第150話


“草”

”突破のしがいで草“

”謎を突破した(解いたと入ってない)“

”スフィンクス嬉しそうで草“

”大将最低“

“スフィンクスくんがせっかく考えた謎謎を破壊する大将鬼畜すぎるw”

“正直に告白して土下座しよう”

”めちゃくちゃ賢そうと思われてそうでわろたw w w“

“多分めっちゃ頭いいと勘違いされたやろなぁ…本当は力技で突破してきただけなのに”

”優しい嘘やね“

”神木反省しろ“

”大将;;流石の信者の俺でもこれは擁護できないよ;;“

“どうやってここまできたのかちゃんと正直に話そう。で、怒ったら神拳で黙らせよう^^”

”ここまできた方法全部配信で確認させてキレさせてから、神拳で殺すべ^^“

”大将ー?なんかそいつ頭が高いからさっさと神斬で切り刻んでわからせません?“



なんとかうまく誤魔化すことが出来た。


スフィンクスに謎を解いていないことはまだバレていない。


俺はほっと胸を撫で下ろすと同時に、チラリとコメント欄を見た。



(ごもっごもな意見に混じって随分と鬼畜な視聴者がいるな……)



視聴者の大半が、頑張って考えた謎を俺に理不尽に破壊されたスフィンクスに同情しているのだが、一部に、スフィンクスに正直にどうやってここまできたのか白状して怒らせてから、物理で倒そう、などといった過激派のコメントがある。


なんだろう。


ナチュラルサイコパスにも程がある。


彼らの私生活が心配になってくる。


『おい…貴様なんだそれは…』


俺がコメント欄をチラチラしていると、スフィンクスが怪しむように俺の顔を覗き込んできた。


「ななな、なんでもありませんよ!?」


俺は慌ててチャット欄を表示するための機材を隠す。


『貴様がつけているそれは…一体なんだ?』


スフィンクスが、俺が身につけている配信機材を興味津々と言ったように眺める。


「こ、これはその……なんというか…謎を解くための道具といいますか…」


俺は慌ててそう言って誤魔化した。


配信していることが知られたら、なんだか怒られそうだと思ったからだ。


なんだか頭の良さそうなこのモンスターなら、配信の概念も簡単に理解してきそうな雰囲気ではある。


『まさか…武器か…?』


スフィンクスがゴロゴロと唸り声を上げながら聞いてくる。


「ぶぶぶ、武器じゃないですよ?お、俺の武器はこれだけです」


俺は自分の片手剣をスフィンクスに見せる。


スフィンクスがその口元をニヤリと歪めた。



『ふん…まぁなんでもいい。仮に武器だとしても……ここではなんの役にもたたん。人間風情が、この私にどんな武器を使おうと勝てはしないのだからな…』



「はぁ」



スフィンクスはどうやら完全に俺のことを舐めきっているようだった。


多分ここがミステリーダンジョンだから、俺のことが武闘派ではなく頭脳派に見えているのだろう。


本当は真逆なんだけど。


でもそれをいうと、どうやって謎を解いたんだということになるから、言わないけれども。



『さて……本題に移るとしようか』



俺がそんなことを考えながら、感情を表に出すまいとしていると、スフィンクスが姿勢を正してはるか高みから俺を睥睨する。


ミステリーダンジョンのボス部屋の空間はかなりの広さなのだが、スフィンクスの頭部は、体を伸

ばした状態だと、天井スレスレの部分まで届く。


サイズ感的にはドラゴン以上か。


とにかくかなりの大きさだ。



戦闘力やパワーもそれなりにあるだろう。


『改めて……私はこのミステリーダンジョンの番人だ。それは見ればわかると思う。ここはミステリーダンジョン第四層ボス部屋。今まで誰も踏み入ったことのない前人未到の地だ』


