第132話
”この間のテレビ出演のギャラはいくらだったのー?“
”芸能人とかと会った…?“
”そろそろ人気女優との交際スクープありますか?“
“生放送直後のお前のフォロワーの伸びマジでえぐかったぞ”
“これからもテレビ頻繁に出るのー?”
”大将まさかこのままテレビの人になっちゃわないよね…?;;“
”神木がネットであんまり活動しなくなったら俺悲しいよ;;“
”これからはテレビ主体で活動とかないですよね?“
雑談配信はまだまだ続いている。
ちょっと波紋を呼びかけたテレビから来てくれた新規の視聴者の話題も過ぎていき、チャット欄の話題は俺の今後の活動の話に移っていった。
視聴者はどうやら俺がこのままテレビ主体の芸能人的な活動者にならないかどうか心配のようだった。
確かにここ最近立て続けに二度もテレビに出演したから勘違いされたかもしれないが、俺はあくまでネット活動主体の配信者。
テレビに出たのはネット上の自分の活動を多くの人に広めたかったからに過ぎない。
そのことを視聴者の前で今一度宣言しておく。
「最近二度もテレビに出させてもらっておいてあれですけど、俺はこれからもあくまで活動の主体はネットにするつもりです。テレビに出たのは、俺のダンジョン配信を広めるためです。そこは安心して下さい」
”よかったぁあああああ…“
”それが聞けて安心^^“
”大将;;“
”さすが神木や“
“神木拓也最強!”
“本当だな…?お前は俺たちを裏切ったりしないよな…?”
“つーべ活動者がテレビとかに出始めると途端にネット民見下し始めるからな……神木がそうならないことを願ってる”
”神木にまで裏切られたら俺泣いちゃう…“
”神木は俺たちを踏み台にするようなやつじゃないって信じてた“
“いつまでもここで神木拓也最強!って言ってたい…”
“お前ら疑心暗鬼になり過ぎやろw確かに最近ネットを踏み台にする連中も増えたけどさ”
俺の宣言に、チャット欄には「安心した」
「よかった」と言ったコメントがたくさん書かれる。
最近インターネット活動者から、テレビに出るようになり、芸能人の仲間入りをするという人もちらほらと出てきた。
自分たちが応援してきた活動者がテレビに出るようになり世間で大活躍するのを見るのは嬉しいというファンもいる一方で、中には踏み台にされた、と思ってしまうネット民もいるようだ。
だから俺の視聴者の中にも、俺が何はネットでのダンジョン配信をやめてテレビ主体の活動者になっていくんじゃないかと心配してしまった人たちがいるようだ。
だがそもそも容姿もそこまで淡麗でなく、ダンジョン探索ぐらいしか能がない俺がテレビ主体の活動者になれるはずもなく、またそのつもりもない。
俺の目的はあくまでネットでより多くの人に自分のダンジョン配信を見てもらうこと。
その初心は変わっていない。
そのことを改めてここで宣言したことは、視聴者の反応を見るに、やはり意味があったのだろう。
「そもそも俺にはトーク力も見た目の魅力も大してないので、芸能人みたいになるのは無理ですけどね……とりあえず当面は自分にできる全力のダンジョン配信をやっていきたいと思ってます」
“いやいや、ご謙遜を”
“神木トーク力も容姿もそれなりにあるぞw”
“初めてテレビに出た時のメイクしたお前、普通にかっこよかったぞw”
“いや、普通にお前には才能があるからこそ心配なんだよ”
“まぁテレビとかもはやオワコンだしな。その選択は正しいと思うぞw”
“こんだけ大物になっても謙虚な神木大好き”
“神木。お前はそれでいい”
“インターネットヒーロー”
“ここにもまたインターネットヒーローの意思を引き継ぎし者が一人…”
“神木。お前がインターネットヒーローになれ”
「い、インターネットヒーローになれるかは分からないですけど……とりあえず日本のネットの頂点は目指したいですけどね」
よく分からないインターネットヒーローという言葉がチャット欄で使われ出した。
「お前がインターネットヒーローだ」「神木、お前はインターネットヒーローになる男だ」というコメントが散見される。
