゴォオオオオ』

『うゴォオオオオオオ』

『ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』

『ウゴウゴウゴウゴウゴウゴ』

『ウゴゴゴゴゴゴゴウゴゴゴゴゴ』

『ウゴッウゴッ』

『ウゴゴッウゴゴォ…』

『ウゴォ……ォオオオ……』


岩に擬態していたロックゴーレムが次々に立ち上がり、ゴーレムのフォルムを形成する。


あちこちで低い鳴き声を上げながら、集団で俺に向かって近づいてくる。


中にはすでに体の一部を投擲するつもりなのか、ブンブンと腕を振り回している個体も存在する。



「ちょっとだるいな」


これだけの再生能力持ちと一挙に対峙するのはもしかしたら初めてかもしれない。


1匹1匹と戦っていたらキリがない。


「よし」


俺は立て続けになるが、大技を、今度は組み合わせて使うことによってこの群れを攻略することにした。



「神止」


俺はまず超集中状態に入って、周囲の時を止めた。



シン……



音も動きもない静寂の世界が体現する。



「ふぅううううう」



その上で深呼吸をした俺は、久しぶりに使うあの技を発動させた。



「神木サー・改」


ズババババババババババババ!!!!


止まった時の中で無数の斬撃が繰り出され、そこらじゅうにいるロックゴーレムたちがなす術なく蹂躙されていった。

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