第21話うねり①⑥


「フレイムスピア!」


20を超える炎の鏃がモンスターの頭を貫く


「桐谷ァ!!Aランクだけあって中々器用じゃないか!」


「愛崎さんのお母様に褒めて頂き光栄ですね!!!」


更にモンスターの数が減る。

桐谷は見てて危なげはないと判断に初見で臆病という印象を抱いた茅ヶ崎を見る。


「ゔぅぅ……らぁぁあああああ!!」


弱い自分とは別れを告げるが如く咆哮しそのガタイに相応しい大剣を振るう。


茅ヶ崎の自信の無さに武器の不適合具合が関係してるかも知れんな。

今のアイツは私の身体能力のバフを受けてようやく思い通りにその大剣を振るっているように見える。

山に着いて拠点を構えたら使用武器について少し助言をした方が良いかもしれんな。


「はぁあああ!!」


栞が声を上げて槍を振るった。

Sランクの膂力によって槍に触れたモンスターが悉く斬り伏せられ、刃から逃れられたモンスターは余波で後方にいるモンスターを巻き込みながら吹き飛ぶ。


「チッ」


顔に似合わず意外と野蛮な戦闘スタイルだな野々上は!


氷の魔法で足を固めて動けない所を炎の魔法で攻撃、逃した相手を土の魔法で退路を塞ぎ大地を隆起させ貫く。

更に氷と炎により生じた水蒸気を魔力によって無理矢理小さな球体にする。

そして圧縮された気体が爆発して周囲にいたモンスターを木っ端微塵にした。


どこかの漫画で見たような魔法だな!!

だが……長い戦闘と集中力が経験した事の少ない茅ヶ崎の顔に汗と疲労の色が見えた。

ここら辺で1度離れた方がいいな。


「全員私が合図を出したら全力で目標の山に走れ!道は私が切り拓く!身体能力強化を施してから合図を出す!

 しっかり聞いておけぇえ!!」


武器をそれぞれ耳飾りに戻し装着する。

右手で魔力を集め身体能力強化の魔法を構築、左手は魔力溢れさせ野々上がやっていた様な水蒸気の圧縮球を魔力で作った。


爆発はそれ単体でもただ斬る、殴るより遥かに強い殺傷能力を全方位にばら撒ける。

だが、その爆発に指向性を持たせる事が出来たのなら一体どれほどの殺傷能力を持つのか。

正解は範囲は劣るが指向性を持たせた方向にだけはどんな鋼鉄を並べても薄皮レベルにしかならない。


「悪神の撃蒸ガネス・カタストロフ!」


一瞬世界から音が消える。

そして前方約1キロの敵が消し飛んだ。


敵もが味方もが全てがその光景に圧倒された。


「「なっ?!?!」」


「これか……愛崎ハンターをSランクに育て上げた母の力???本当にサポートに特化した姿か?!」


「この技に見惚れるのも分かるがぼおーっとするな!!!馬鹿者共!!!!」


全員に身体能力強化を施す。


「走れぇ!!」


「「「「「「「「っ!」」」」」」」」


私の後に全員が弾かれた様に走り出した。

石丸達が待機している拠点を出た時より2倍近いスピードで移動しているが全員がしっかりと着いて来ている。


「栞!後ろの状況を教えろ!」


「徐々に離せてる!!!距離250……300!このまま山に着いてもモンスターが離れて行く根拠がないから山で防衛を前提で向かう事が最善!


うむ良い判断だ


「山に到着すると同時に結界を展開する!破られる事はないが一応警戒はしろ!そして結界の中からの魔法は外に通るからどんどん攻撃を放て!」


「「「了解!!!」」」


走っていて精神的に余裕のある者は返事をする。

茅ヶ崎はまだまだ青いな


山までの距離1キロ。

そろそろ私が削った地面も消える。

モンスターの増援は……ないな。どうやら悪神の撃蒸でかなり殺せたようだ。


山までの距離500


「全員全力で空に跳べ!結界を作るから足場として使え!崖の上に丁度いい場所があるからそこを拠点とする!」


全員が跳んだ

両手に魔力を集め結界の魔法を構築、発動、そして足場として使えるように横長に伸ばす。

当然私も続く


「ふぅこれで割と一安心だ。心配なのは遠距離攻撃を持つモンスターだがまだ見ていないから存在しないと見ていいかもしれん。

 だが一応栞は後方からの攻撃を警戒しておけ。それだけでも大分楽になる」


「了解」





「へーーーあそこにダンジョンが出来たんだ?」


「現場にいたハンターや一般人が巻き込まれたって聞いたから少し心配だね」


「確かに!扉系の入り口じゃないから世界型のダンジョンでしょ?結構レベル高いよね」


「それにダンジョンが出来る場所は大体言い伝えられている伝承とかがあるから弱点は比較的予測出来るんだが少し不自然なんだよ」


「何が?」


俺は持っていたスマホの画面を見せる。


「これってダンジョンが出来た地域の記事?」


「そう、調べた限り一切伝承らしい伝承は無かった、面白いくらいに無かったんだ。だけどダンジョンが出来た。

 何故と疑問に思わないか?」


「なるほど」


「巻き込まれた一般人の数も嫌に多く感じる」


「それは仕方ないんじゃない?」


「ダンジョンの生成に巻き込まれた一般人は大体一桁くらいだ。だけどこのダンジョンは数十人単位で巻き込まれてる!

 考えすぎだろうがまるでに捧げられているようにしか見えないだよ!」


「……伝承の無い土地に出来たダンジョン」


「そして偶然の可能性はあるが今までの事例と比較しても多すぎる巻き込まれた一般人。確かに考えすぎ、今までが寧ろ少なかった可能性の方もあるが師匠が言っていたな」


「「考えを止めるな。仮定に仮定を重ねて真実に近づけろ」」









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