第179話
“うおおおおおおおおおおおお”
“きたああああああああああああ”
”やあ“
”やあ“
”やあああああああああああああ“
”どりゃああああああああああああ“
”始まったぁあああああああああああ“
“待ってた^^”
“やあ”
”やあ^^“
”あにー?やってるー?^^“
”どりゃああああああああああああ“
”やああああああああああああああああ“
ダンジョンの中で俺が配信を始めるのと同時に、たくさんの視聴者が配信になだれ込んでくる。
現在俺はとある未攻略ダンジョンの中にいた。
片道90分の道のりを経て無事に目的地に辿り着き、そこに待機していたマスコミの記者たちの質問にぼちぼち答え、逃げるようにして現在今日踏破する予定の未攻略ダンジョンの中にいる。
「お待たせしてすみません。今から、未攻略ダンジョンソロ探索配信、始めたいと思います…」
この配信は予約枠を取っておいたのだが、マスコミの記者たちの質問責めにあい、時間通りに始められなかった。
視聴者たちは俺の配信が始まるのを今か今かと待っていたらしく、配信が始まって数秒で同接30万人に到達した。
”めっちゃ待ってた;;“
”たった30分伸びただけなのに一日ぐらいに感じた;;“
”大将待ってたよ;;“
”ついにこの日が来たか…“
”まーた俺たち伝説の生き証人になっちゃうよ^^“
”今日も伝説見せてくれえええええええ“
”こんなやばい放送が無料で見られるんだから、いくらでも待つよ“
“どうせマスコミのゴミどもだろ。気にしないでくれ大将”
”もう待ちきれねぇ早くモンスターと戦ってくれえええええええ“
”同接多すぎwもう三十万人超えてるやんけw“
”さあ、行こうか!!!“
”マジでこの一週間長かった…“
“すでに軽食とか用意して準備万端です”
“今日もやっちゃってください大将!”
俺が予約枠に遅刻してしまったことを詫びると、視聴者からはたくさんの応援のコメントが届いた。
どうせマスコミのせいだろうと察してくれている人もいる。
とにかく視聴者たちは、俺の今日のこの未攻略ダンジョンソロ探索配信が待ち遠しかったらしく、この一週間が長く感じたというコメントがたくさんあった。
俺は大勢の視聴者に期待されている雰囲気を肌で感じて、グッと拳を握って気合を入れる。
「それじゃあ、早速探索を始めていきたいと思います……深層に辿り着くまでは……巻きでいきますよ…!多少画面が揺れるかもしれませんがご了承ください!!」
視聴者が待ち望んでいるのは、当然深層での新たなモンスターと俺の対決だろう。
下層までの攻略配信は、余興のようなものだ。
深層に辿り着くまで、一気に駆け抜ける。
俺はいつもの片手剣を握りしめ、ダンジョン探索へと乗り出していった。
= = = = = = = = = =
「相変わらず凄まじいわね、神木拓也…」
西園寺グレース百合亜は、目を見張り、ごくりと唾を飲んだ。
目の前のパソコンの画面に映されているのは、神木拓也の未攻略ダンジョン深層ソロ攻略配信である。
現在神木は、深層までの道のりをモンスターを倒しながら突っ切っている状況で、かつてない速さで上層、中層、そして下層の階層を攻略していた。
「もはや羽虫のようなものね…彼にとって、下層までのモンスターなんて……」
配信が始まって30分。
神木拓也はたった一度たりとも足を止めずに、驚くべきスピードでダンジョンを攻略していた。
上層の雑魚を薙ぎ倒し、中層のモンスターを粉砕し、下層のモンスターを切り刻む。
群れに遭遇しようが、下層のモンスターが束になって現れようがお構いなしだ。
飛び交う斬撃、衝撃波が、神木拓也の行手に立ち塞がるモンスターたちを、最も簡単にあの世へと葬り去る。
もはやダンジョン攻略というよりも何かのゲームのRTAでも見せられているような気分だった。
もはや上層〜下層に出現するモンスターなど、神木拓也にとってわざわざ足を止めて対峙する価値すらない雑魚なのだということがよくわかる光景だった。
「すごいわね…もう深層に辿り着きそうよ…」
配信が始まって一時間、驚くべきスピードでモンスターたちを倒しながらダンジョンを進んでいった神木拓也は、もうダンジョンの深層目前にまで迫っていた。
このまま深層に辿りつけば余裕でワールドレコードなのではないだろうか。
そう思わせるような攻略スピードだった。
「すごいわね……まだ朝早い時間帯なのに……これだけの人が見ている…」
同接にチラリと目を写した西園寺は、そこに表示されている埒外の数字にごくりと唾を飲んだ。
同接120万人。
人口規模の違う北米や、英語圏、スペイン語圏の配信でもなかなか見ないようなとんでもない数字だ。
ここまで神木は、ほとんど綺麗な映像を映すことには気を使わず、とにかく攻略スピードだけを意識して配信をしているように思える。
おかげで画面はブレるし、映像もかなり悪いのだが、それでも信じられないほどの視聴者が訪れ、読みきれないほどのコメントが投下されていた。
SNSや、ニュースの記事欄を見ても、ネットは神
木拓也一色となっている。
日本国内における、神木拓也の人気はもはやカルト的であるとすら西園寺は感じた。
「さあ…見せてもらうわよ、神木拓也……今回の深層配信で……あなたの真価が試されるわ」
もうすぐ神木拓也が深層に辿り着く。
新たな強敵との邂逅。
未知なるモンスターとの戦い。
神木拓也が今日の深層ソロ攻略で何を見せてくれるのか、西園寺はワクワクしながら神木拓也が深層に辿り着くのを見守り続ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます