第162話


“ファッ!?”

“うおおおおおおおおおお”

“すげええええええええええ”

“なんだ今の!?”

“グレネードドンピシャすぎるだろ!?”

“いやいやいやいやいや!?”

“きたあああああああああああああ”

“ワンピックはっっっっやw w w”

“えっっっっっっっぐ”

”一体何が…?“

”グレネードうますぎね…?“

”いやいや、神グレすぎるだろw w w“

”ノーダメでワンピックw w w“

”低ランとはいえこれはすごいなw w w“

”普通にすげぇええええええええ“

”ファーーーーーーw w w“



コメント欄が一気に沸き立つ。


グレネードで撹乱し、集中することで体感時間を遅らせ、屋上で待ち伏せしていた敵の一人をノーダメージの状態でダウンさせることが出来た。


視聴者たちが、まるでダンジョン配信で強いモンスターを倒した時のように興奮し、たくさんのコメントが流れる。


パパパパパパ!!!!


バァン!バァン!


「…ッ!!」


俺が倒した一人のプレイヤーは現在ダウン状態で起き上がれない。


このゲームでは銃に撃たれて体力がなくなりダウンしてしまうと、そのまま死んでしまうのではなく、しばらくダウン状態が維持される。


ダウン状態になったプレイヤーは味方に復帰させてもらうことが可能だ。


なので放っておくとまた復活し、倒した意味がなくなる。


なのでプレイヤーを一人倒したら、そのパーティーを壊滅させるまで一気に攻勢に出るのがこのゲームの定番だ。


そしてそれがわかっている味方が、俺がプレイヤー一人をダウン状態に追い込んだのを見るや、一気に屋上へと突っ込んできた。


パパパパ!!!!


バァン!バァン!バァン!!


当然、残された二人もこの間棒立ちしているわけではない。


いきなり屋上へと現れた俺に、味方を一人ダウンさせれた衝撃から回復し、こちらに向かって打ち返してくる。


マシンガンやショットガンの弾が、俺を蜂の巣にしようとこちらに迫ってくる。


「……ッ!!!」


俺はまたグッと集中した。


体感時間が一気に遅くなる。


現状俺は敵二人のターゲットとなっている状態だ。


この状態で打ち返したとしても、一人に打ち返している間に残りの一人に撃たれてダウンさせられてしまうだろう。


それならば、弾を避けて極力ダメージを減らしながら、ターゲットを取る……つまり囮になったほうがいい。


攻撃に関しては、俺がタゲを取っている間に、残りの二人がやってくれるだろう。


「こうしてこうして…それからこのコマンドで…」


俺はキーボード操作をして、キャラクターを器用に動かす。


上手いプレイヤーはキャラコンと言って、キャラ

をキーボードとマウスを使ってコントロールするのが非常に上手く、素人にはとてもできないような変態的な動きで球を回避したいりする。


あまり長時間このゲームをやりこんでいない俺に、そんなプロのような弾除けのキャラコンは不可能である。


しかし体感時間を遅らせ、こちらに飛んでくる球の弾道を見てからコマンドを打ち込み……限りなくプロのキャラコンを再現することは出来る。


さっきと同じ要領で、キャラクターの操作が追いつかないのを、現実の体感時間を遅らせることでカバーすればいいのだ。


俺はグッと集中し、ゆっくりとした時間の中で、こちらに飛んでくる弾を極力避けて、タゲを取り続ける。


パパパパパパ!!!


バァン!バァン!!!



“ファーーーーーw w w”

”すげえええええええええええ“

”キャラコンエッっっっぐw“

”プロですか!?“

”どうなってんの!?“

”めっちゃ避けてるw“

“キャラコンうますぎるだろ!?”

“マトリックスやんw w w”

“いやいやいやいやいや!?”

“このランク体の動きじゃないんだがw w w”

“キャラコンいくらなんでもうますぎるだろw w w”

”キーボード壊れるってw w w“

”入力はっやw w w“



パソコン画面の中で、俺の操作するキャラクターがジャンプし、身を翻し、空中で向きを変え、左右にステップを踏み、予測不可能な縦横無尽の動きを展開する。


敵二人は、俺の動きに完全に翻弄され、ろくにたまを当てることができない。


一応全く当たらないということではなく、俺の防具……アーマーは少しずつ削られてはいるのだが、それでも致命傷にはなり得ない。


特に俺は右にいるショットガンを持っている奴の弾だけは絶対に喰らわないように立ち回る。


ショットガンは、当てるのが難しい銃だが一発一発の威力がでかい。


なのでショットガンでヘッドショットを喰らうと、一発でアーマーが吹き飛んで丸裸にされてしまうことがある。


そういうわけで、俺は左のマシンガンよりもとにかく右のショットガンを喰らわないように、変則的な動きを展開する。


そのおかげで、ショットガンによる大ダメージを避け、左のマシンガンに若干アーマーを削られる程度にダメージを抑えることができた。


パパパパパ!!!!


バァン!バァン!バァン!!!


俺が敵二人の前でキャラコンでタゲを取りまくっている間に、屋上へとやってきた二人が、俺を撃っている二人の敵に狙いを定める。


彼らはすっかり俺に夢中になり、翻弄されているため、ベストタイミングで屋上へ乱入してきた俺の味方への反応が遅れた。


結局彼らは、横合いから、無防備な状態で俺の味方による集中砲火を喰らうことになる。


ババババババババババ!!!!!


銃声が鳴り響き、敵二人に銃弾が降り注ぐ。


敵のアーマーはみるまに削られていき、すぐに丸裸の状態になった。


二人はここへきてまずいと思ったのか、俺に銃を撃つのをやめて戦闘を放棄し、ダウン状態の仲間を見捨てて逃げ出した。


一度この場を離れて態勢を立て直すつもりなのだろう。


「逃がさねぇよ?」


だが、当然俺はそんな二人を逃すつもりはない。


二人は建物の中に逃げ込み、どんどん降っていく。


俺はというと二人の動きを予測して、屋上から一気に地面まで飛び降り、そこでグレネードを構えた状態で二人が建物の中から出てくるのを待った。


このゲームに落下ダメージはない。


俺は階段やジップを使って建物を降りる二人よりも先に、地上まで降りきって、扉の前で待ち伏せをする。


ガチャ!!!


「よお」


「「…!?」」


建物の中から追っていった味方に追い詰められるようにして、ドアから敵二人が丸裸の状態で出てきた。


扉を出てすぐのところに立っている俺を見て、明らかに動揺したように一瞬立ち尽くす。


そんな二人に、俺はトドメとなるグレネードを放った。


グレネードは呆気に取られている二人の間に落ちた。


ドガァアアアアアアン!!!!


グレネードが爆発した。


屋上の戦闘でアーマーを削られ、ほとんど丸裸の状態だった敵二人はあっけなく吹き飛び、そのままアイテムボックスに変化してこのマッチから退場した。



”うおおおおおおおおおおおお!!!“

”すげえええええええええええ“

”まじかよぉおおおおおおお!?!?“

”ほとんど一人で壊滅させたw w w“

“えっっっっっぐw”

“読みがすげええええええ”

“キャラコン。神グレ。先読み。何もかもが完璧じゃねーか!?”

“プロかな?w”

“現実だけじゃなくゲームの中でも無双するのかよw w w”

“マジでえぐいわw w w”

“お前スマーフか…?このランク体でお前みたいな動きしてるやつ見たことないぞ?”

“お前本当は別アカウントでめっちゃやり込んでただろw w w”

”神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!!!“

”ドヤ顔で指示してた奴らざまぁあああああああああああああああ“

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