第195話
“うおおおおおおおおおおおおお”
“きたああああああああああああ”
“燃えてる燃えてるw”
“効いてる効いてるw”
“効いてら^^”
“賢い”
“これは賢い”
“頭いい”
“大将頭いい”
“珍しく大将頭脳プレイ”
“正解“
”いいね正解大卒“
”うーん、これは大卒w“
”神木拓也賢い“
”大将、頭を使わせても強いことが判明“
”どりゃああああああああああああああ“
“神拳だと芸がないからな。これはスマートですわ”
『ヴォォオオオオオオ……』
メラメラとアンデットドラゴンの体が燃えている。
ゾンビといえば弱点は炎だろう、という考えから試してみた攻略方法だが間違っていなかったようだ。
アンデットドラゴンは炎に包まれ、少しずつ焼けていきながら苦しげに身をよじっている。
「斬っても倒せそうにないんで焼いてみました……神拳でもよかったはよかったんですけどね」
俺が導き出した攻略方法に、視聴者が沸く。
もちろん視聴者が言うように神拳で手っ取り早く終わらせることもできたんだが、このほうがスマートだからな。
深層のモンスターには、無理と思えるような能力の持ち主でも何かしらの攻略方法があることが多い。
いろんな戦い方を試してそれを探していくのもまた、深層攻略の醍醐味であると言えるだろう。
『ォオオオオオオ……』
アンデットドラゴンは燃焼し,どんどん小さくなっていく。
ダンジョン全体に焦げ臭いニオイが漂い俺は思わず鼻をつまむ。
そのまま燃えるアンデットドラゴンを映していると、やがて何もダメージを受けていないはずの頭部が地面に飲み込まれ始めた。
「あ…死んだみたいです」
やはり二つに分かれても、一応一つの生物だったらしい。
肉体が完全に焼かれて消し炭になった後、燃えていない頭部も動かなくなり、死体となってダンジョンの地面に飲み込まれていった。
“よーーーーーーーし”
“よーーーーし”
“よーーーーーーーーーーーーし”
“勝ち”
“勝ったわ”
“頭脳プレイいいね”
“俺の勝ち^^”
“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”
“よーーーーーーーーし”
“やりますねぇ“
”また新種の竜種を討伐^^“
”大将!今の所ばっちり切り抜いておきました“
”拡散しとくわ“
”同接どんどん増えていいね^^“
”深層攻略サイコーーーー“
¥10,000
大将、新種討伐お疲れ様です。神木拓也最強!
¥20,000
大将の頭脳プレイ最強!!!脳筋じゃないところどんどん見せちゃってくださいよ!!
¥40,000
神木拓也しかかたん!!!
¥50,000
こんなに賢い大将が脳筋脳筋言われるの、なぁぜなぁぜ?
アンデットドラゴン討伐完了で、チャットのコメ欄が早くなり、スパチャが飛ぶ。
スパチャの文章には神拳以外の攻略方法を導き出した俺を頭脳プレイと褒めるものや、かなり工夫して戦っている俺が脳筋と言われる理由がわからないといっている視聴者もいた。
そう評価してもらえるのはありがたいんだが、ところでこの「なぁぜなぁぜ」ってのはなんなんだろうか。
最近コメント欄でよく見る気がする。
これが最近の流行り言葉なのだろうか。
「スパチャたくさんありがとうございます。無理しない範囲でお願いします……ところでこのなぁぜなぁぜってなんですか?」
”あ“
”うわ“
”あ…“
”あ“
”おえっ“
”きめぇ…“
”それやめて“
”それ嫌い“
”それきもい“
”若者の寒い流行り“
”それ痛いからやめて“
”それ嫌い“
”それやめて“
”ガチできしょい“
”寒い”
“鳥肌立つからやめて”
“それ本当に嫌い”
俺がなぁぜなぁぜといった途端に、視聴者が反応し「それ嫌い」「それやめて」と怒涛の如くコメントされる。
あれ、これって流行ってるわけじゃないのか?
