第197話


“ざまぁ”

“効いた”

“効いてる効いてるw”

“効いてら^^”

“効いてるねぇ^^”

“効きすぎw w w”

”効いてて草なんよw“

”効きすぎてて草なんよw“

”効いてる←これやめてね“

”チー牛「効いてる効いてるw」“

”チー牛「チー牛「効いてる効いてるw」」“



地面に開いた穴のあちこちから悲痛な悲鳴が聞こえてきて、周囲がグラグラと揺れる。


尻尾の針を切り落とされた深層モンスターが、ダンジョンの地面の下で暴れ狂っているようだった。


チャット欄には怒涛の「効いてる効いてるw」というコメントが流れる。



(さて、どうくる…?)



とりあえずうざったい尻尾の針を切り落としてみた俺は、次にこのモンスター……仮に地底竜としてみようか……がどう出るのか、出方を伺う。



『ギェエエエエエエエ!!!』



地底竜は、鳴き声を上げながら、ダンジョンの中で暴れ回っているようだった。


ちょうど真下に地底竜がいると思われる地面が隆起し、ダンジョンの地面や壁があちこち破壊される。



(再生力があるタイプではないのか…)



回復力があるタイプのモンスターは、ダメージを受けると、大抵が動きを止めて回復に専念するのだが、今の所地底竜はまだ怪我から立ち直れていないようだった。


俺はこの地底竜には、機動性は高いが再生能力はないかもしれないと考えた。



ボゴォオオオン!!!



『ギェエエエエエエエ!!!』



「うおっ!?」



不意に近くから鳴き声が聞こえたと思ったら、俺の立っていた地面が少し沈んで、そこからいきなり地底竜の顔が飛び出してきた。


俺は咄嗟に跳躍する。



ジャキン!!!



地底竜の鋭く生え揃った牙が、空を切る。



『ギェエエエエエエエエエ!!!!』



地底竜は目を爛々と輝かせ、明らかに怒り狂っているように見えた。


地面からの奇襲に失敗すると、そのまま天井へと突っ込んで穴を開けて、今度は下から上へとダンジョンの中に逃げようとする。



「いや、逃げるなよ」



流石に2度目ともなると、タダで見逃すわけにはいかない。


俺はダンジョンの地面から天井へと移動している最中の地底竜に対して、その無防備となった胴体に攻撃を行った。



「神斬り」



斬ッ!!!



世界が上下に真っ二つになった。


地底竜の胴体の4分の1ほどが切り落とされて地面に転がった。



”うおおおおおおおおおおおおおお“

”きたあああああああああああああああ“

”どりゃあああああああああああああ“

”でりゃあああああああああああああ“

”神斬りきたあああああああああああああ“

”おりゃああああああああああああああ“

“やああああああああああああああああ”

“でたぁああああああああああああああ”

“神斬り最強!神斬り最強!神斬り最強!”



『ギェエエエエエエエエエ!?!?』



地底竜が再び凄まじい悲鳴をあげる。



(流石に神斬りだと斬れたな)



地底竜の胴体は、尻尾と違って竜種特有のあの硬い鱗に覆われており、斬撃を放った程度では斬れそうもなかった。


なので俺は斬ることに関しては最強である神斬りを使用した。


その結果、地底竜の尻尾の方の4分の1を切り落とすことに成功した。


地底竜は再び悲痛な悲鳴をあげながら、それでも残った頭部のついた4分の3の体は、そのまま天井へと潜り、ダンジョンの中へと逃げ延びていった。



(致命傷にはならなかったか…)



地底竜の存在感はまだ近くから感じ取れる。


切り離されて地面へと残された4分の1の方は、トカゲの尻尾のようにビクビク動いているが、アンデットドラゴンの時のように別の意思を持って動き出したりはしていなかった。


