第12話うねり⑦


「どうだ?狭い路地裏の通り道と小さな広場はあるか?」


耳打ちをする。

それに栞は応答した。


「地図で確認した限りはない。だけど大きい街だから離れた所にあるかも」


「全国で政府から指令を貰ったトップギルドハンター達が探してくれているとはいえ流石に手が足りんのはいかんともし難い」


「十数年も一切顔を出さなかった組織だからね。しかも未だ異神教が黒幕と断定出来ている状況じゃないのも厄介」


「出来ているのならな。あくまで仮定に仮定を重ねた推測の域を出ていない、それより栞」


「少し……魔力が濃くなった。ここら辺にダンジョンは無いはずだよな?」


「そのはずです」


肌にざらつく感覚が纏わりつく。

周りを見渡しても一般人は私と栞に視線を集中させているがハンターと思しき人間は不思議そうにキョロキョロとしている。


違和感に気付いたか

……ほんの少しずつ魔力に反応している人間が集まり始めたな。


何が原因だ。

まるで虫を集める誘蛾灯


「ᛋᛏᚱᛟᚾᚷ ᚷᚢᚨᚱᛞ《ストグガード》」


「はい?」


「世界に来てから知ったルーン文字とやらを使った守護魔法だ。何故ルーン文字なのかだって?理由カッコよさそうだからだ」


「しょうーもな」


「ねぇ、当たり強くない?カッコよさそう以外にも空間に漂う魔力を使用しているから魔力感知に引っかかりにくいのも理由だからな?!」


「冗談ですよ冗だっっ?!?!」


「地震?」


魔力が濃くなったのは自然災害による空間の歪みが原因か?

だとしたら何故魔力以外にもを感じるんだ!!!


周辺の人間は慌てふためき中にも叫び出す者もいた。

このような状況になるとハンターは即座に警察、自衛隊の代わりとして市民の安全を守る為に行動を始める。

避難誘導、地震の際に怪我した者の搬送、警戒

だが間に合わない


ふと道路の真ん中に目を向ける。

そこにはがいた。

何かがこちらを見ると次の瞬間には景色が変わっていた。


「は………??」


「予想外だ、まさかダンジョンの生成する瞬間と会うとはな」


「これが?!」


「トップギルドだろうがハンターであろう知らない者が殆ど、知ってるのはごく僅か。ダンジョンとは伝承などの人の言葉が魔力という異物を得て、肉体を得た姿と言い換えて良い」


「だからダンジョンがある県によって出現するモンスターの種類がはっきりと分かれていた?」


「そうだ」


有名所なら東北

河童や雪女、鎌鼬、本当にいたら厄介が魔力を得て受肉した。

それ系統の話で1番ヤバいのは特別凄い伝承があるわけでは無いのに何故かダンジョンが出現した福井県だったりする。


「恐竜が有名すぎでダンジョン内のモンスターも恐竜や人竜になった福井と比べれば幾らかマジだろう」


それより

と続ける。


「栞周りにいるハンターと連携して一般市民をダンジョンの外に出すぞ」


「はいっ!」


すぐに周りのハンターに声をかけ始めた。


「良く動く。これが出るまでで一皮剥けるか?」


歩きながらこのダンジョンを良く観察する。

赤黒い空、一切草木の大地に見渡す限り広がる無限の彼方。


……ここが私の眼でも見れなかった存在が立っていた場所か。

膝をつき指で擦る


「擦っても何かが起こる訳でも無し……か」


「すいません」


「何だ」


「うおっでっ、あっいや……一旦集まってもらえませんか?」


「分かった」


私が立ち上がると身長を見てデカいと言いそうになったな??

一応私に縦に長いだけで横には一切太く無いんだぞ?!?!

比率的には寧ろ細身の部類だ!


内心声を掛けてきたハンターに愚痴を溢しながら後をついて行く。

ついて行った先には栞含めたハンターと市民数十人の市民がいた。


「取り敢えずこれで全員か?全員だな??

あの人数の中て起きた異変なのに目の前の人達がたったの数十人しかいないのが気になるが……今は気にしている時ではない!

 今俺達はいつ何時死ぬかも分からない状況に晒されている!モンスターが襲って来ても守り切れる保証は無い!!よって今から団体行動をするが異論のある者は手を上げてくれ!」


誰も手を上げない

今はこの目の前に立ち演説をした男に従うのが最善だと認識しているのだろう。


「まずは遠くにあるがあの山を目指したいと思う!!少し時間は掛かるが我慢をしてくれ!それでは行くぞ!!」


リーダシップを発揮した男が歩き出すとハンターも市民も連なって歩き始める。

私も歩き始めたと同時に栞が先頭から最後尾に移動して来た。


「これ……どうやったら抜けられるか分かりますか?」


小声で栞が質問をする。

私は今頭の中に浮かんでいる言葉を口に出す。


「普通のダンジョンは階層型故か1階層の大きさに制限がアリ歩き回っていれば次の階層への階段がいずれ見つかる。

 だがここはどう見ても1階層しかない。しかも見渡す限り地平線、点在する山という目標物があるがそこに必ず手掛かりがある保証もない、下手をしたら詰みだ。

 しかしダンジョンが生成される条件の1つに必ず解決策を用意しなければいけないという法則を10年前に見つけ出した。必ずどこかに手がかりがあるはずだよ」


栞は遠くを見つめる。


「あれは…………っ?!?!遠方!モンスター接近!迎撃準備!!」


栞の言葉に市民は悲鳴をあげ、ハンターは武器を構えた。

当然みているだけの情けない様を晒す理由が無い私も耳飾りを武器にして持つ。


横に男が立つ。


「朝知りましたよ。貴女はSハンターの母親らしいですね?そしてその武器を見るに戦力として見てもいいのでしょうか?」


「当然」


私の返答に嬉しそうに笑う。


「感謝する!」




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