第132話 深層の魔物

深層に進めば進むほど、環境だけでなく、もちろん出現する魔物の危険度も高くなっていく。


例えば、巨大な一角獣。初心者でも倒せるホーンラビットという魔物がいるが、その親玉みたいな魔物である。幻獣の一種らしいが、とにかくツノが巨大で堅い。その巨大な角を目標ターゲットにまっすぐ向け突進してくるのだ。


その長く巨大なツノはオリハルコン製で、普通の魔導銃で撃っても破壊できないのだ。ツノを向けられた側から見ると身体の大部分は角で隠れてしまっており、身体の部分には弾を当てられない。強力・強大な盾と鉾を兼ね備えたスタイルである。


しかも突進はホーンラビットの百倍くらい速い。ホーンラビットは五メートルくらいの距離から一気に飛びかかってくるが、この一角獣は五百メートル先から同じように一瞬で距離を詰めてくるのだ。離れていればまだよいが、うっかり近距離で遭遇してしまうと反応できずに角で突かれてしまう事があった。


ただその場合も、クレイの用意した防御用装備が活躍した。オートシールド。攻撃を受けると自動的に小さな名刺大の魔力の盾が発現し受け止めてくれる魔導具である。これが、一角獣のツノを受け止めてくれたのだ。(今のところ、この小さなシールドを打ち破れるような敵には遭遇していない。)


幸いにも一角獣は群れで現れる事はなかったので、クレイ達は横に広がった陣形をとり、ターゲットになった者でない者が横から撃つ事で倒す事ができたのであった。(一角獣の角は当然、貴重な素材としてすべて回収した。)






またある階層では、姿の見えない魔物が現れた。ドローンによる環境チェックでは特に問題もない普通の森林フィールドであったのだが、帰還途中でドローンが撃墜されてしまったのだ。


階層に踏み入りクレイの左目のマップを見ると、なんと目の前に魔物がいる事を示すマークが出ている。だが、自分の前にいるはずの魔物を視認できない。


透明な魔物か? と考察している時間もないうちにオートシールドが発現し攻撃を弾いた。連続してシールドが発現するがその間にクレイは一旦階段のほうへと退却したのであった。


対策は意外と難しくはなかった。階段内から階層内の映像をリルディオンに送りスキャンさせてみると、どうやら光学的な(光を屈折させる?)方式で姿を隠しているようである。また、同時に魔力も抑えているようであった。だが、体温までは隠せていなかった事が判明したのだ。


そこでクレイは、温度をグラフィカル表示させるサーモセンサーゴーグルを作って全員に装備させた。居場所さえ分かればそれほど強敵ではなく、魔導銃で殲滅する事ができた。






またある階層では、全身にとてつもなく頑丈な鱗を鎧のように纏った魚介系の魔物が出現した。鱗一枚一枚がオリハルコン製で、魔導銃の弾丸が弾かれてしまう。先に登場した一角獣と違い、全身鎧に覆われているため、弾を撃ち込む隙がない。


ただ、表面は堅いが衝撃は内部に伝わるようで、一撃必殺とは行かないが、当たればダメージがそれなりにあるようであった。そこで、内部にダメージを浸透させるような力積が大きくなるような弾丸を使って圧倒した。(質量重めで先端が尖っておらず面で当たるような形状の弾丸にした。さらにショックレスハンマーの仕組みを真似て、内部に砂状の重りを入れ、当たった後一瞬遅れて内部の重りが衝撃を与えるようにした弾丸を作った。)


この弾丸で、当たりどころが良ければ一撃で、だめでも数発当てれば倒す事もできるようになった。


ただ、一撃で倒せないと、数多く出現された時に厄介である。そこで、クレイはリルディオンで開発した魔導銃の中でも高威力のバスターランチャーを持ち出してみた。以前から構想はあったが未完成だったものなのだが、一角獣の時に高威力な武器も必要になると思い完成させたのだ。


撃ち出される弾丸も、通常よりも高い貫通力を発揮するように設計された徹甲弾である。質量の重い金属でできた外殻部分と、オリハルコン製の細く鋭い弾芯の二重構造になっており、外殻部分が装甲に強烈なプレッシャーとダメージを与え、引き伸ばされ薄くなった装甲を中央のオリハルコン弾芯が突き破り内部に侵入するようになっている。(これは、地球で戦車の装甲を破るために開発された徹甲弾の知識をクレイがうろ覚えではあるが覚えており、開発してみたものだ。)


ただ、撃ってみたら、バスターランチャーなら徹甲弾を使わずとも倒せる事が分かったので拍子抜けであったのだが。


バスターランチャーは弾丸の速度が地球で言うマッハ50以上出ており、通常弾でも十分威力があったのだ。






またとある階層では強力な状態異常攻撃や精神錯乱攻撃を乱発してくる魔物が出現した。これはかなり危なかった。(錯乱した仲間による同士討ちが始まってしまい焦ったクレイであった。)このような魔物の特性はドローンによる事前調査でも分からなかった。ある意味、初見殺しとも言える魔物である。


即、管理者権限で身体強化の魔導具と魔導銃を全て無効にしたうえで、転移で全員脱出。その後も錯乱したままの仲間を【加速装置】を使ったクレイが気絶させて事なきを得たが。


その後、リルディオンで状態異常を治療させ、同時に防御用の魔導具を製作してから再挑戦となった。






影に潜る能力を持つ悪魔系の魔物が出現する階層では手こずった。空間魔法の一種であり、疑似転移のようなものである。今のところクレイ以外に転移を使う魔物とは遭遇した事がなかったが、もし今後そのような魔物が現れたらと考えると少し背筋が寒くなるクレイであった。(影に潜る魔物は光の魔法で潜ろうとする前に影を消してしまう事で倒した。)






身体の大きさが、何十キロメートルもあるような、とんでもなく巨大な魔物も居た。階層に降りた時点で、既に魔物の上に立っていたのだが気づかず。そして大地震が起きて、立っていられなくなった。


正体に気づいてから、ドローンを使って離れたところから撮影させてみたところ、それは亀の魔物であった。甲羅の上に土が体積し、木々が生えている。


亀は、長さ8メートル、口径20センチもあるバスターキャノンを引っ張り出し、強力な火魔法を仕込んだ当たった後爆裂する弾丸を何十発も体内に打ち込んでなんとか仕留めた。






そして……その時は訪れた。



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