その腕に抱かれる人

私の提案はこうだった。


「本当はオシャレなんかしたくないし、スカートだって短くしたくない。でもせざるを得ない状況なんだ。じたばたした時、私の足見たでしょ?それが全て。私は、今までずっと、この15年間、親に近親相姦されてるの。親にオシャレを強要されてる。だから、卒業間近に全てを終わらせたい。」


淡々と話していく私


言葉がスラスラと出てくる事に内心驚いた


余程疲れていたんだな、今気づけて良かった


全てを話終わる、彼女は何とも言えない表情をしていた。


「よし、帰ろっか」


この状況はきまづい

作ったのは私なんだけどね

彼女の手を繋ぎ、急ぎ足で屋上から出ていきたかった


彼女の体が強ばっている気がしたのは、きっと私の勝手な解釈だ。


「……つまり、明日亡くなるって事?近親相姦なら、相談所とか、そういうとこに電話すればまだ間に合うんじゃないかな?」


頑固として立ち止まり、必死に説得してくる彼女

大量の雨粒が降りしきるのを私は見逃さなかった、こうなる事は分かってた、大量の雨粒も、涙を堪え説得してくる彼女の事も、私の予想通りだ


息が止まるほどギュッと抱きしめる


これが最後だよと言い聞かせるように


だけど、大好きな彼女の涙が止まってくれることはなかった


家に着き、窓から眺めるのは、咲き誇るような桜並木でも、忙しく鳴く蝉でもなく、彼女と過ごした2年間を空に映し出していた


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その腕に抱く人 茅川 百々花 @manmaru_oO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