第131話  ダンジョン深層

そして、クレイがダンジョン攻略を開始してから半年が過ぎた。


到達階層は既に九百階層を越えた。


ここまで来るとさすがに一筋縄では行かない階層が多く、進行速度は落ちてしまっているが。


出てくる魔物も強いだけでなく癖が強くなっていき、難易度が高くなる。魔物もそうだが、フィールドの環境も特殊な階層も多くなっていった。


例えば溶岩地帯。


まるで川や湖のように溶岩が流れており、歩ける土の足場が少ない灼熱の階層である。歩ける土の部分も、触れれば火傷してしまいそうな熱さである。クレイは断熱服(冷却機能付き)と断熱ブーツ、そして浮かぶ足場をリルディオンで制作する事で対処した。




全て水中の階層。


アクアラングとウェットスーツを制作して対処。そういうアイデアとそれを作る技術がなければ絶対に攻略できない気がしたが、水中で活動できるようなスキルや魔法を使える者が、極めてレアではあるが存在しているという話をクレイは後で知った。




他には、酸素濃度が異常に薄い階層。


酸素が極端に少ないため、一呼吸しただけで気を失ってしまう。(酸素が極端に少ない空気が肺に入ると、血中から酸素が肺の中に吸い出されてしまうため。)ここでもアクアラングが役に立った。




とてつもない嵐が吹き荒れ、頻繁に落雷が起きる階層。


落雷は絶縁スーツと避雷針を作成して対処。突風は、土魔法を使って深めの溝を堀り、その中を通る事で対処した。




魔法が使えない階層。


どういうわけか空間に魔力が存在せず、魔力をとどめておく事ができないのである。階層のどこかに穴が開いていて、そこから魔力が吸い出されるように漏れ出しているようである。体内の魔力を放出してみても、拡散するかのようにあっという間になくなってしまう。それどころか、何もしなくても階層の中にいるだけで徐々に体内の魔力が吸い出されてしまうようである。


リルディオンから供給される魔力も垂れ流しになってしまうだけなので、なんとなくもったいない気がして、供給を一旦オフにしたクレイ。クレイはもともと魔力を生み出す臓器を持たない体質なので、魔力がなくとも何も感じないのだが、ふと見ると、仲間達は全員体からも魔力が抜けてしまい、魔力欠乏になって動けなくなっていたので、全員早々に退場させた。


ただ幸いにも? この階層で出現する魔物は、魔力がないため、魔物と言うよりただの獣であった。魔導銃は普通に撃つ事ができたので、散弾の連射モードでクレイ一人でなんとか対処する事ができた。(魔力の漏出? は亜空間内までは影響しないようで、亜空間内を通って射出される魔導銃は普通に撃つ事ができたのだ。考えてみれば、もし亜空間まで魔力が奪われていたら、マジックバッグの中身が維持できずに大変な事になってしまうだろう。)


この階層のボスモンスターは巨大なシロクマであった。地球のシロクマの三倍以上あろうかという巨体で、毛皮も硬く物理攻撃にはめっぽう強いタイプであったが、反面、魔法攻撃には非常に弱かった。弱点に気づいたクレイがリルディオンからの魔力供給をオンにし、膨大な魔力を無駄に垂れ流しながらもファイアーボールを当てたところ、思いの外あっさりと倒す事に成功した。




一切光のない闇の階層というのもあった。


ただ、その攻略は容易であったが。強い光を発生する光球を作り出し、空に浮かべたのだ。クレイは光系の魔法(魔法陣)が最も得意である。転移魔法陣も光の魔法を使って描いているのだから。リルディオンからの膨大な魔力供給を受け、光球はまるで太陽のように明るく階層内を照らしたが、光のない状態に適応していた魔物は強い光に弱く、それだけで動けなくなってしまったのだ。




透明な壁でできた迷路となっている階層もあった。


一見、何もないだだっ広い空間のように見えるが、進もうとすると見えない壁に阻まれるのだ。透明な壁はダンジョンの内壁と同様で容易に破壊できなかった。ただ、これも攻略はイージーであった。何故なら、クレイの左目の機能で迷路のマッピングが可能だったのである。クレイは階層内の迷路のマップを表示させ、迷路の抜け方を先に解析。あとはそれに沿って進むだけである。階層内には当然魔物も居たが、迷路にハマっているのは魔物も同じなのだ。お互いに、相手の姿は見えるのだが、その間に透明な壁でできた迷路があり、容易に近づくことができない状態のである。しかし、マップを見ながら進んでいるクレイには、どこで魔物と直接エンカウントするかが分かる。次の角を曲がれば接敵すると分かるのだから、その瞬間に銃で撃ってしまば終了である。




他にも、階層の床がすべて毒の沼になっている階層、階層内の空気がすべて毒霧になっている階層、階層内の空気に麻薬が混ざっている階層などもあったが、階層に踏み込む前にリルディオンで作らせたドローンを飛ばして状況を調査・解析し、都度対策を準備しながら進んだので、クレイ達が大きな被害を受けることはなかった。(ドローンはクレイのアイデアで作らせた四軸ヘリコプタータイプである。エリーに尋ねてみたが、このような機械は、リルディオンの時代も含めてこの世界には存在した記録はないようであった。)


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