7話 ルナ、ソフィア視点

「……え?」

「あ、ソ、ソフィア……ソフィアっ」 

「ど、どうしよう。どうしたら…あ、ああ」

 熱い涙が頬をつたる。

「ね、姉さ……フラン。助けてっ」

 もういつも助けてくれていた姉さんと妹のフランはもういないの、に。

『サン…いや、ルナ。私たちは見ている、だから大丈夫』

 姉さん…?そうだった、僕の本当の名前はサンだった。

『兄さんは頼りないからフランが守ってあげるの…えへへ』

 それと、フラン…?っ!まって…行かないで。もう、おいていかないで。…………あ。「ゆ、め……?」


夢を見た。……とても痛くて、苦しくて、怖い夢。誰かが私に言うの……?

『うらやましい?ねぇ、エルがうらやましいでしょう…ええ、きっとそう』

『心のどこかで思ってる』

 そう告げるのは2人の少女だ。どことなくルナに似ている気がする…?

 違う、そんなこと…思ってない。言い返したいのに口が開かない。声が出ない?

 ここはどこなのか、何が起こっているのか、自分が立っているのか座っているのかすらわからなかった。苦しい。

『あっれれぇ?苦しいのぉ……?』

『ここは、あなたの感情の中なのに?』

 ヒッ。こ、怖い……

 この子、さっきまで私をからかっていたのに、急に冷たくなったわ…それに、感情……

『こんなのにも耐えられないなら……兄さんの前から消えてよ…ねぇ、消えて』

 兄さん?誰のことよ…。

『フラン…それくらいにしておきなさい』

 あ……もう一人の。た、助けてくれた…?

『フラン、大好きなお兄ちゃんに嫌われてもいいの?こんな人間、放っておきましょ』

 そう言うと女の人はニヤリ、と笑った。

『行きましょ』

 まって、おいていかないで。嫌だ、嫌だ。ひとりは………

 その瞬間、ふわりとなにかに包まれた、気がした。……ル、ナ?

 なんだか、すごく落ち着くな…安心した、ら…急にねむ、く。


「んむぅ。いや、だ」

「び、びっくりした。起きたかと…」

 ソフィアは今、僕の膝の上で休んでいる。ううん、さっきまでうなされていたけれど…大丈夫かなぁ。

 そう思いながら僕は、昔フランにしていたようにソフィアの頭を撫でた。ほぼ無意識だったが嫌ではないだろうか。

 そう思ったのとほぼ同時、ソフィアが何故か嬉しそうに……

「えへへ」

 と笑った。

「かわいいなあ。うん、やっぱりソフィアはかわいいよ」

 ソフィアはかわいい。だから、だからこそ僕なんかといてはだめなんだと思ってしまうのだ。それでいつも突き放して、逆に彼女を傷つけてしまっている。

「はぁ、僕はどうしたらいいんだろう」

「好きだよ。ソフィア」

 僕は膝の上で寝ているソフィアに告げる。本当に…狂おしいほどにいとおしい。こんな感情、知らない、知らない…なんだろう?

「ふわぁ。あれ…」

 ん…?

「い、いたっ」

 ソフィアはそう言って手当て済みの頭を押さえた。

「…ふえ?あ、あわわわわっ、い、いやーーー」  

 ソフィアは今の状況に気がついたのか、あわてて飛び起きた。ソフィアの顔色は真っ青だ、やっぱり…いや、だったかな。少し……いや、かなり辛い。

「き、きき…今日はもう。さ、さよならっ」

 ああ、行ってしまった。

「はあ、彼女はもう…ここに来ることはないだろう」

 僕は一人、部屋でそんなことを思うのだった……。

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