第216話
ドドドドドドドド!!!
俺の視聴者たちが一斉に元々の標的である渦巻きナルドに向かって侵攻していく。
パパパパパパパパ!!!
渦巻きナルドは相変わらず馬に乗って逃げながら、機関銃を連射し、大軍を煽るように蛇行しながら逃げていく。
俺は馬に乗って逃げる渦巻きナルドとそれを追いかける視聴者を観察しながら、背後からついていく。
「お、もしかしてあれがあいつの拠点か?」
やがて先行する渦巻きナルドのその先に、柵で囲まれた巨大な拠点のようなものが見えてきた。
「あれを一人で作ったのか?だとしたらすごいな…」
それは湖のほとりに位置するかなりの大拠点だった。
周りを柵で囲まれており、背後には湖がある。
どうやら湖を背後に据えるように拠点を構えることで、前方以外からは攻められないような作りになっているらしい。
この巨大な拠点を一人で作ったのだとしたら相当な手間だろう。
まぁ関係ないが。
一度戦いが始まった以上は全軍を持って叩き潰すまでだ。
「みんな!!多分あれが渦巻きナルドの拠点だと思う。今まで集めた武器とか防具とかを上手に作ってみんなでレイドしよう!!」
俺は視聴者たちにそんな号令をかける。
ドドドドドドドド!!!!
標的を定められた視聴者の大軍が、水を得た魚のように一斉に渦巻きナルドの拠点に向かって突進を始めた。
「さて……まずは一発かましとくか…」
渦巻きナルドは明らかに拠点の中に入って戦うつもりのようだった。
俺はこれまで一方的に視聴者を虐殺された仕返しとして、一発渦巻きナルドにかましておくことにした。
「お前のスナイパーライフル、使わせてもらうぜ」
最初に渦巻きナルドを仕留めた時に視聴者が奪って俺に献上してきたスナイパーライフルを俺は構える。
「集中状態」
俺はグッと集中して集中状態に入り、周囲の時間を遅くする。
ソローモーションの世界の中で、俺は渦巻きナル
ドから奪ったスナイパーライフルに弾を装填し、完璧な偏差を考慮して、自分の拠点の中に逃げ込もうとしている渦巻きナルドの頭を狙った。
パァアアアアアアアン!!!!
銃弾が発射されると同時に俺は集中状態を解除する。
バシュッ!!!!!
狙いは違わず、弾丸は拠点の中へウマで逃げ込もうとしている渦巻きナルドの頭を捉えた。
ドサッ!!!
渦巻きナルドが馬から落ちる。
「はい、やっちゃって」
俺がそういうと、馬から落ちた渦巻きナルドに視聴者たちが殺到した。
= = = = = = = = = =
「もうすぐだ!!もうすぐだぞ!!」
神木拓也の大軍を煽りながら馬で平原を駆け抜けていた渦巻きナルドは笑みを浮かべる。
もうすぐで自分の拠点に到着する。
拠点についてさえ仕舞えば、こっちのものだ。
柵とタレットでガチガチに固められた拠点の中から、神木拓也の大軍を一方的に攻撃することが出来る。
「見えてきた!!!」
ロケットを発射し、手榴弾を投げ込み、機関銃を乱射して神木拓也の視聴者たちを惹きつけながら逃避行を続けていた渦巻きナルドはついに前方に見えてきた自分の拠点に歓喜する。
あとはあそこの中へ入って仕舞えば、もうこちらのものだ。
一方的に神木拓也の軍隊を蹂躙できる。
そう思った矢先だった。
バァアアアアアアアアアン!!!
巨大な銃声が聞こえてきた。
まずい。
そう思った直後、銃弾が渦巻きナルドの頭を貫いた。
画面が血の色に染まり、渦巻きナルドの操作するキャラは馬から滑り落ちてしまう。
「くそ…撃たれたのか…?」
ダメージで動きの鈍くなったキャラクターの視点を操作して、背後を仰ぐ。
遠くにスナイパーライフルを構えた神木拓也の姿が映った。
「あいつに撃たれたのか…!くそ、この距離でヘッドショットを出すなんて運のいいやつだ…!」
渦巻きナルドはたまたまヘッドショットを当てた神木拓也の運の良さに悔しげに表情を歪める。
本当は神木拓也はまぐれなどではなく、確実に銃弾を狙った場所に当てる能力を持っているのだが、そんなことは探索者でもない渦巻きナルドが知る由もなかった。
ドドドドドドド!!!!