よく分からないが、悪い意味ではなさそうだ。
お前がインターネットをもっと盛り上げてい
け、という意味だろうか。
後で調べておこう。
¥50,000
大将のMADがめっちゃ再生されてるぞ。もうみた?お願い筋肉のやつ。
「スパチャありがとうございます……え、MAD動画ですか?見たいです。どれですか?」
そんな話をしていたら視聴者から俺を題材にしたMAD動画が制作されているという報告が届いた。
“あー、あれかw”
“見たみた”
“もう一千万回再生されてるぞw”
“あれいいよな”
”あれ好き“
”見ようぜ“
”めっちゃクオリティ高いぞ“
”流行りのアニソン×神木のやつな“
”あれすこ“
”見よう“
”見ようぜ“
”毎日聴いてるわw“
チャット欄に「見た」「あれ好き」と言ったコメントが流れる。
どうやら視聴者の間ではかなり有名になっているようだ。
再生数もそれなりに回っているらしい。
そこまでいうなら見ておこうか。
純粋に自分を素材にしたMAD動画は嬉しいものだしな。
「えーっと…なんて検索したら出てきます?」
俺はブラウザの検索窓から、その噂のMADとやらを検索しようとする。
”『お願い神木』で出る“
”『お願い神木』“
“『お願い神木めっちゃ最強〜』”
“『お願い筋肉 神木』で出るぞ”
“『神木筋肉』でも出るぞ”
“『お願い神木』やね”
「お願い、神木、でいいんですか?」
俺は検索窓にカーソルを持ってきてクリックし、それからお願い神木と打ち込んだ。
「あ、すぐに出てきた…」
相当検索されたのか、サジェストにすぐにお願い神木と出てきた。
クリックすると、1200万回再生された、お願い神木めっちゃ最強!というタイトルの動画が出てきた。
どうやらニッコニコ動画で投稿されたものらしい。
「これでいいですか?」
“それ”
”それや“
“きたあああああああああ”
”それそれ“
“それやね”
“それだ”
”それだわ“
”きちゃ“
”うおおおおおおおおおお“
”どりゃああああああああああああ“
”はやくっはやくっ“
「それじゃあ、再生します……」
俺はそのニッコニコ動画に投稿された俺のMAD動画を見る。
🎵お願い神木!めっちゃ最強〜🎵
最強!!!!
🎵お願い神木!めっちゃ最強イェイ!🎵
「なんだこれ…というか画面が見えねぇ…」
どうやら投稿されたマッド動画は、最近流行りのアニメのオープンング主題歌に、俺の配信の名場面を当てはめて作られた動画のようだった。
見てみると再生数もさることながら、とんでもないコメント量である。
画面がほぼほぼコメント欄で埋まって見えない。
かろうじて読めるのは、おそらく職人が作ったと思われる画面いっぱいの巨大な赤文字ぐらいである。
”うぉおおおおおおおおおお“
”きたあああああああああ“
”生き甲斐“
“コメントすっご”
“ごっちうさのオープニングかな?w”
“この量の弾幕久々に見たな”
“まだニッコニコ動画でこの量の弾幕出せるんだな”
”すげーーーーw w w“
”えっっっっっぐ“
”見えねぇ…w“
「す、すごいですね…」
全く知らない文化に触れて、俺は圧倒される。
ニッコニコ動画は、つーべやついーちと違って、コメントが画面にそのまま流れるのだ。
そのため、あまりにもコメントの量が多いと、コメントに画面が覆われて見えないということが起こるのだ。
まさか自分のMAD動画がそんなことになるなんて思っても見なかった。
「つ、作ってくれた人ありがとうございます…何も見えなかったけど…」
“草”
”コメントオフにしろ“
“次はコメントオフでみよう”
“コメントオフにできるぞ”
“コメントオフにしようぜ”
“コメありだと何も見えねぇよw”
“コメントオフにしろ情弱”
“コメントオフにしたら見えるぞ”
「あ、コメントオフとかできるんだ…」
どうやらコメントオフにする機能があるらしい。
俺はコメントをオフにして、今度はしっかりと画面が見える状態でもう一度マッド動画を視聴者と楽しんだのだった。
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