コメントを追ってみると、どうやら俺の視聴者層にとって一番嫌いな若者のノリらしく、拒絶反応が出てしまう視聴者が大半のようだ。
「流行っているなら取り入れようと思ったんですけど…やめておきますね」
俺は視聴者の本気で嫌がっていそうな反応を見て、「なぁぜなぁぜ」と言うのはもうやめておこうとそう思った。
= = = = = = = = = =
「こんなに化け物みたいに強い人が2年間も配信で目がでなかったのなぁぜなぁぜ!?」
西園寺グレース百合亜が、自室でほとんど発狂に近い叫び声をあげた。
神木拓也の深層配信が始まってから数時間。
彼女は一歩もパソコンの前から動くことなく、熱狂的な信者のように神木拓也の放送に張り付いて食い入るようにしてみていた。
サムライゾンビを自害に追い込むという離れ技をやってのけた神木拓也はその後も、ある意味期待を裏切らない攻略の数々をやってのけていた。
おそらく巨人系のモンスターの一種だと思われる超巨大な女の怪物モンスターの群れを、空間を断ち切る一閃で切り裂く。
その後に出てきた、西園寺もまだ知らない半身の女のモンスターを、速さで無理やり追いついて難なく倒す。
そして次の階層で出てきたアンデットのゾンビ……欧米でドラゴンゾンビと呼ばれている厄介なモンスターを、燃料もなしに摩擦で炎を起こして難なく葬ってしまった。
「こんなのが2年埋もれていたなんて…もう日本のネットが私にはわからないわよ…」
神木拓也の戦い方は常に予想の斜め上をいき、化け物時見ていた。
とても常人には不可能な討伐方法を導き出し、それを化け物のような身体能力で難なく可能にする。
こんな、ほとんど人間兵器のような化け物人間が、2年も一目につかず、埋もれていた事実に西園寺グレース百合亜はあいたくちが塞がらなかった。
「とりあえずサブ垢でスパチャしちゃいましょう」
西園寺グレース百合亜は、神木拓也の戦いに敬意を評して、自分だとわからないサブ垢でこっそり神木拓也にスパチャをする。
¥50,000
こんなに賢い大将が脳筋脳筋言われるの、なぁぜなぁぜ?
「これでよし、と。素晴らしい配信には対価を支払わないとね」
こんないろんな意味で面白く,常識外で、そして価値ある放送が無料で流れていること自体がおかしいのだ。
本人は自覚すらしていないだろうが、これだけの深層モンスターの攻撃パターンなどといった重要情報が手にはいる夢のような配信は、きっと日本国内や、外国の名だたる探索者クランが齧り付くようにしてみているはずだ。
手に入れようと思ったら、その断片だけで何千万という価値がつくような情報を、神木拓也は自らの配信にて、無料でインターネット上に垂れ流しているのであり、それは一線級の探索者、西園寺にとって本当に以上で異質なことだった。
「探索のことになると天性の勘のようなものも見せてくれるわね……普段はぼんやりとして賢そうには見えないのだけれど…」
ボクシングIQ、サッカーIQなんて言葉が世の中にはあるが、もし探索者IQなんて言葉があれば、神木拓也は間違いなく高数値を叩き出すことだろう。
普段の言動は、非常に天然で、ボケているんじゃないかと思う時もあるが、戦いになるとまるで別人になったかのように奇想天外な攻略方法を編み出してしまう。
西園寺には、こんな神木拓也が“脳筋”……英語で言うところの“マッスルブレイン”などと言う評価を受けていることがいまだに理解でいなかった。
「う…トレイに行きたいわね…でも、神木拓也の配信から1秒も目を離したくない…」
ふとトイレに行きたくなった西園寺だったが、トイレに行く短い間でも神木拓也の配信から目を離したくないと思ってしまった。
ボトラー。
そんな単語が一瞬だけ頭の中に浮かんだが、流石に神木拓也の配信のためとはいえ女性でありながらそんなことするのはあまりに品がなさすぎると言うことで、西園寺はしぶしぶスマホ端末を手に、トイレへと向かったのだった。
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