第114話


“うおおおおおおおおおおおおお”

“きたああああああああああああああ”

“どりゃああああああああああ”

“すげえええええええええええええ”

“勝ったあああああああああああ”

“おんどりゃああああああああああああ”

“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”

“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!”



チャットにダンジョンクリアを祝う視聴者のコメントが溢れる。


同接は現在230万人。


結果的に前回の深層配信の記録を大きく塗り替えることに成功した。



¥50,000

大将まじでおめでとう!!

ご祝儀受け取って!!!


¥30,000

神木拓也最強!!一生ついていきます!!


¥40,000

今回も面白いもの見せてもらった。

地上に帰ったらこれで美味しいものでも食べてくれ


¥10,000

っぱお前が最強なんやなって再確認したわ


¥5,000

民間が攻略したことのないダンジョン一人でクリアするのマジでやばすぎ。

普段スパチャとかしないけど思わず投げちまった。

おめでとう神木



「スパチャありがとうございます」


ダンジョンをクリアしたことで、視聴者からスパチャのご祝儀が大量に送られてくる。


チャット欄が、スパチャで色とりどりに染まっていた。


俺にしか見えない配信アナリティクス画面が開いているのだが、累計スパチャ額が恐ろしい勢いで増えていく。


「よかったらみなさん、この期にチャンネル登録お願いします。知らない方に自己紹介すると、自分は神木拓也と言ってダンジョン配信者をやっています。現役高校生です。平日は主に下層、そして土日は深層を攻略する配信をしています」



前回配信動揺、今回もこのダンジョンをクリアした直後が同接のピークになるはずだ。


どうやらこの配信はすでに切り抜きやらクリップやらで拡散されまくっているらしく、新規視聴者もたくさん入ってきていることだろう。


チャンネル登録を勧める絶好の機会だ。


「ありがとうございます…チャンネル登録嬉しいです」


チャンネルの宣伝をすると、一気に登録者が増え始める。


配信を始める前と比べて、すでに三十万人ほ

ど、チャンネル登録者数は上昇している。


これだけでもこの配信の価値があるというものだ。



「よろしければ登録に合わせて通知オンもお願いします」



通知をオンにしてもらえれば、俺が配信を始めたときに端末にバナーが出るようになる。


今日登録してくれた視聴者たちが、次回からより俺の配信に来やすくなるように俺はチャンネル登録に合わせて通知もオンの設定にしてもらえるようにお願いした。



“チャンネル登録者の伸びえぐいw w w”

“トレンド神木拓也関連で埋まってるわw w w”

“まーた俺たち伝説の生き証人になっちゃった^^”

“スパチャ飛びすぎw w w画面真っ赤やんw w w”

“今日の配信でさらに神木ファン増えるやろなぁ”

“俺こいつが桐谷助けてバズった時から見てるんだけどそろそろ古参として幅効かせてもいいかな?”

”帰るまでが遠足。神木、気をつけて地上に帰るやで“



視聴者は未だ興奮冷めやらぬと言った感じで、チャット欄にはスパチャとクリアを賞賛するコメントが流れまくっている。


「スパチャでの応援本当にありがとうございます。武器代とか機材代に使わせてもらいます……高額スパチャしてくれた方には後でお礼も言おうと思ってます。というわけで今はとりあえず地上を目指します」



この場で小休憩して視聴者のスパチャを読みながら余韻に浸りたいところだが、時間が押している。


俺は名残惜しくもボス部屋を退散して、地上へ向けてきた道を引き返していくのだった。


= = = = = = = = = = 



「はぁ、はぁ…勝った…俺たち勝ったぞ…」


「帰れる…これで生きて帰れる…」


「何人生き残った…?何人死んだ?」


ボス部屋で、政府が派遣した特殊部隊隊員たちが地面にへたり込んで息を荒げている。


死屍累々といったボス部屋の中で、彼らはまだ生きている喜びを噛み締め、そして死んでいった仲間のために涙していた。


前回の敗走から一年後。


部隊は3倍以上の規模に増強され、再度深層ダンジョンの攻略へと挑んでいた。


前回の探索で得た情報があるため、ボス部屋までは比較的楽に辿り着けたのだが、果たしてボス部屋で彼らを待っていたのは、今まで彼らを苦しめてきた深層モンスターの無数の群れと、蘇生能力を持つ新たな深層モンスターとの死闘だった。


レイス。


リザードマン。


キングスライム。


キョンシー。


デュラハン。


ハーピー。


不死竜。


それらの深層モンスターの群れを、彼らは少なくない被害を出しながらなんとか壊滅させた。


だが一番奥に控えていた新種の深層モンスターの杖が怪しげに光ったと思ったら、今まで倒したモンスターが全て、何事もなかったかのように復活したのだ。


「冗談だろ!?」


「ふざけんな!」 


「そんなのありかよ!」


少なくない仲間の犠牲のもとになんか倒し切ったモンスターたちが、一瞬にして復活してしまった事実に部隊は絶命する。


それから彼らは、深層モンスターたちと死闘、混戦を繰り広げ、最終的にリッチと名付けられることになる深層モンスターの杖を狙撃で破壊、蘇生能力を封じてなんとかボス部屋を攻略する。


その間に、三百人余りいた部隊は180名というところまで減ってしまった。


半分に届こうかという数の犠牲が出てしまったのである。


「うぅうう……うぅうう」


「ちくしょう…」


「帰りたい…地上に…こんな地獄はもうたくさんだ…」


たくさんの隊員たちが仲間を失った悲しみに呻き声をあげる中、誰かがポツリと呟いた。


「はっ……これは必要なことだったんだ…俺たちの犠牲は無駄じゃないんだ…こんな地獄みたいなダンジョン…民間に踏破できるはずないんだから…」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る