第20話うねり①⑤


朝の8時

皆が起きボス攻略の為の準備を終わらせている状況だった。

皆の前に立ち声を上げる。


「お前ら準備は出来たか?不備はないだろうな?!!あるなら今すぐ確認する事だ!隠しても不備はそのまま自分の命綱になる事となるぞ!」


軽く脅しを入れて様子を見るが誰も動じていない。あのガタイの割に臆病な茅ヶ崎でさえしっかりと前をこちらに顔を向けている。


やるじゃないか


「もうこの拠点に帰って来る事はないと思え!世界型のダンジョンは攻略すればそのまま全員ダンジョンの外に戻れる!

 だから今日は拠点を設営しそこで一夜を明かす!それでは全員荷物を亜空間バックに詰め込め!」


若干熱血気味のキャラで話しているせいかハンター達の反応がとてもいい。

意外とハンター社会は上下関係がはっきりしているからいざという時に素早いのが評価出来る。


「それにしても石丸亜空間バックを借りる事になって悪いな」


「いえいえ構いませんよ私は皆さんのように戦闘向きではないので少しでも役に立ちたかったですし。それに貴女のその指輪に他人の荷物を入れるのは抵抗あるのでは?」


そう指摘され指輪を見る。


「まぁ、確かにな。これは栞の特訓を常にする為にダンジョンでキャンプが出来るセットしか入れていない。つまり思い出が詰まってる。

 うーむやはりお前は紳士的だな。ボスとの戦闘は激しくなる。その際に亜空間バックが壊れてしまったら私が集めている亜空間バックの中から好きな物を選ばせてやる」


「だから構いませんって。ダンジョンの中に閉じ込められた市民の皆さんを早く助ける為の援助だと思えば2000万も安く思えますし昨日の貴女から聞いたその指輪が8億だと聞いて何か2000万が軽く感じてしまって」


「価値は変わらんぞ???」


私にツッコミを入れさせる会話のうまさは褒めるべきか。

楽しいから褒めるべきか?


「なら、そのまま2000万を補填するぞ?」


「何かそれだと私が守銭奴みたくなりません??」


「守銭奴っ!くっはっはっはっ!ハンターという命をベットして金を稼ぐ職業を選びながら守銭奴の名は嫌うか!

 なら何も無しで良いか?」


「やはり貴女はイジワルだ。……亜空間バックが壊れたら補填をしっかり受け取らせていただきます」


「よし」


「準備終わりました!」


「了解。石丸お前は待機組だ。もしモンスターが襲って来た場合は待機組のハンター達や市民と協力して凌げよ?」


「勿論です。桐谷さん、野々上さんみたいに強くはないですが皆それなりに頼もしいんです!」


石丸の後ろにいたハンター達がサムズアップをしていた。


細身ではさほど決まらんのだかな?


「軽く日程を説明する!まずボスを調査する為に拠点となる山に向かう。その山はここから6キロほど離れ、ボスから2キロ離れている!

 山に拠点を築いた後すぐにボスの調査に向かいある程度情報を掴んだら拠点に戻り対策を立てる!そして次の日に立てた対策を持ってボス攻略に当たる予定だ」


皆が真剣な顔で聞いている。

臆病な性格である茅ヶ崎も比較的冷静な顔をしていた。


「最大限に休みを取りつつの攻略となる!失敗はない!あるのは成功だけだ!!合計8キロの行願となるがハンターであるお前達にとってはさほど辛くない距離だ。

 嫌だといく腑抜けは私自ら紐に縛り付けて引き摺るから覚悟をしておくように」


空気が引き締まった。

ちょっとした冗談を言ったつもりだったんだがそんなに脅しとして効いた???

小粋なジョークが本気で捉えられるのは何というか少々恥ずかしいものがある……!

いやそれより今は目の前の事だ


「それでは!案内する!着いて来い!!」


この一言で待機組とボス攻略組に別れた。


ボス攻略組は山を降り私が張った結界の側まで辿り着いた。


「ここから先は正真正銘ダンジョンの中だ!命の保証がされぬ大地!今更怯えている奴はいないだろうな!?」


いないな


「今から全員に同じ身体能力になるように強化を施す!これで足が遅くて遅れる者が出る事はない!

 全力で私の後ろに着いて来い!栞は殿をしろ!」


「はい!」


栞の返事の後私は宣言通り全員の身体能力が大体同じになるように調整した。

調整と言っても桐谷や野々上の身体能力を落とす訳ではない。


「全員進軍!」


軍というほどの数もいない。

だが軍と呼べる戦力がある。


私が走り出すと桐谷を先頭に私の後ろについた。

魔力そのものと言える風が頬を撫でる。


「どうやら早速ボスの尖兵が来るらしい!だが止まるな!私が道を開く!離れるなよ!」


遠くにモンスターの大群が見える。

横にも広がり数は昨日と同等と感じた。


「神狩!千罰!!万視ばんし!!!」


鼻にいつも掛かっているだけだった眼鏡型の魔導具が起動し視覚を強化する。

視界に入ったモンスターを解析して0.1秒以内に視覚に移す魔導具万視はデザイン的にも気に入っている為いつも愛用している。


慣れれば自然と弱点も覚え、分かるようになるか為使わなくなるが見えるモンスター全てが昨日も見なかった新種!!


「これは想像以上だっ!!」


全員が武装を展開した1分後激突する。


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