第225話
「新種、ですよね…?今までにこんなやついましたっけ」
『ウゴゴゴゴゴォオオオオオ…』
岩から変化したゴーレムのようなそのモンスターは、のそのそとした動きでこちらに近づいてくる。
明らかに今までみたことない深層モンスター……つまり新種だ。
“新種きたぁあああああああ”
”新種だぁああああああああああ“
”ゴーレムきたぁああああああああああ“
”なんだこいつ!?“
“岩のゴーレム!?”
“早速新種きたぁああああああ”
“お前らがフラグ立てるから…”
“キタキタキタキタぁああああああ”
“頑張れ神木!!!”
“普通に強そう”
“今回は初戦闘が新種か”
“盛り上がってきたぁああああああ”
“早速か”
“始まったな”
“深層探索始まったな”
“いけえええええええええええ”
“最初が肝心だぞ神木!!!”
“叩き潰せぇえええええええええ”
いきなりの新種の登場にチャット欄が一気に盛り上がる。
これまでの深層探索でのっけからいきなり新種が出てくることは稀だった。
これは非常に珍しいケースだと俺は気を引き締める。
「とりあえず出方を見ながら戦っています」
俺は片手剣を構えて戦闘モードに気持ちを切り替える。
『ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!』
その明らかにゴーレムのフォルムをした岩のモンスター……ここでは仮にロックゴーレムとしよう……は、ゴーレムらしい低い咆哮と共にのそのそと俺に近づいてくる。
ブォン!!!
そして俺の十メートル手前まで距離を縮めるといきなりその岩でできた巨腕をおおきく振りかぶって宙を殴った。
「…?」
完全にリーチの外からの攻撃に俺は何がしたいのかと首を傾げる。
いつぞやのキョンシーのように衝撃波を起こせるほどの破壊力のパンチを繰り出そうとでもしているのだろうか。
そう思ったのだが違った。
ブォオオオオ!!!
「おっと」
ロックゴーレムがその巨大な腕を振りかぶったかと思うと、ちょうど手の部分に当たる岩が取れて俺に向かって飛んできた。
なかなかの速度の岩が、俺の頭部に向けて正確に飛んでくる。
俺は意表を突かれながらも、しかし余裕を持ってそれを避けた。
俺の反らされた体スレスレのところをロックゴーレムのとれた手が通過していく。
“ファーーーーーw w w”
”なんじゃそりゃw“
”取れるんかい!“
”投げてきたw“
”ずいぶん遠くから攻撃するなと思ったら遠距離攻撃か“
”とれたーーー!?!?“
”ちょっとビビった“
”それは流石に予想外w“
”そうきたか“
”ビビったけど神木なら余裕やったな“
”俺たちにはめっちゃ早く飛んできて見えたけど、神木ならまぁ避けられるわな“
バコォオオオオオオン!!!!
『ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……』
取れたゴーレムの手の部分だった岩は背後のダンジョンの壁に当たって砕け散った。
壁には小さなクレーターのような穴ができ、わずかだが衝撃波のような余波も発生していた。
見かけによらず結構な威力だ。
さすが深層モンスターと言ったところか。
攻撃の破壊力は、やはり凄まじい。
「でも……腕取れたけどどうすんだ?」
『ウゴゴゴゴゴゴゴゴ…』
しかしそうやって自分の体を削りながら戦っていたらいずれ動くこともままならなくなるのではないか。
俺がそんなことを思ってみていると、ロックゴーレムが突如として手の無くなった右腕を地面に突き刺した。
ボコォ……
「お…?」
『ウゴゴゴゴォオオオ…』
するとダンジョンの岩の地面が隆起し、ロックゴーレムの腕に張り付いた。
そして見るまに元の手の形を形成していく。
「なるほど……岩を変化させる特殊能力か…」
『ウゴゴゴゴゴォオオオオ!!!!』
今や俺に向かって投擲した腕を完全に再生させたロックゴーレムが雄叫びを上げる。
どうやらロックゴーレムは、岩を変形させ体の一部にすることのできる能力を持っているらしい。
そしてダンジョンの壁や地面自体が岩でできているため、実質このロックゴーレムはたとえ体の一部を失ったとしても無限に再生できるということになる。
“直ったぁああああああ!?!?”
“直ったw”
“再生か”
”再生能力持ちか“
”そんなのあり?“
”岩があれば再生できるのか“
”ちょっと厄介だな“
”ダンジョン岩だらけだから再生し放題やんけ“
”そういうことね“
”手が取れてどうすんのかと思ったが、まぁ再生できるわな“
”ちょっとウォーターゴーレムっぽいな“
”雑魚かと思ったがそこそこ強い“
”もはや最近再生能力は深層モンスターのデフォになってるよな“
”まぁ攻撃力だけの雑魚じゃないわな“
”再生能力持ちには神拳よ“
”再生能力持ちキラーの神拳で殺そうぜ“
「便利な能力持ってるんだな」
『ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!』
「でもまぁ、関係ないんだけど」
俺は超集中状態に入った。
シン……
周囲の時間が止まったように動かなくなり、音のない世界が訪れる。
静寂に満ちた世界の中で俺はロックゴーレムに接近し、その体を無数に切り刻んだ。
「神止、解除」
そして超集中状態を解除する。
『ウゴ…!?』
突然目の前に現れた俺の姿にロックゴーレムが慌てふためいている。
ビュォオオオオオオオ
背後では俺の動いた軌跡に歪みが発生し、そこから豪風が吹き荒れる中、ロックゴーレムが上を振り上げてリーチの内側にいる俺に攻撃をしようとした。
「一度行ってみたかったんだよな、これ」
俺はそんなゴーレムに、片手剣を腰の鞘にしまいながら言った。
「お前は死んでいる」
『ウゴ…?ウゴォオオオオ!?!?』
すでに神止の時間の中で無数に切り刻まれていたロックゴーレムの全身が、思い出したかのようにバラバラになって崩れ去っていった。
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