第202話
ブゥウウウウウウウウン…
『ギュイ……イォオオオオオ…』
神拳によって出現した漆黒の虚空が、古代兵器の体を削り取る。
俺に向かって攻撃を行おうとしていた大砲のような光景の射出機もろとも、古代兵器の体の中心部分は、どこまでも暗い虚空に飲み込まれ跡形もなく消失した。
ギー…ゴゴゴゴゴ…ゴゴゴゴ…
残った古代兵器の体はもはや、動く機能すら残していないように見えた。
古代兵器は力無い鳴き声を上げるとともに、ゆらゆらとしばらく揺れて、それから頭部の重さに引っ張られるようにして仰向けに倒れた。
ガシャアアアアアアアアン!!!
古代兵器の体がついにバラバラになって地面に転がった。
アームやレッグがかろうじて動こうと点滅しているが、しかし供給される動力がないためか、やがて静かに灯していた光を消して動かなくなった。
『ギュィイイイ……ン…』
頭部は未だ鳴き声を上げているが、もはや他の部位とは完全に切り離されてしまい、動くことは出来なさそうだ。
再起不能。
こちらの勝利と判断して間違いなさそうだった。
「勝ちました」
“うおおおおおおおおおおおおおおお”
“どりゃあああああああああああああああ”
“きたああああああああああああああああ”
“おっしゃああああああああああああああ”
“よっしゃああああああああああああああ”
“よーーーーーーーーーーーし”
”よーーーーーーーーーーーーーーーーし“
”よーーーーーーーし“
”よーーーーーーーーーーーーし“
”よしよしよしよしよし“
”勝ったぁああああああああああああ“
”なんかよくわかんないけど勝ったぁあああああああああ“
“あーあ、もうよくわかんねぇや^^”
“勝ったならよし”
“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”
”未攻略ダンジョン深層ボス討伐どりゃあああああああああああ“
チャット欄で視聴者が一気に沸く。
俺の勝利宣言で、たくさんの祝福の声がとび、ご祝儀のスパチャが投下されまくる。
¥50,000
どりゃああああああああああああああ
¥50,000
きたああああああああああああああ
¥50,000
神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!
¥50,000
なんか最後らへんよくわかんなかったけどボス討伐おめでとうございます大将^^
¥50,000
神回確定おめでとうございます。
もっと払いたいけど上限金額置いときます
¥50,000
このクソサイトなんで一度に五万円しか投げられないの?アホなの?
¥50,000
一日のスパチャ上限五万円じゃ少なすぎるわ。
明日も投げるから大将とりあえずこれ取っといてくれ
¥50,000
マジでえぐいわお前w w w
¥50,000
やっぱ神木拓也が最強なんだよなぁ!?
¥50,000
神木くん本っ当におめでとう!!!!
次の登校日は凱旋だね!!!
大騒ぎになっちゃうよ!!!!!
¥50,000
神木。
お前ならやってくれると信じてたわ。
マジで感動した、おめでとう。
「皆さん本当にありがとうございます。おかげさまで未攻略ダンジョンソロ踏破達成しました。多分日本初のことなんじゃないでしょうか?わからないですけど、とにかくやり遂げました。よかったらチャンネル登録お願いします」
画面がスパチャの赤で真っ赤に染まる。
かつてない達成感が全身を支配していた。
俺はこの期にチャンネル登録を促すとともに余韻に浸る。
(すげぇ…ほとんどのスパチャが上限金額だ…)
つーべのスパチャの上限金額である50,000円が飛びまくっている。
皆、とんでもない大金を惜しみなく投げており、中にはこれじゃ足りないと言ってくれる視聴者もいる。
ちょっともらいすぎな気もするが、これだけの大金を視聴者が投げたくなるぐらいの感動とエンタメを届けられたのだとここは前向きに捉えるとしよう。
¥50,000
神木マジでおめでとぉおおおおおおおおおおおおおお
¥50,000
おい神木!!!!
ダンジョンの外が大変なことになってるぞ!!!
¥50,000
ダンジョンの外まじで大騒ぎになってる!!!みんなお前の踏破を祝ってるぞ神木!!!!
「ダンジョンの外での応援もありがとうございます。本当に感謝しています。地上に帰還した際には一緒に祝わせてください」
¥50,000
大将!余韻に浸っているところ悪いんですが、さっき一瞬画面が途切れたと思ったら急にワープしたのあれなんだったんですか!?