おそらく放っておいたらそのうち動かなくなるだろう。


だが、死体として回収が始まっているわけではない。


どうやらこれでも致命傷にはならず、残りの4分の3はまだ生きていて、ダンジョンの中を動き回っているようだった。



ぎぇえええ……ぇえええええ…



ダンジョンの中から、くぐもった地底竜の悲鳴が聞こえる。


神斬りの相変わらずの威力にチャット欄が盛り上がる中、俺はこの地底竜との戦闘をそろそろ終わらせようと考えていた。



(場所を特定して攻撃するのは難しい……だったら……どうにかダンジョンの内部から外へと炙り出す必要がありそうだな…)



姿の見えない地底竜を仕留めるのは,難しいため俺はこの地底竜をとりあえずダンジョンの内部から外へと誘き出すことにした。



ぎぇえええ…ぇええええええ




先ほどの攻撃が相当効いたのか、地底竜はなかなか外気に姿をさらさず、攻撃をしてこなくなってしまった。



「だったら…」



俺は向こうから仕掛けてくるのを待つのが焦ったくなり、少々力技に頼ることにした。



「ふんふんふんふんふんふん!!!」



俺は片手剣を持った右手をぐるぐると回した。


ヘリコプターのプロペラのように、少しずつ速度を早めていく。



ビュォオオオオオオオ!!!



最初に起こったのは風だった。


これは以前にも、不死竜の出す毒ガスを風で吹き飛ばすためにやった技だった。


しかし俺は今回この技を応用しようと考えた。


この腕の回しを……さらに早くする。


片手剣から斬撃が発生するぐらいに。



「ふんふんふんふんふんふんふぅうううううううううううん!!!!!」



斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬……



斬撃が幾重にも発生し、ダンジョンの壁を削る。


360度、天井、地面、壁を斬撃が満遍なく蹂躙し、まるで綺麗な円を描くような溝を作る。



「ふぅううううううううううんぉおおおおおおおおおお!!!」



俺は斬撃が発生するほどに右手を回転させている状態で、そのままゆっくりと進んでいった。



斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬…………



ドガガガガガガガガガ!!!!



斬撃によってダンジョンの壁、地面、天井が削れていく。



ぎぇええええ…ぇえええええ



隆起した地面が、どんどん先へと進んでいく。


地底竜が、追い詰められるようにして少しずつ奥へ奥へと逃げていく。



(よし、このまま…)



ドガガガガガガガガガガ!!!



俺は腕を振り回し、ダンジョをさらに掘り広げるようにして削っていき、少しずつ地底竜の逃げ場を無くしていく。



ぎぇえええ…ぇええええええ 



地底竜は奥へ奥へとダンジョンの中を逃げていくが、いずれ外へと炙り出されるのはもはや時間の問題だった。



“ファーーーーーーw w w w w”

“やべぇええええええええええw w w”

“なんだそりゃあああああああああ!?!?”

“どりゃあああああああああああ”

“やばすぎw w w”

”きたあああああああああああ“

”大将の「ふんふん」きたあああああああ“

”神木「ふんふんふんふん!」←これすき“

”それすち“

”大将のふんふんすき“

”うおおおおおおおいけえええええええ“

”追い詰めろぉおおおおおおお“

”逃すな殺せええええええええええ“

”また力技です、か“

”やっぱ脳筋の大将が最強だぁあああああ“



力技すぎる俺の地底竜の追い詰め方に、視聴者たちが沸く。


俺はとにかく絶対に背後に逃さないように腕を振り回し続け、地底竜を追い詰めていく。



やがて…



『ギェエエエエエエエエ!!!』



「おし、きた…!」



とうとう第四層の奥まで追い詰められ、逃げ場を無くした地底竜がダンジョンの中から出てきた。



『フシュゥウウウウウ…シュォオオオオオ…』



その体は4分の1が削られて、絶えず体液が流れ出ている。


予想通り回復能力を持っているわけではなさそうだった。


今や全身を外気に晒している地底竜は、荒い息を吐き、赤い瞳で憎々しげに俺を睨んできた。



「ほら、もうどこにも逃げ場はないぞ。こいよ」



『ギェエエエエエエエ!!!!』



俺が手招きをすると、地底竜が咆哮し、蠍のように地面を蛇行しながらこちらに突撃してきた。



「神拳」



俺はそんな地底竜が射程圏内に入った瞬間に、容赦なく神拳をお見舞いした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る