第3話 乗崎 麗夏(ハイスペご令嬢)②

 乗崎じょうさき麗夏れいかに3バカトリオ呼ばわりされた安斎あんざい遼也りょうやは、意外にも彼女を無視して俺の方に薄気味悪い笑みを向けながらご機嫌を取るような声音でこう言った。


「ぼっち野郎なんて言ってごめんな。・・・・・・時岡ときおか・・・・・・尚春なおはる君。なあ、そんな高飛車たかびしゃな女は放っておいてさ、オレ達のパーティーに入らないか? 悪いようにはしないからさ! 同じ男同士仲良くやろうぜ!」


 一瞬どういう風の吹き回しかと思ってあやうく混乱しかけたのだが、なんのことはない、こいつは乗崎 麗夏から俺を奪いたいだけなのだとすぐに気がついた。

 だが、それでもぼっちで根っからの陰キャモブ男子の俺はなかなか1軍男子である遼也の誘いを断る勇気が出なかったのである。

 こんなやつこの世界ではその気になればいつでも秒殺できるのに、それでも長年の習慣で1軍男子にビビってしまう自分が本当に情けなかった。

 それでも俺はかなり長い逡巡しゅんじゅんの後で、なけなしの勇気を振り絞ってこう言ったのだ。


「・・・・・・ごめん、悪いけど、君らのパーティーには入らない。君らのノリについていけそうにないし。・・・・・・だからは最初に選んでくれた乗崎さんのパーティーに入ることにするよ」


 俺がそう言い終えると、遼也は怒りで顔を真っ赤にしてこう言った。


「あっ? よく聞こえなかったなあ。もう一度言ってみろよっ! オラッ!」


 俺は少し震えた声でもう一度こう繰り返した。


「・・・・・・は君らのパーティーには入らない」


 すると、少し冷静になってきたらしい遼也は別の角度から俺のことを攻撃してきた。


「あれー? 今って言った、お前? ぼっちのお前の一人称はだろうが! ・・・・・・いや、違うな! オレに生意気な口を利いた罰としてお前の一人称はこれから一生なっ! ほらっ! 言ってみろ! は・・・・・・遼也に一生逆らいません! すいませんでしたって、ほらっ! 早く言えよ! オラッ!」

 

 そんなことを遼也に言われている間、俺はずっと乗崎 麗夏の視線を感じていた。

 だから、俺は勇気を振り絞ってこう言うことができたのかもしれない。


「・・・・・・嫌だ! ・・・・・・そんなことは絶対に言わない! ・・・・・・それに、君らのパーティーにも絶対に入らない!」


 すると、遼也はさっきよりも顔をさらに真っ赤にしてこう言ったのだ。


「ああっ? ・・・・・・ぼっち野郎がいい気になってんじゃねぇぞっ! こっちはてめぇなんてはなから仲間にする気なんてねーんだよ! オレ達を選ばせといて、それで一人じゃ絶対死にそうなヤバい場所まで連れてってパーティー追放してやろうと思ってたんだよ! ・・・・・・おい! さっき喋ってたおっさん! 聞こえてんだろ? この世界で死んだらどうなるんだ? 教えてくれよ!」


 すると、すぐに天の声がこう答えた。


「この世界に召喚された時点で君たちはもうこの世界の住人なのだ! よってこの世界で命を失えば、それは正真正銘の死で・・・・・・であるから、もちろん元の世界に戻ることもできようはずがない! ・・・・・・では、勇者候補生たちよ、健闘を祈る!」


 それはある意味では遼也本人にとっても知りたくない真実であったはずなのに、遼也は満足そうに頷いてこう言った。


「聞いたか? この世界で死んじゃったら元の世界には戻れないんだってよ! 麗夏! 本当にいいのか? 自分の命をそんなぼっち野郎にたくしちゃって。・・・・・・土下座でもするってなら、今からでもオレ達のパーティーに入れてやらないこともないんだぜ!」


 俺はさすがに心配になって乗崎 麗夏の方を見た。

 だが、乗崎麗夏は少しも動揺していないいつも通りの自信満々の表情で俺の方に一瞬目線を送ってから、遼也の方に向き直りこう言い放ったのだ。


「ああ、もう、しつこい男ってほんとに嫌。私はこのぼっち君とパーティーを組むってさっきはっきりと言ったわよね? それって命を預け合うってことに決まってるでしょ? 女の覚悟をナメてもらっちゃ困るんだけど。・・・・・・あと、なんだか知らないけど、私の本能があんた達よりこのぼっち君を選べって言ってるんだよね、さっきからうるさいくらい! 私、自慢じゃないけどそういう選択を今まで一度も外したことないの。だから、早く私のことを諦めてくれないかしら?  脳みそまで筋肉の3バカトリオのリーダーさん!」



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第3話も最後までお読みくださりありがとうございます!


もしちょっとでも「なんかおもしろそう!」「これは期待できるかも!」と思っていただけましたら、最新話の後に☆☆☆評価をしていただけるとめちゃくちゃうれしいです!

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