「え、あ、そうだ…その説明をしてなかった…あれはですね…」
”そういや画面一回止まったよな“
”急に見えなくなった“
”気づいたら大将がワープしてた“
”あれなんだったんだ?“
”ラグいオンラインゲームみたいになってたわ“
”大将あれどうやったの?“
”神木レーザーの網目をどうやって掻い潜ったんだ?“
”あれだけよくわかんなかったわ“
”あれってカメラの問題?“
”ラグいとかじゃないよな。明らかにあの時の大将、レーザー光線で身動き取れてなかったし……それがいきなりボスの目の前までワープしたからびっくりしたんだけど“
”あれなんだったの?“
“踏破の衝撃で忘れてたが、それがききたいんだった”
“教えてくれ。神木、あれ一体どういうことなんや?”
踏破して気分が高揚したことで忘れそうになったが、そういえば視聴者に俺がどうやってレーザー光線の網目を掻い潜ってボスモンスターに接近したのかを説明するのを忘れていた。
ちゃんと説明して何が起こったのかを明らかにしておかないとな。
「実はあれはですね…いわゆる新技というか……新しいモンスターの攻略方法を試したというか…」
”お?“
”新技?“
”ふむふむ“
”何したんや?“
”まさか大将、とうとう魔法使えるようになった?“
”瞬間移動できるようになった?“
”ワープできるようになったんやね、大将”
”草。まぁ神木ならやりかねんが“
”瞬間移動は草。でも大将ならあり得そう“
「瞬間移動とかじゃないです。あの時俺はレーザー光線をグッと集中するやつ……あのいつもの時間を遅くするやつで避けてたんですけど…」
”それは気づいてた“
”せやろな“
”わかってた“
”それは気づいた“
”急に倍速の動きし始めたからそうやろなと思ってた“
”それで?“
「その時にこう思ったんですよね……このグッと集中して入りう状態でさらにグッと集中する。こう……ぐぅうううううとめっちゃ集中する感じです。それをやれば……さらに時間が遅くできるんじゃないかと」
”は?“
”へ?“
”ん?“
”お?“
”ん…?w“
”なんて…?w“
”でた…w“
”まーた始まった…“
”w w w“
「集中して周りの時間を遅くした状態でさらに集中状態に入り、もっともっと周りの時間を遅くする。その方法を試してみた結果、成功したんです。気づいたら、世界から音がなくなってて、レーザー光線の動きとかがほとんど止まって見えるようになりました……チャット欄のコメントもほとんど止まってました。なんか自分だけが動ける世界に来たみたいな感じでちょっと面白かったです」
”……“
”………“
”…“
”…………“
”………………“
”…“
”…………………“
”……“
「あ、そうそう。ちょうどみたいな感じでチャット欄も止まってました。再現ありがとうございます」
俺がチャット欄が止まって見えたと言ったことで視聴者がわざわざここでそれを再現してくれたみたいだ。
本当に一体感のあるうちの視聴者たちだ。
「で、レーザー光線とかもほとんど止まっていた中でボスモンスターに接近するのは簡単でした。ほとんど止まっているレーザーをくぐったり、触らないように注意してよけたりしながらボスモンスターに接近して、そこで集中状態を解きました」
”……“
”………“
”…“
”…………“
”………………“
”…“
”…………………“
”……“
「あ、もうコメント打っても大丈夫ですよ。それで集中状態をといたら急に時間が動き出して、何もかもが元通りになりました。音も聞こえるようになって……たぶん映像が写り始めたのもそこなんじゃないかと思います。超集中状態の時は、映像は乱れていたと思います……後で配信画面確認しておきますね…」
”……“
”………“
”…“
”…………“
”………………“
”…“
”…………………“
”……“
「あれ?皆さんどうしたんですか?もうチャットしていいですよ。再現はもう十分です。それで、超集中状態を解除した後に、俺の通った後に歪みみたいなのが出来てました。これは多分、結果から言うと俺が早く動きすぎたからだと思います。超集中状態の俺からしたら、とまった時間の中をゆっくりと動いた感覚だったんですが、結果から言えば俺は1秒とたたないうちに随分の距離を移動したことになりますから……その結果が現実に反映されてああいう歪みができたんだと思います。あの時の豪風もその歪みによるものです」
”……“
”………“
”…“
”…………“
”………………“
”…“
”…………………“
”……“
「だいたいこんな感じです、あの時に起こった出来事は。つまり俺は、超集中状態でほとんど止まって見えるぐらいに時間を遅くして、それでボスモンスターに接近したんです。これ……配信だと伝わりにくくてあんまり映えないんですけど……でもあの時はそれぐらいしか方法がなくて…」
”……“
”………“
”…“
”…………“
”………………“
”…“
”…………………“
”……“
「というかさっきからどうしたんですか?コメント全然流れないんですけど…おーい、あれ?配信とまった…?なんで…?回線が悪いのかな…?おーい、俺の声聞こえてます…?ん?おかしいな…」
その後しばらくチャット欄は原因不明のフリーズ状態のままだった。
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