第194話
“う、動いたぁああああああ!!?!?”
“ファーーーーーーw w ww w“
”きんもっ“
”きんもーだよぉおお!!“
”なんだこれ!?“
”ファッ!?“
”ゾンビ!?“
“首動いてら^^”
“おえええええええええええ”
“また黒いモンスターきたな”
“トカゲかな?w”
“まぁ、ドラゴンもトカゲだから多少はね?”
”胴体も首もどっちも生きてて草なんよw“
”再生でもするのかと思ったらwこれは新しいなw“
腐臭漂うアンデットドラゴンはなんと、首を切り落としても死ぬどころか、まるで別々の生き物に分裂したかのようにそれぞれがうねうねと動き出した。
首を失った胴体は何事もなかったかのように動き回り、地面に転がった首も、逆さの状態で口をバクバクとさせて、俺のことを凝視している。
ダンジョンの床による死体の回収は始まっていない。
つまりあのドラゴンは両方とも生きているのだ。
切り落とされた首も。
頭を失った胴体も。
「マジかよ…」
アンデットドラゴンと自分の中で名付けた名前もあながち的外れでもないかもしれない。
『グルォオオオオオオ!!!』
『……ッ!』
地面に転がった頭部が大口を開けて吠え、体の方は先ほどにも増して暴れ回っている。
二つに分かれたことによってなんだか先ほどよりも活発になっているような気がした。
「えー……どうしよこれ」
少なくとも斬る系の攻撃はこのドラゴンに効かないことは明らかだ。
切ってもそれぞれが動き出すとわかった以上、どんなに切ったところでより細かく分かれた状態で生存し続けるだけだ。
腕を切りおとせば、それが独自に動き出すだろうし、翼や足も同様の結果になるだろう。
「だったら……一つ一つの部位を動けなくなるほどに細かくきるとか…?いや、現実的じゃないな」
一瞬俺はこのアンデットゾンビの体を、もはや生きていようと動くことができないようになるまで細切れにすることも考えたが、現実的ではないとその案を捨てた。
ドラゴンゾンビの体は硬い鱗で覆われている。
普通の斬撃ではそもそも切断することができな
い。
ゆえに切り刻みたいのなら神斬りを使うことになるのだが……流石にこの巨体を細切れにするほどの回数神斬りを連打したらダンジョンが持たないだろう。
崩落すれば、配信どころではなくなる。
神斬りでのゴリ押しは無しだな。
となれば…
「まぁ……神拳ですかねぇ…」
それしかないだろう。
こういう系に一番効果があるのが、モンスター自体を消し飛ばすことができる神拳だ。
神拳の前には、再生したり切り刻んでもまだ生きている肉体も全く意味がない。
神拳を喰らえば、全てが消し飛び、そこには何も残らないからだ。
”こんなの無理ゲーだろw“
”まぁ神拳しかないな“
”斬っても斬っても動き出すやろな、この感じだとw“
”頭さんちょっとずつこっちに近づいてきているのわろたw w w“
”なんかシュールだな“
”なんだこのドラゴンw w w“
”どいつもこいつも本当に深層のモンスターは化け物じみてるよな“
”新しいタイプのドラゴン“
”おいそろそろ体の方がくるぞ神木気をつけろ!!“
”神斬りじゃ無理だ。こういう時の神拳よ“
”神拳以外で攻略法を思いつかない。早くやっちまえ神木!!!“
”神拳で消し飛ばすべ^^“
”神拳容赦なく使いましょう大将“
チラリとコメント欄を見れば、神拳というワードがたくさんならんでいた。
視聴者も、このモンスターを手っ取り早く倒す方法は神拳だと察しているようだった。
『ヴァガァアアアアアアア!!!』
『……ッ!!!』
ドガァアアアン!!
バゴォオオオン!!!!
「おっと、よっと」
とうとう体の方が、俺の元へ到達した。
至近距離から、その前足や尻尾で攻撃を仕掛けてくる。
頭部を失い、俺の姿を捉えられていないはずなのに、狙いは的確だ。
気配を察知して攻撃しているのだろうか。
それともあの切り落とされた頭部の視覚が、体の方にも共有されているのか?
わからない。
とにかく今は、倒す方法を考えなくては。
『ヴァガァアアアアアアア!!!』
『……ッ!!!』
ドガァアアアアン!!
バゴォオオオオン!!!!
「ほい、うおっと」
俺はそれなりのスピード、パワーで攻撃してくる体と交戦しながらアンデットドラゴンを倒す方法について考える。
一番手っ取り早いのが神拳だ。
それは俺も視聴者もわかっている。
だが、そればっかりでは芸がない。
深層第一層でウォーターゴーレムを倒した時みたいに何かしらの攻略方法を編み出して、配信を沸かせたい。
あるはずなのだ。
このドラゴンにも弱点が。
「ん…待てよ?アンデットってことはゾンビだよな…?」
俺は自分の中で勝手につけたアンデットドラゴンという名前から攻略のヒントを得る。
アンデット……つまりはゾンビなのだ。
このドラゴンは、動く死体、ゾンビなのだ。
ゾンビドラゴンと言い換えることもできるだろう。
ゾンビの弱点と言えば…?
「火か」
頭の中に一つの攻略方法が思い浮かんだ。
やってみる価値はある。
それでダメなら、仕方がないので神拳を使おう。
「ふんふんふんふんふんふん!!!!」
俺は暴れ狂うアンデットドラゴンに接近し、その硬い鱗を片手剣で削りまくる。
『ヴォガァアアアアアアア!!!!!』
アンデットドラゴンはいきなり接近してきた俺に驚き慌てふためいて、暴れ回るが、至近距離にいる俺に対して巨体を持て余している。
俺はその間に、ひたすらアンデットドラゴンの硬い鱗に対して片手剣で攻撃を加え続ける。
シュルルルルルルルルルルルルルル!!!
鱗と片手剣の刃が擦れ合う音が響き渡る。
ダメージを与えるのが目的ではないため、俺は鱗の表面を素早くなぞるだけの攻撃に調整する。
やがて、俺の望んだ通りの結果が体現した。
ボッ!!!!!
『ヴォガァアアアアアアア!?!?』
アンデットドラゴンの鱗と片手剣の刃が擦れて、摩擦熱が発生。
それが周りの空気と反応して炎となり、一気にアンデットドラゴンの体に萌え広がった。
ボォオオオオオオ!!!!
『ヴォガァアアアアアアア!?!?』
アンデットドラゴンが明らかに苦しみ出した。
痛覚が共有されているのか、地面に転がっている首の方も痙攣している。
「効いてるな」
俺はアンデットドラゴンの苦しみ方を見て、咄嗟に思いついた攻略方法が当たっていたことを確信し、燃えているその巨体を眺めながら背後に距離を取ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます