第163話
「ワンパーティー、撃破に成功しました」
ダンジョン配信の時の討伐報告よろしく、俺は一部隊、三人の敵を撃破したことを視聴者に報告する。
チャット欄は、まるで深層攻略配信で、新種の深層モンスターを倒した時のような勢いでコメントが流れていた。
“すげええええええええええええ”
“どりゃああああああああああああ”
“きたああああああああああああああ”
“よーーーーーーーーーーーし”
“よーーーーーーーし”
“よーーーーーーーーーーーーーーし”
“ないすぅうううううう”
“ないす”
“まじで強いw”
“普通に強い”
“キャラコンレベチ”
”覚醒してるw“
”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!“
”神木……お前ゲームでも無双するのか…?“
”こいつゲームでも無双すんのまじかよw w w“
”お前本当に初心者か…?“
”プレイ時間とキャラコンや立ち回りが全然見合ってないんだがw ww“
“誇張なしで5,000時間ぐらいプレイした人間の動きしてるぞお前w w w”
チャット欄には、あっという間にワンパーティーを壊滅させた俺に、驚くコメントが多数寄せられていた。
中には、本当にプレイ時間はそれだけか、ランクに見合ってない、キャラコンレベチ、他にアカウント持っててそっちでやりこんでないか、などと言った俺が初心者であることを疑うコメントも見られる。
どうやら俺のキャラコンを、練習によって習得したものと勘違いしているらしい。
俺はしっかりと、どのようにしてこれだけの少ないプレイ時間であのキャラコンを実現できているのかを説明する。
「その…キャラコンに関してなんですけど…サブ垢で練習してるとか…高ランクの本垢があるとかじゃなくてですね……その、あれです。ダンジョン配信普段見てくれてる人ならわかると思うんですけど…グッと集中して時間遅くするやつあるじゃないですか」
“あれかw”
“あー、なるほどねw”
“あるねw”
“草”
“時間遅くするやつで草”
“あのチートね”
“なるほどw”
“あれ使ったのかw”
“グッと集中するやつ、で伝わるの草”
“でたw”
”ゲームでも普段とやってること変わんないの本当に草“
”それゲームでも使えんのかよw“
「あれをやって、体感時間を遅くするんです……で、その間にコマンド入力を行うというか……こうしないとキャラコンできないんですよ……グッと集中すると時間が遅くなるので、敵の動きとか、次の予測が立てやすいんです。だから…グレネードもピンポイントで狙えるし、弾除けのキャラこんもやりやすくなる……要はそれで、長時間プレイヤーみたいなキャラコンを再現しているわけです…結構力技かもしれないですけど…」
”せっっっっこw“
“チートやん”
“ずっっっっっっる”
“くっっっさ”
”強すぎw“
”インチキすぎるw“
”そんなんズルですやん……“
”全プレイヤーが何千時間も練習して手に入れるキャラコンを、最初っから持ってるの狡すぎるw“
”お前それ高ランクプレイヤーの前で言うなよ。発狂するぞ“
”毎日二時間キャラコンの練習をしているワイ、発狂“
”時間が遅く感じるから、エイムもキャラこんも完璧になるのか……なんか普段必死にbot撃ちしたりランクマ潜ったりしてるのが馬鹿馬鹿しくなってきた…“
”っっぱfpsは神木と相性良かったなw“
“同じ理論で格ゲーとかも最強やんけw”
“ゲームでも無双すんのかよw w wもう本当にやりたい放題だなお前w”
“これ絶対にスマーフだと思って味方もビビってるやろ”
“絶対味方、「うわ、こいつ強すぎ!?」ってドン引きしてるぜ”
俺がキャラコンの種明かしをすると、視聴者から「ずるい」「せこい」「インチキだ」と言うコメントが多数飛んでくる。
半分冗談なんだろうが、中には「普段練習してるのが馬鹿馬鹿しくなってくる」「何千時間もプレイしてキャラコン手に入れたワイ、発狂」などと本気で落ち込んだりしている視聴者もいる。
でも俺としては、決してチートを使っているわけではないのでそんなことを言われても困る。
別段俺は、他にアカウントを持っているわけでも、本当は強いのにわざと低ランでプレイしているわけでもない。
ただ全力でプレイしているだけなのだ。
だから、非難される謂れはない。
まぁこれは半分ノリみたいなもので、今の俺のプレイを本当に卑怯だと思っている視聴者は本当にごく少数だろう。
「一応今のプレイ見てわかってもらったと思うんですけど……俺の攻め方はグレネードを多用するんですよ。グレネードって当たりにくいけど、当たると大ダメージじゃないですか。なので、集中して時間を遅くして敵の動きを予測して、確実にグレネードを当てて先制攻撃をする。それが俺のこのゲームにおける現時点でのスタイルなんです」
先ほどまで視聴者からは、グレネード持ちすぎ、もっと銃の弾とか回復アイテムを持ったほうがいい、というアドバイスが多数来ていた。
このゲームは、モテるアイテムの量が決まっていて、グレネードをたくさん持つと、その分回復アイテムや、銃の弾といったアイテムを持てる量が減るのだ。
なのでグレネードをたくさん持つという珍しいアイテム構成の俺が叩かれるのもある意味当然のことだった。
しかし俺には俺の考えがある。
グレネードをたくさん持つのは、確実に当てられる自信があるからだ。
グレネードは本来当たりにくい武器で、普通のプレイヤーならせいぜい所持数を2個か、3個程度に留めておくものだが、俺は見つけたグレネードはほぼ全部拾っている。
その理由は、グッと集中して時間を遅くすれば、ほとんど確実に敵にグレネードを当てることができてその後の銃での戦闘を有利に進めることが出来るからだ。
まさにダンジョン探索者の俺ならではのアイテム構成と戦い方なのだ。
”グレネード確実に当てられるのまじで狡すぎるw w w“
”こんなん許されてたら環境が破壊されるw w w“
“投げるグレが全部神グレなんだとしたらそりゃそれだけ持つわなw w w“
”理論値を平然と叩き出す男、神木拓也w“
”グレネード全部当てれば最強じゃね?とかいう初心者が考えそうなことを実際に実現してしまう男“
”おい神木。まじでお前がダンジョン配信者で良かったぞ。多分このままお前がグレネードで1ヶ月も無双し続ければ、確実に環境が変わってたぞw“
”というかこいつキャラコントいい、立ち回りといい、すでに競技レベルじゃね…?“
”おい神木。お前わんちゃんこのゲームのプロになれるぞ“
“今すぐにプロチームに入っても普通に戦力になりそうで草w”
“グレネード全部当てられるプレイヤーとか、そのほかが全部ダメでも普通に強いやろw w w”
チャット欄では、このままでは現環境が変わる、だの、今すぐにプロチームに入っても活躍できる、だのちょっと大袈裟なことも書かれている。
俺は倒した敵が落としたアイテムを漁り、グレネードを中心に補充する。
若干削れたアーマーもしっかりと回復アイテムを使って全快にしておく。
味方1:チートですか?
味方2:流石に強すぎません?
「ん…?」
敵の落としたアイテムを漁っていたら、味方からチャットが飛んできた。
チート?
流石に強すぎない?
とチャットが飛んでくる。
“草”
“チート疑われてて草”
“そりゃな”
”そりゃそうだわ“
“このランク帯の実力じゃないもんな”
“俺でもこんな化け物いたらチート疑うわ”
”当然の感想“
”チートじゃないんだよなぁw“
“ですよねー”
”俺でもこんな化け物に出会ったらチートだと勘違いするわ“
「いや、チートじゃないです…」
俺はチートだと思われて、通報されたり、トロールされたりしたらたまらないため、味方にちゃんとチートでないことを伝える。
自分:チートじゃないですよ
味方1:キャラコンうますぎません…?
味方2:グレネードオートエイムですか?全部当たってましたよね?
自分:グッと集中するやつです。体感時間を遅くしてグレネードを確実に当てたり、キャラコンをゆっくり入力することができるんです
味方1:いや意味わかんないんですけど…
味方2:時間を遅くする…?加速チートですか?
”草“
”w w w“
”わろたw w w“
”ある意味加速チートやろw“
”圧倒的説明不足w“
”まぁ普通に意味わかんないわなw“
”おい神木。一般人にはそれじゃ伝わらんぞ“
”視聴者にはそれで伝わるかもしれんけど、お前のこと知らん奴にはそれじゃ無理やろw“
”絶対に頭おかしい奴と思われてるやんw w w“
”えー、大将はゲームでも平常運転です、と“
”なんかこいついっつも似たようなやり取りしてるよな…“
まずい。
視聴者は俺のキャラコンの理由を理解してくれたけど、初対面の人にどう説明したらいいだろうか。
俺が頭を悩ませていると、二人はいよいよ俺のことが怪しいと思い始めたらしい。
味方1:まじでチーターじゃないですよね?
味方2:正直に白状してください。スマーフですか?チーターですか?明らかにこのランク帯の動きじゃなかったです。
自分:いや…まじでチーターじゃないです信じてください
味方1:プロですか?動画の企画とかですか?
味方2:もしチーターなら俺落ちますよ。チーターの仲間だと思われたくないんで。チーターにキャリーされてるって思われて垢BANされるの普通に嫌なんで
自分:本当にチーターじゃないです…体感時間を遅くしてるだけで…
味方1:何言ってんだこいつ
味方2:日本語でおけ
「まずい…どうしよう…」
このままだとこの二人にチーターと勘違いされ、通報されたり、放置されたりするかもしれない。
俺はなんとかチーターでないことを証明する方法を考えて……一番手っ取り早い方法を使うことにした。
自分:あの…実は自分配信者で、今配信中なんです
味方1:え…?
味方2:ま…?つーべですか?ついーち?
自分:つーべで配信してます…神木拓也のゲーム実況チャンネルってチャンネルなんですけど…
味方1:あ、その名前どっかで…
味方2:ちょっと調べてみますね…
味方二人は、俺のことを調べているのか、キャラクターの動きが止まる。
…やがて。
味方1:えっ!?!?同接30万人!?
味方2:これまじ!?本物!?めっちゃ人気配信者じゃん!!!うわ、すげぇ!!!俺のチャット画面に映ってる!!!!!
無事俺の配信に行き着いたのか、めちゃくちゃ驚いたようなチャットが届いたのだった。
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