第183話
“ファーーーーーw w w w w”
“どりゃあああああああああああ”
“うおおおおおおおおおおおお”
“よーーーーーーーーし”
“よーーーーし”
“よーーーーーーーーーーーーし”
“いやいやいやいやいやいや!?“
”w w w w w“
”えっっっっぐw“
”倒したぁあああああああああああ“
”きたあああああああああああ“
今回の探索における最初の新種深層モンスター、ウォーターゴーレムを倒したことによりチャット欄が盛り上がる。
同接が数秒ごとに一万、二万と目に見えて増えていき、チャットの更新が追いつかず、途切れ途切れになる。
ウォーターゴーレムがただの雑魚ではなく、むしろ今までの深層モンスターの中でも相当強い部類だと判明した後の討伐だったために視聴者に与えた衝撃も大きかったようだ。
”いやどういうこと!?“
”大将何したんすか!?“
”ちょっと待って何が起こった…?“
”凍った!?“
”え、魔法…?“
”神木いつの間にか魔法使えるようになったん…?“
”もうこれわっかんねぇな“
”何が起こったのか理解できないのは俺だけ…?“
”なんでゴーレム凍ったん…?“
“いきなり衝撃波パンチ連打し始めてどうしたと思ったら、ゴーレム凍ったんだがww w”
“偏差値低い馬鹿どもが理解できてないわw w w”
“学歴低い馬鹿どもか…?それとも中学生キッズがみてんのか?”
チャット欄にはたった今何が起こったのか理解できていない視聴者もいるようだ。
俺は念の為、ウォーターゴーレムを倒した方法について解説する。
「一応説明しておくと……その、今のは水が高圧力を加えると常温でも凝固することがあるっていう性質を利用しました。その……たまたま思いついた作戦だったんですけど……こう、いろんな場所から圧力をかけて圧力に逃げ場をなくして……それで繰り返してたらなんとか凍らせられました。あとは見ての通りです」
“なるほどw w w”
“理解”
”そういうことか“
”大将にしてはわかりやすい説明“
”なんだその無茶苦茶な倒し方w w w“
”実験か何か?w“
”発想がイカれてるw“
”化け物“
”相変わらず倒し方が尋常じゃない“
”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!“
”そんなのありかよw w w“
”毎度毎度予想の斜め上をいくなお前はw“
”普通に神拳で終わりかなと思ったらまさかの凍らせに行ったw w w“
”うーん、これは頭脳プレイw“
”脳筋なのか頭いいのかわっかんねぇなこれ”
ぎこちない説明だったが、なんとか伝わったようだ。
「お、同接150万人ありがとうございます」
やはり新種のモンスターとの戦闘は人が増えるらしく、同接は150万人に達していた。
まだ深層第一層に潜り始めたばかりでこの数字はなかなかに快挙だ。
(これ、最高記録更新あるか…?)
このペースで同接が伸び続けてくれるならば、最高同接数を余裕で更新することができるだろう。
いや、最高同接を更新してくれなくちゃ困る。
なんてったって今日は未攻略ダンジョンソロ探索なのだからな。
おそらく今日の配信で俺は前人未到の領域に足を踏み入れることになるだろうし、相当な同接の増加が期待出来る。
もしソロで未攻略ダンジョン深層をクリアしたなんてことになれば、同接300万人、400万人、もしかしたら500万人の大台も見えてくるかもしれない。
(頑張るか)
久しぶりに配信で昂りを覚えているかもしれない。
こんなにやる気になったのは、バズってから初めてのダンジョン探索をした時以来か。
「では……どんどん攻略していきたいと思います」
チャット欄が未だウォーターゴーレムとの戦闘の話題で盛り上がる中、俺はさらに先を目指して歩みを再開させたのだった。
= = = = = = = = = =
「ちょっと待って冗談でしょうなんなのよそれ!?」
神木拓也のあり得ないウォーターゴーレム討伐方法を見た西園寺グレース百合亜は、自室で思わず大きな声を出してしまった。
深層に踏み入り、しばらくレイスや、リザードマン、キングスライムといった深層モンスターの中でも比較的簡単に倒せる部類のモンスターたちを倒しながら進んでいた神木拓也は、第一層の終盤でウォーターゴーレムと邂逅した。
ウォーターゴーレムは、ゴーレム系のモンスターの中で間違いなく最強と言われている個体である。
その全身は意志を持った水で構成されており、変幻自在、あらゆる形に変化することができるという特質を持っている。
ウォーターゴーレムには、打撃や斬撃といった基本的な攻撃が効かない。
それは水を殴ったり刃で切ろうとしたりするようなもので全くの無意味だ。
さらにはウォーターゴーレムは、水弾という厄介な攻撃手段も有している。
その腕から発射される水の弾は、容易く岩を砕き、まともに食らえば銃弾に当たった時のような衝撃とダメージがある。
水弾として打ち出された体の一部の水は、自動的にウォーターゴーレムの体に戻って修復されるため、弾切れを起こすこともない。
ウォーターゴーレムはその見た目と反して、非常に厄介でまた攻撃力も高いモンスターなのだ。
「あり得ないわ…どんな攻略方法なのよ……
」
神木拓也の配信を普段から見ている西園寺は、神木拓也の戦い方が常識の範疇にないことを知っていた。
だが、それでも流石に今回のウォーターゴーレムの攻略方法に関しては、驚かざるを得なかった。
ウォーターゴーレムにはちゃんとした攻略方法があり、それは水が固体になるような化学物質をその体に付着させるか、あるいは火炎放射器などの火器で蒸発させてしまうことである。
ウォーターゴーレムは、そのままの状態だと無類の強さを発揮するが、しかしその体が水で構成されているため、性質を変えられてしまうと途端に脆くなる。
炎で蒸発させられて仕舞えば、再生は不可能だし、何かの化学物質で固体にされて仕舞えば再生能力も発揮できなくなる。
詰まるところウォーターゴーレムは、対策をすれば案外簡単に倒せるが、初見ではほとんど討伐が不可能なモンスターなのである。
それを、神木拓也は糸も容易く初見で攻略してみせた。
全方位から衝撃波パンチによる圧力を加え、常温で凝固させ、粉々に砕くというおよそ常人には思い付かないような方法で。
「ふ、ふふ…さすが、神木拓也ね……いつも私たちの想像を超えてくる男……」
西園寺は自分の声が震えていることを自覚していた。
あのクラスで隣の席にいる、ぼんやりとしたノーマルなジャパニーズの見た目の男と、今画面の中で信じられないような戦い方を見せている男の姿がどうしても重ならない。
どこにでもいる普通の学生の中に秘められた狂気。
西園寺はなんだか神木拓也という男の存在そのものを疑いたくなるような気分に駆られていた。
「すごいものを見せてもらったわ……けれど、こんなことで驚いていたら、今日の配信は持ちそうにないわね…」
まだ神木拓也の未攻略ダンジョン深層ソロ攻略は始まったばかりである。
西園寺はごくりと唾を飲み、せっかく用意した軽食を口に運ぶことも忘れて、神木拓也の配信に魅入るのだった。
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