「はぁ」


はるか高みのスフィンクスを見上げながら俺は頷いた。



『まずは敬意を表しよう、賢きものよ。よくぞ数多の謎を乗り越えてここまで辿り着いた。正直驚いたぞ。まさかたった一人で私の謎を解く人間が現れるとはな』



「…あ、ありがとうございます」



『なぜ目を逸らす?体が震えているぞ?まさか恐れているのか?』



「い、いや…そういうわけでは…」


『ククク……私を前にした人間が恐怖するのはそれは仕方のないことだ。どんな生物も、力では絶対に叶わない上位存在を前にしたら恐怖するものよ』



「…あー、うん。はい」



もうそういうことにしよう。


嘘がバレるよりマシだ。



“なんか勘違いしてら^^”

“めっちゃ勘違いされてるやん^^”

“びびって震えてると思われてるぞ大将”

”違うぞスフィンクス。そいつ嘘がバレるのが怖くてキョドッてるだけやぞ“

”こいつだいぶ驕り高ぶってるやつか“

”これはわからせがいのありそうなモンスターきたねぇ^^“

”なんか語ってら^^“

“神木雑魚だと思われてるやんw”

“まぁ神木ってまじで初見では平凡な高校生だからな。中身とのギャップは実際にすごい“

“うーんwなんかこの後の展開がもうおおよそ読めたというか……w”

”スフィンクス今のうちに思う存分にイキっとけ“



『しかしお前は私の考えた謎を解いたのだ。少なくとも、知能という点に関しては、私はお前を認めているのだから、もっと堂々としているがいい』



「そ、そうっすね……」



『ククク……安心しろ。別にすぐにお前をとって食い殺したりはしない。私はそんじょそこらの,低知能のモンスターどもとは違うのだ。人間と見るや何も考えずに襲いかかったりなどしない……お前には、一つの謎に挑戦してもらう』



「謎…?」



『ああ。そうだ。このボス部屋から出る条件が、私が今から出す問題を解くことだ。もし解くことが出来たのなら……お前をここから出してやろう。それで、このダンジョンは踏破されたことになる』



「な、なるほど…」




このモンスターのスフィンクスのような見た目からなんとなく予想はしていたがやはりこうなった

か。


ミステリーダンジョン最下層、ボス部屋。


そこにボスモンスターがいたからといって、突然肉弾戦が始まる……ということではないらしい。


ミステリーダンジョンは最後まで知恵を試してくるダンジョンのようだ。


クリア条件は……ボスモンスター、スフィンクスが出す謎に正解すること。


そうすれば、戦わずにここから出ることができる。



(でもそれって踏破って言えるのか…?ボスモンスターと倒していないのに…?まぁ、でもボスモンスター自身がそう言ってるんだし、いいのか)


一瞬、ボスモンスターを倒さずにクリアなんてあるのかと思ったが、深くは考えないことにした。



”きたぁあああああああああああ“

”やっぱそうだよなあああああああ“

”うおおおおおおおお謎解ききたああああああああああああ“

”まぁそうくるよね“

”見た目が見た目だもんなぁ“

“マジで神話とおんなじような展開になるんだな”

“ミステリーダンジョンだもんなぁ。いきなりバトル!って感じでもないのか”

“まぁ謎に挑戦して無理だったら殺そう”

”謎解きとかだるいからさっさと殺すべ^^“

”謎解きだるくね?wもういいよ戦おうぜw“

”どーせ解けないんだからさっさと戦おうw“



こっそりチャット欄を覗いてみると、案の定視聴者は盛り上がっていた。


ミステリーダンジョン攻略配信も最終盤に差し掛かり、同接も150万人を突破している。


一部に謎解きはいいから、さっさと殺そうとかいうサイコパス視聴者たちがいるが、俺はあくまでも謎解きに挑戦してみるつもりだった。


ここで謎をきっちりと解いて今までの汚名を返上したい!!!



『準備はいいか…?』



「あの…一つ質問が…」



『なんだ…?』



いよいよ謎を出そうとしているスフィンクスに俺は大事なことを尋ねた。



「もし謎が解けなかったらどうなるんですか?」


『謎が解けなかったら…?ククク…そんなの決まっているだろう』


スフィンクスが性格の悪そうな笑みを浮かべながら言った。


『私はお前を殺す。確実に、な』





〜あとがき〜


ミステリーダンジョン攻略編も終盤です。


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