第7話うねり②


「空なら直接的な被害は無くなる訳だっ!!」


「ァッ!!」


魔力を固め空間に固定、足場として蹴る。

地面に立っている時も変わらない加速によって肉薄し剣で斬りつけた。

そのままだと通り過ぎてしまう為もう一度足場を作り蹴る事で加速する!


「足場に弾性を持たせれば少しずつだが加速ど度合いも上がり!!脳で認識出来ない領域まで加速する!」


もう一度、もう一度と足場を何度も空中に作り続ける。

逃げようともがけば足場にわざと当てて跳ね返らせ別の方向へと柄で長い持ち手で殴り飛ばす。


「ッ!!!」


何度も


何度も


何度も繰り返し遂には足の踏み場、改め空の抜け道も無いほど魔力によって作られた足場が球体状に出来上がる。


「ァッ」


「アニメというやつで見た技の再現だ!」


掌を突き出し魔力を放出させる、次に魔力を極限まで小さくする。小さくなったらまた魔力を溢れさせ小さく丸める。


「ァ!ァア!!アアア!!!」


近づこうと突進して来るが私の溢れた魔力によって弾かれ体勢を崩す。


「どんなふうになるか楽しみだよモヤ」


何かを察したのか逃げようと足場に体当たりを始めたな?だが無駄だ!徐々に弾性を強めたおかげそのくらいならば!壊れん!


「ピンボール・プリズン!!」


完成した魔力球を全力で足場に向かい投げると跳ね返るその瞬間から私でさえも完全には知覚出来ない程の速さ、ランダム性を持ってモヤの体を貫く。


「魔力の流れていない、纏っていない武器では特定打にはなるないが魔力の塊だとかなりの痛手のようだな!」


隙を見て足場球の中から出ると地上を見下ろす。

巨人、モヤ以外にも小さなモンスターが沢山出てきて暴れている。


だが私がモヤの相手をしている間に多少のハンターが来て対処に当たっているのは良い傾向だ。

これなら比較的すぐに鎮圧出来そうだ……が、手応えが無さすぎる。

身体能力を無強化状態なら苦戦してそうな敵が1匹だけなら本当に私1人でやりようはある。


「ァアアアアア!!!」アッ!ァッ!!!」


頭を貫かれ、脚を、腕を胸を腹を再生しようと何度も貫かれ続ける。


そして


「……ァァァ……ァ」


声も出なくなりモヤが砂となって崩れ始める。


「ふんっ思いつきの遊びで死ぬとはつまらん本当につまらん。まだまだ遊べるのかと期待したが……その程度なら最初の高揚も無駄だったか」


モヤが消える。

足場球の中で魔力球が1人寂しく跳ね続けているがどうしたものかと考えていた時離れた場所で建物の倒壊する音が聞こえた。


「何?……は?」


目線の先には30mになる怪獣の呼ぶべきモンスターが現れた。


「ちっ!弱点が見つかり辛い単純に面白くない!」


即座に魔力を飛ばし対象の体内に浸透させる。これにより核となるような器官を探る。


人によって苦手とする手法だが私はこっちの方がやりやすい!


「……2ヶ所、体内の奥深く。ならば」


魔力球をもう一つ作り足場球の中に全力で投げる。

そしてすぐさま穴を閉じると同時に足場球自体を小さくして反射までの時間を短くしていった。


「良い感じに加速しているな。これなら簡単に貫けそうだ」


魔力球を放つ為の前段階として深呼吸をする。そして声に魔力を乗せて発言した。


「『退け、撃つ』」


ほんの少し一瞬30m級のモンスターに群がっていたハンター達が硬直したが瞬きした時には撤退に移っていた。


「拡声魔法はこういう時に便利だから好きになる」




激突球バーサクストライク



ッッッッッッッッッッドン!!!



放った瞬間には地面の中に埋まりきっていた、遅れて音と爆風が地上にいたハンターを襲う。


あっ市民逃げたか?


試したくて撃つ事しか考えていなかった事に今気付く。

だが


「栞なら既に避難済ませてるだろうから安心か」


明らかに明確な殺戮を目的としていない。

地面に縫い付けている巨人だってただの一般人を殺して回っただけでハンターも思われる死体はなかった。

ハンターを殺す為じゃない、一般人を殺すためのやり方だ。

モヤだってそうだがこいつはこいつで一般人でもハンターでも無く明確にイレギュラーな私を狙い撃ちして来た。


「人間とモンスターの融合目的で襲うのなら生きたまま攫うはずだ。それは学生の誘拐事件で血痕が検出されていない事からも明らかだ。

 なら何故一般人を殺して回る?理由があるのか?無いならないでいいがあるとするのならば拙い気がするな」


空にいても意味がないので地上に降りる。

すると栞が駆け寄って来るのが見えた。


「店長!ヤクザと思わしき男性数名が腕に注射を打っている所を目撃!更にモンスター化しました!」


「変身が解けるタイプなら尋問でも拷問でも何でもして吐かせる事が出来るが……出来ないのなら最悪だが貴重な情報源を失う事になる」


「今は目撃したハンターかの内2名が現場に対応しています!」


「ランクは?」


「Aとの事です」


「よし来た!!消化不良だった!!!」


「あっ、ちょ、店長!」


私を栞が呼び止める声が聞こえた気がするが気にしない。

モンスターの位置の把握だけなら悪魔の特性である程度分かる!


「よし!私の!!……私の消化不良代わりの……相手は」


既に終わっていた。


尋常ではない消化不良の気分に襲われ八つ当たりとして地面に縛り付けていた巨人の鼻をもぐ事で何とか鎮めようとするが鎮まらない。


「店長!だから話を最後まで聞いて下さいとあれほど!!」


「久々に面白い敵がいてかなり遊べると思ったんだ……肩透かしを食らったんだ。いや、何というか……はーーーーー」


とんでもなくデカい溜息が出る。

もう人目とかどうでもいい。


「栞敵勢力が攻勢を仕掛けるにしても今回はかなり早めに鎮圧出来た。だからあちらの予定より計画は遅れるはずだかや私は休んで遊ぶ」


「店は?」


「やらん。冷蔵庫に入ってるケーキやプリン等は適当に近所に配って処理しておいてくれ。期限あるし大丈夫だろ。

 在庫の補充は政府に頼めば勝手にやってくれるし」


「なら久しぶりに遠出して食べ歩きでもします?」


「そうするかぁ」


何か閉まらない終わり方だなぁ


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