第16話うねり①①


「どこまで予測を立てていますか?」


「予測ねぇ……」


予測の説明をするか考える。


どうする。全部言うべきか?だが言ったら言ったて確実にこの斎藤は何をすべきか分からなくなるだろうな。

このダンジョンがダンジョンじゃない可能性は言わない方が良さそうだ。

そうすると……うむ、コイツを巻き込むか


「予測を話す前に聞きたい事がある」


「何でしょうか」


「ダンジョンの事についてどこまで知ってる」


「?一般的な範囲とハンターが知ってて当然の知識だけです。都市伝説や噂はカウントしないので知ってる事はたかが知れています」


「なるほど」


あまり知らないと見える。

ハンターにとって常識の知識なら階層の話とかも知っていると見ていい。

ならそこから話すか


「まずこのダンジョンは正常な作りをしていると思うか?」


「正常……では無いでしょうね。一般的なダンジョンは階層型です。高位のダンジョンではここみたいな世界型のダンジョンがあると聞いています。

 私は高位のハンターでは無いので行ったことが無いので本当にイレギュラーかどうかは判別がつきません。ただダンジョンに入った……段階であの物量をぶつけられるのはおかしいとは思います。

 ここが世界最高峰のダンジョンならばおかしくないのかも知れませんが」


確かに世界最強のダンジョンならダンジョンに入ったらすぐに攻撃が仕掛けられても不思議ではなく割とありえる。

しかし万を超えるモンスターを差し向けられるなど経験した事がない。


「この世界型ダンジョンの多くはモンスターが常に徘徊にバレないようにするのがハンター達の間では鉄則となっている。バレたら最大で1000近いモンスターに襲われたりするからな。

 そしてダンジョンに入る為にはゲート型の入り口に入る、入ると転移したように大地に立っているんだ。出る為には勿論ボスを倒さなきゃいけない」


「つまりここから出る為には」


「ボスの討伐が必要だ」


私の言葉を聞き斎藤は目頭を抑え深い溜息を吐いた。

その姿はまるで徹夜をしている最中のサラリーマンの如く。


「このだだっ広い大地の中でボスを見つける……か、探すのに骨が折れそうです」


コーヒーを一口多めに飲み菓子も一個摘む。

そして咀嚼を終えると希望を告げてやる


「ボスらしき存在ならもう確認している」


「ぶほぉ?!ごほっごほっ……ほ、ホントですか?!?!」


「少し離れているから市民をここに置いて守るハンターとボス討伐のハンターに分ける必要がある。

 ちなみに聞くが斎藤、お前は戦えるのか?」


「う〜ん。一応戦えはしますが私が持つハンターのランクはDランクなのでこの戦いには着いて行けませんね」


恥ずかしそうにDランクだと私に言う。


「恥ずかしがるな人には得手不得手がある、やれる事をやれればそれだけで立派だと思うぞ?それに私だって純粋な戦闘魔法は使えない。

 サポート系の魔法が得意で攻撃魔法は不得意だが体術や武器の扱いは魔法では再現出来ないから頑張って磨いた。そう卑下するな卑下するのならやるべき事をやって駄目な時にすれば良い」


ズズズッ


コーヒーをまた一口飲む。

やはりこの苦さは気持ちを落ち着かせてくれる。

ミルク入り紅茶も良いがこれも中々どうして悪くない


「ふぅーボスの討伐に向かうのはなるべく足の速い者達だけで構成したい。今決まっているのは私と栞だけだ、後はボスの気を引ける囮役を数人欲しいな」


「ちょっと待って下さい」


斎藤がまったを掛けた。


「何だ。……あぁ安心しろここの結界は討伐しに行く時にガチガチに固めておくから心配はいらない───」


「まだボスの見た目、話してませんよね」


最後の一口を飲もうと傾けたコップが止まる。


やっぱり気付いたか。

いよいよ本当に巻き込まないとな


「気付くか。一応言っておくが今から話す内容を聞けばお前は一般的なハンターから逸脱し政府直属のハンターにならざるを得ないからな」


「あ、ちょっと聞きたくない」


「ははは!駄目だお前が聞いたんだぞ〜〜!」


急にネガティブな対応になった斎藤を見て思わず笑ってしまった。

退屈しないな


「まぁ勿論栞達といるハンターもこの際巻き込むから安心しろ。どこかのギルドに入っていたとしても兼任出来るから脱退だとかは考えなくていいぞ」


「嬉しいけど嬉しくないっすね〜〜」


最後の一口を飲みコーヒーが入っていたコップの脇に置いてある小さなテーブルに置く。


「ボスの見た目だったな。モンスターとして特異だったと言えるか」


「?」


「見た目は仮面を付けた巫女服という存在だよ。モンスターで衣服を完璧に着こなすなんて聞いた事がない。そう思うだろ?

 ならば何故かと言う疑問が出るはずだ。簡単な話なんだ……このダンジョンは伝承が元となる存在が魔力を得た方によって受肉したと存在見るのが私達、栞も含めたトップハンター、ギルド、政府の役人達の長年調べた結論だ。

 世界的に有名なモンスターがいるだろう?吸血鬼、つまりヴァンパイアだ。御伽噺でしか聞いた事が無かっただろう?だがダンジョンが出来て現実となった」


「情報量の多さに処理落ちしそうですよ……だけど待って下さいこの地域で仮面を付けた巫女服の伝承なんて聞いた事がないですよ??」


ほう?平凡そうな顔をしておいて役立ちそうじゃないか









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る