第13話うねり⑧


神狩かがり


右耳の耳飾りが体より巨大な鎌に変わる。

これは自分に畏怖し、生物として勝てないと悟った者に対して払うと無類の強さを発揮する能力が備わっている。

首を刈ろうと振るっても刀身はすり抜けるが痛み、痺れ、麻痺、火傷、凍傷様々な効果を一度に与える。


「私が出張ると直ぐに終わる他に他の警戒をするからトドメはお前達がしろ!!」


「「「はい!!!」」」


声を張り上げると幾つもの返事が返って来た。

ある程度統制が取れてるから生半可な襲撃では崩壊しないのがやはりハンターと言うべきであろうな!!


「ふっ!!」


一振りで5匹のモンスターが身動きが取れなくなった。


まだ一方方向からしか来ていないから助かっているが全方向来ていれば少し危なかった。

このまま足止めされるとハンターはともかく市民のストレスは少し心配する領域になる!


そう言えば一応もう栞の母親と世間に知られているのだからバレてもさほど抱かれない??

いや、絶対何かあるな。

だが今のこのラッシュを安全に乗り切れるのなら全然アリだな!


「栞!私が挑発で引き付けて殿を務める!!お前は先頭に立ち目標地点の山まで先導しろ!」


「はい!!!」


「了解した!」


リーダーシップを発揮して演説をしていた男からも返答が返ってくると市民達と一緒に走って行った。


「すぅーー…………ルっぁぁああああああああ!!!!!!」


声に魔力を乗せての全力咆哮

まだ来るモンスターも栞達の方へ向かおうとしていたモンスターも全てに私の元に向かって来る。


神狩を耳飾りに戻す。

そして左耳の耳飾りを持ち手の長い剣に変えて構えた。


千罰せんばつ!!!」


どこまでも遠く離れていてもその罪を罰するという意味で作られたこの剣は魔力を込めれば込めるほど刀身が伸びるという能力を持つ。


「ふるぅああ!!!」


ただただ横薙ぎに振るう。

しかしそれと同時に魔力を込めて刀身を伸ばす。

重さも当然の如く増す……が、止まる訳は無くモンスター達の胴体は両断される。


この一連の動作だけで数十もの死体が生まれた。


「まだ何百匹も来そうだな?良い運動になると期待しよう」





「愛崎さん!!彼女大丈夫なんですか?!まだ私や貴女のどちらか残った方が可能性はあるのではないか?!」


「それはない!!お母さんは少なくとも私の数倍は強いよ!一応Sランクのハンターって称号はあるけど全力でも勝てるビジョンは見えないから!!

 寧ろあんだけのモンスターがいたら良い運動になるって言って嬉々としますね!!!」


「親子か?!?!?!」


「義理ですけどね!!!一応これ言っちゃ駄目なんだけど昨日対応したファンのせいでバレましたよ!!

 おかげで上司から鬼メール来てますよ!!クソですよ!私の手で息の根止めたいくらいです!折角のお母さんとの休日も邪魔されるし!!」


「あーうん……落ち着こうか」


私と漫才じみた会話をしていた斎藤輝樹という名前のハンターは前を向く。


「目測何mだ?」


「まだ4キロはありそうですよ斎藤さん。それにしても美崎さんのお母様は何とも……パワフルですね?」


「喫茶店やってるんで来ます?」


「え?いいんですか?」


「ツテというか脅迫でどんな有名な店の限定で品でも手に入るんですよ?」


「「「「それ大丈夫ですか?!?!」」」」


ハンターだけに留まらず市民の人達からもツッコミが入る。


決して駄目ではない。

市民を脅してるんじゃ無い脅してるのは政府だ。

それに私だって中学生の時そのツッコミをした、当然とでもいうべき顔で、とても安らかな表情で『大丈夫だ栞……あいつら文句言えないくらい私に貸しあるから……』と言ったのだ。


「大丈夫。貸しあるからって言われた事あります」


「「はぁ……?」」


何を言ってんだ?と言うべき言葉にならない疑問符

貸しの内容を知ってるのは私と政府と店の人とハンターの中でも一握り。


「それよりうだうだやってるうちに少し近づいて来てるけど着いたら何をするべき?もしもの時の為に拠点の設営?」


「一応私はサポーターをやってまして常にテントや非常食の類いは常備してます!!チームのみんなと遊びに来てたんですが何故か僕だけここに呼ばれちゃいまして!疎外感を感じてましたが役立つ予感がして嬉しいです!」


「特に申告した通りの物を持っているようには見えないがまさか?!?!その背中の物は超限定の価格は最低でも2000万する亜空間バックですか?!」


あーーお母さんが暇すぎてお小遣い稼ぎごっこをした時にちょいちょい作ってたやつだ。

まだ作ってたんだ。

それなら非常食やらテントの設営話は納得

あれ?もしかしてずっとズルだと思って言ってなかったけどお母さんに頼めば……作ってくれたりする?


少しだけ疼く

なるべく正しく生きようとして来たがお母さんに貰うのならセーフなのでは?と考えてしまう。


「くっ!羨ましい」


「意外ですね愛崎さんが持っていないなんて」


「Sランクともなれば潜るダンジョンは高ランクかつ深層!普通のちょっと丈夫なバック程度で充分だったんです!

 見栄張らなきゃ良かった……!」


「何かソロ活動も大変そうですね」


私とハンターのこんな馬鹿話をしていたおかげで市民の人達もストレスが緩和されたのか笑いが溢れつつあった。





「ゴロザ……ズ」


伝承が形を得て顕現する






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