第13話 トキハルとミフユ!

「言葉とは裏腹に自信満々って感じの表情ね」


 乗崎じょうさき 麗夏れいかにそう言われた時、俺は彼女の人を見る目の鋭さに少し身震いする思いだった。


 俺はもう彼女に何を言っても無駄だと悟り、ずっと黙っていた古堂こどう美冬みふゆにこう話し掛けた。


「ねぇ、俺がもしやられちゃったら、無理やり引っ張ってでも乗崎さんと一緒に逃げてくれないかな?」

 

 すると、古堂 美冬がパールベージュのショートボブの髪を掻き上げてから、こう言ったのである。


「それより先にやることあんじゃね?」


「えっ?」


がちゃんとあーしのことって呼べたら言うこときいてやってもいいけど」


 高校では氷の女王の異名を持つ、全国区のギャルモに対してそんなこと普通だったら俺にできるはずがないのだが、もうすぐそこまで、ずぶ濡れの漆黒のオークが迫っていたので、俺は覚悟を決めてこう言ったのだ。


「・・・・・・、俺がもしもの時は乗崎さんを連れて逃げてくれる?」


 そしたら、今度は、


「オッケ! わかった! あーしに任しときな、トキハル! そのかし(おそらくそのかわりの意)カッコいいとこあーしに見せてくれんじゃんね?」


 と、古堂 美冬は言ってくれた。


 なんか気恥ずかしかったけど、俺は、


「とにかく頑張ってみるよ!」


 と返したのだが、そんな今思い出しても赤面してしまうようなやり取りが終わると、今度はもう一人の女子、秋野あきの阿香里あかりが口を開いた。


「なによーっ! 二人で勝手にいい感じになっちゃってー! 阿香里の存在すっかり忘れてなーい? このパーティーにはぼっち君しか男子はいないだから女子は平等に扱いなさいよー!」


 なんというか、こんな危機的な状況でも、女の子たちはたくましいというか、なんというか、とにかく俺は少し呆れてこう返しておいた。


「秋野さんも俺がもしもの時はみんなと一緒に逃げてね」

  

 それに対して、秋野 阿香里が不満そうな膨れっ面をしながらも頷いてくれたので、俺は心置きなく、そのずぶ濡れの漆黒のオークへと向き直った。


  

         ⚫

 


「なんだよ! イチャつきやがって!これが生配信されてるのも知らずに呑気なもんだぜ! それより、お前、おれはお前らのパーティーに賭けたんだからな! しっかり頼むぜ! 口だけだったら絶対許さねえから! その化け物をしっかり始末してくれよ! ここで全滅されたらおれが困るんだからな!」



         ⚫



 まず、俺は【連続攻撃(4回)】の最初の2回で、どの魔物も嫌がるだろう心臓と首を狙った。


 ――リトルサンダーウルフ!


 そう2度素早く唱えて、Fランクの俺が使える雷属性魔術の中で最弱のリトルサンダーウルフを2発放つ。

 すると、俺の右の手のひらから連続で放たれた猛スピードでずぶ濡れのディープスコールオークに向かって宙を駆けていく黄色い蛍光色で半透明の狼2匹を見た女子たち(古堂 美冬と秋野 阿香里)から予想外の歓声が起こった。


 彼女たちは魔術というものを初めての見たのだから、まあ、素直なリアクションだと思うのだが、乗崎 麗夏はといえば、別段表情も変えずに俺のことをじっと見ていた。

 

 そして、肝心のディープスコールオークは、俺の放ったリトルサンダーウルフに思った通り反応した。


 俺の攻撃が届く前に、水属性の防御系魔術、アクアシールドで首と心臓を守ったのである(もともとこのゲーム世界ではオークは総じて臆病な性格で、魔術がそれほど得意でないうえに、巨体過ぎて全身をアクアシールドで防御できないからそうやって部分防御をするしかないのだ)。


 それを見て俺は勝利を確信した。


 これでもう、左右のが、がら空きだったからだ。



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第13話も最後までお読みくださりありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、最終話の後に☆☆☆評価をしていただけるとうれしいです!

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