「くそっ、きやがった!!ゴキブリどもめ!!!」
あと少しで拠点の中に逃げ込めるというところで頭を射抜かれ、馬から落ちてしまった渦巻きナルドに神木拓也の視聴者が殺到してくる。
まるで生存者に群がるゾンビのように集まってきた神木拓也の視聴者が、拳や石を使って瀕死の渦巻きナルドを撲殺してくる。
画面にdeadの文字が表示され、リスポン地点選択画面が現れた。
「くそが……また殺された…」
バァン!と渦巻きナルドは一発台パンをかましてストレスを発散する。
「だが、まぁいいだろう…ロケットを取られたのは痛いが…弾はほとんど使い切った…そのままじゃ使えまい…それに拠点の中にはまだまだたくさんの武器がある」
殺された渦巻きナルドは、自分の拠点の中にリスポンした。
外の死体から防具や武器、そして馬が奪われてしまうのはこの際どうでも良かった。
ようやく神木拓也の軍隊をこの自らの拠点の近くまで引き寄せることに成功したのだ。
あとはこの柵とタレットでガチガチに固められた難攻不落の拠点の中から一方的に高火力で神木拓也の軍隊を蹂躙するだけあ。
「ククク…覚悟しろよ神木拓也と視聴者ども……ここからが本番だ…」
渦巻きナルドはありったけの爆発物を装備して、拠点の中の最も高い塔へと登っていくのだった。
= = = = = = = = = =
「大将、渦巻きナルド討伐しました」
「大将、無事に敵を殺しました…」
「これが戦利品です、大将」
俺が馬から撃ち落とした渦巻きナルドは、視聴者の大群によってあっという間に蹂躙され、撲殺された。
“よーーーーーーーーーーし”
“どりゃああああああああああああああ”
“ざまぁああああああああああああああ”
”よっしゃああああああああああああ“
”よーーーーーーーーし“
”よーーーーーーーーーーーーーーーし“
”やあああああああああああああああ“
”うおおおおおおおおおおおおおおおおお“
”きたああああああああああああああ“
”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!“
一方的にやられ放題だった渦巻きナルドが仕留められてチャット欄で視聴者が沸いている。
ゲーム内では、視聴者たちが馬や防具、武器などの戦利品を早速強奪して、それぞれに配ったりしている。
「さて、ここからが本番だ!多分渦巻きナルドは拠点の中にリスポンしたと思う!!みんな!売られたケンカはしっかり買おう!この拠点をみんなで落とそう!協力してくれるかな?」
俺が全体ボイスチャットを使って視聴者たちにそう尋ねると、全員がザッとその場に膝をついた。
「おぉ…」
何千という数のプレイヤーが、俺に忠誠を誓うように膝をつくその光景に俺は思わず唸り声を漏らしてしまった。
まさに圧巻でとても心強い光景だった。
”すげぇw”
“うおおおおおお燃えてきたぁあああああ”
“絵面すげーな”
“忠誠心えぐいw”
“何この統率されすぎた軍隊w”
“圧倒的じゃないか我が軍は”
“やるぞぉおおおおおおおおおお“
”面白くなってきたぁああああああ“
”渦巻きナルド潰すぞぉおおおおお“
”日本人の怖さを思い知らすべ^^“
”これは勝つる“
”まーた神木拓也の犠牲者が一人^^“
”やれえええええええええええ“
いよいよ始まろうとしている渦巻きナルドとの正面衝突に視聴者たちが沸いている。
俺は全軍の様子が見渡せる高台まで馬で移動し、献上品の中にあった長剣の鋒を渦巻きナルドの拠点へと向けた。
「全軍突撃ぃいいいいいいいいい」
ぉおおおおおおおおおおおおお!!!!
そんな雄叫びがゲームの中から聞こえてきた気がした。
ドドドドドドドドドドドド!!!!!
周囲を蹂躙する行進音と共に、五千をゆうに超える神木軍が渦巻きナルドの巨大拠点に向かって突撃を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます