第11話うねり⑥
「…………」
「…………」
「……仮にも母親を正座させるのは違うと思うぞ栞」
「誰かの失言でこんな事になってるんですよ」
「だ、だって事実だろ……ぅ」
スマホの画面を突きつけられている。
それは今の私にとってこの世界の銃という兵器を突きつけられているに等しい。
「反論をするが栞!!」
「誘拐事件や新種を作り出している存在、または関与している存在がこの大・拡・散されている呟きを目にしたらどうするとか考えた?」
「……じ、事実なので考えが至らなかったです」
「お母さんって僕に「考えろ、考えを止めるな、仮定を積み重ねろ」とか昔から言い聞かせていたよね?言ってる本人が出来てないんじゃ世話ないよ?」
「事実陳列罪」
「はい?」
「何でもないです」
昨日鎮められたと思った怒りがまた大噴火するとは……SNS恐るべし、そして絶対拡散したであろうあの男次会ったら殺す。
理不尽と言われようが殺す!
それにこんなに怒られるなんて初めてだぞ。
栞が勝って来たアイスを勝手に食べた時より酷い怒りようだ。
ダンジョンが出来て以来明確に存在を確立された土地神クラスの威圧感。
「前向きに考えよう栞!私達の関係が世間にバレてしまったのはこの際目を瞑るとしてこれから堂々と私を"お母さん"と呼べるぞ!
寧ろこれを逆手にとって考えよう!Sランクの知名度とその母親という存在は間違いなく認知される!ならば情報も集まりやすいのではないか?!」
「その考え出来るのに何故失言したのか」
「流石にもう……そろそろ栞を隠さずに愛でたくなったと言えば嘘になる」
「あ〜〜〜」
呻きながら栞は天井を見つめた。
首を右に左に傾けたりしながら呻きつづける。
「はぁ〜〜広がったのも私達の寝ている間で政府も気付いたのは情報が広がりきってから。
終わった事だし納得するしかない、事件諸々の調査は確実に難航するだろうけど、難儀だろうけど、でも……これで堂々とお母さんと呼べるなら意外と悪くない……も?」
「栞〜〜!」
ガバッと正座から立ち上がり抱きつく。
そして頭をガシガシと撫で続ける。
「栞〜〜〜大好きだぞ〜〜うぃうぃうぃうぃうぃ〜〜!」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
暴れて逃げようと栞を足でも捕まえて逃げられないようにしながら撫でまくる。
1分程で諦め暴れるのをやめ、2分後には恥ずかしそうに自ら撫でられに来た
「ふふ、愛い奴め」
「大河ドラマの悪代官みたいな言い方だなぁ」
☆
いつまででも頭を撫で回すのも駄目だと言われ渋々抱きつくのをやめて乱れた髪を直す栞を待つ。
「本当お母さんは撫でるの雑だよね」
「娘を撫でるんだそうもなる」
「投げやりな返答」
「お?自分の武器が槍だから投げ槍ってか?」
「はぁ〜〜〜……!」
そんなにデカい溜息つかなくてもいいのではないか栞??
「今日はどうする?SNSで私達の事バズっちゃったしこのまま隠れたながら帰る?」
「バズ?破壊力はないだろ?」
「バズーカじゃないよ。お母さんさ地味に親父ギャグ好きだよね」
母親に向かってオヤジ?!?!?!
「何考えてるのか大体分かるけどそれズレてるよ」
「…………」
「お母さん自体は別に気にしないんでしょ?」
「そうだな全く気にしない」
気にしてたら失言はそもそもせんからな!!!!
親子喧嘩にならなくてホント一安心だ!
何かジト目を向けられている気がするが私は見なかった事にする!!
「私が関係を世間にバレたくなかったのは事件が全然終わってなかったからだしもうバレちゃってるなら別に気にしないよ」
「なら今日はパンケーキを見て回ろう!昨日は行く予定だったが私のせいで台無しになった。だから今日行ってしっかり楽しもう」
「そうだね。私も店で出すようなアイスが乗ったパンケーキとかドロドロの蜂蜜が乗ったパンケーキとか色々食べてみたいし」
「一応政府に言えば私の店に卸せるかは今度言っておこうか?」
「…………お願い」
「任せろ連絡するだけなら私でも出来る」
悩んだ末に頷くとは!
普段はこう言う事に厳しい栞が頷くとはよほど魅力的だと言える!!
これで今度喧嘩してしまった時の切り札に出来る
グッ
「グッじゃないが」
10分後外に出る。
流石に泊まったホテルまでは特定されたりしていないようだ。
まぁ、良く考えればモンスターを容易く屠る栞の不興を買いたくないんだろう
「栞悪いがパンケーキの他に地図にも意識割いていて欲しい」
「?……あっ目撃箇所」
「そうだ歩きながらそれとなくで良いから
地図を見て探してくれ」
「了解」
「やたら凛々しいがさてはお気に入りの漫画が佳境に入って感情移入したな?」
「ちょ、ちょっとやめて!!」
恥ずかしそうに否定をする。
ははは!図星か!!
「まぁ良い、行くぞ栞!どんどん気分転換の旅行を楽しもうか!もしまた昨日みたいファンが来たら今度こそ母親としてしっかり対応してやる」
「もう出てくる失言もなさそうだしお願いしますよ」
「任せろ!」
生温い風が吹いて髪を揺らす。
僅かだが魔力が感じたられた。
これは……念の為いつでも耳飾りを使えるように気を回しておくか
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