第8話うねり③


テレビを見ている。

そこには一昨日のモンスターが地上に現れた事が報道されていた。

本来モンスターはダンジョンからは出られない事が世の中の常識であり事実それが覆され世間を混乱させている。


「ここほどではなくとも全国で小規模だがモンスターが地上に出現する異常事態があったのか。被害は規模相応で経済的にもさほど影響はないなら気分転換の旅行にも行けるかな?」


全国的に見て1番被害が大きかったのは巨人やモヤ、その他のモンスターが現れたここだった。

主に(私の攻撃による)地面の隆起、陥没、水道管の破裂、建物のガラス系大体破損、車等々

被害総額は低く見積もって数十億円。

原因は主に私だが被害額の補填は勿論政府が払う。


「昔政府と契約する時に脅しまくってて正解だったぁぁ。流石に私が原因で住まいや商売が駄目になったら気まずい、しかも私は万能ではないからな!!!」


階段を降りる音が聞こえた。

姿が見えると動き易く中々洒落た格好の栞が現れる。


「栞準備は出来たのか?」


「今回は店長が財布を落とした時見たいな事にならないよう私が管理しますからね!!」


「まだ根に持ってたのか……」


10ヶ月前

同じ様に栞と出掛け日

色々な食べ物を食べ服を買い遊んでいた。

そして1番高い買い物をしようとした時に財布がなくなっている事に気付き問題になる。

その時栞が近場に住んでいる政府の人に連絡をして何とかしてもらった。


「政府の奴が来るまで店員と別室で待機は確かに嫌だが流石に許せ?」


「恥ずかしかったんですから!!」


怒りながら「行きますよ!」と言い店の外に出て行く。

もちろん私もテレビを消して出て行った。

店の鍵は栞が閉める。


「そう言えば行きたい所は決めてるのか?」


「食べ歩きなら離れた所に良い所があるんでそこ行きます。ただし電車に乗らないと行けないです」


「あそこ人多いから嫌なんだよ」


「店長寝るでしょ」


「それ言うな」


あまり文句も言えず栞の言葉に従い行動する。

私自身の身長が男含めても大きい事もあってか必ず視線を集めた。


「…………」


「言っておきますが私も1人で行動するのなら人目は集めてますから私を見ても無駄ですよ。それに店長は身長だけでなくその面もあって注目の集め易さ倍増です。

 羨ましいくらい出来の良い顔立ちですよ!」


「栞も可愛いと思うぞ?」


「可愛いと!カッコいいは!違う!店長の女性的カッコよさは誰だって憧れます!」


「照れるな、担ぎたくなるっ」


「それはマジでやめて下さい」


そんなに???

4歳の時とか肩車したらあんなにはしゃいでいたのに??

バイトモードの口調なら人懐っこい犬みたいなんだが……まぁこっちも悪くない


そしてなんやかんやあり電車に乗る事が出来た。

何人かの通行人はスマホで私らを撮っていたな……直接話しかけて来るよりマシだから見逃してはいるが少し鬱陶しい。


気分転換に旅行に来たのに気分を害されたのでは流石に意味がない。

次撮って来た奴がいれば黙らすか。





「結局何も無かったから良し」


「普段寝る人が寝ずに起きて明らかに「話しかけるな話しかけたら殺す」ってオーラ出してたらそりゃあスマホも仕舞いますって。

 幾ら顔が良いにしても明らかに高価な耳飾りやその身長から考えてハンターの可能性を考えますから」


「軟弱だなぁ」


「それら気遣いが出来るっていうんですよ。多分」


「多分かよ」


電車から降りくだらい会話をしながら街を歩く。

そこら辺から甘そうな匂いが漂ってくる。


「何か……イベントみたいですね?」


「道路を封鎖して屋台が沢山だな」


焼きそば、やお好み焼き、唐揚げ等の多種多様な食べ物お菓子が販売されている。


喫茶店や専門店でデザート巡りをする話だったがこれは予定を変えるか!


「栞」


「分かってます。私もこういうのはあまり経験ないので何か買いましょう。旅は一期一会ですから」


「おじさんたこ焼き1つ!」


「あいよ!っておぉ!ねえちゃん随分と体がデカいじゃねぇか!何かスポーツでもやってたのかい?」


「いや何もやってないな。予想を裏切る形で悪いね」


「いーや!気にすんな!そんな別嬪さんに謝られたら俺ぁ男共に背中から刺されらぁ!」


マスクをしているおかげで大きい声で話していても問題はない。

更に話しながらでも手元ではたこ焼きを器用に操っている。


これが職人というものか


「2人は姉妹か何かかいい?」


「違うよおじさんどっちかって言うと私は店長の娘だよ。義理だけどね?」


「む、娘ぇ?!えれぇ若いねぇちゃんだと思ったが母親だったかぁ!」


私はまだまだ若い。

悪魔族的にも全然若い

だが母親でも可笑しくはない。

それでも義理の娘と姉妹に間違われるのは存外嬉しいものだな


「はいよ!たこ焼きいっちょー!」


「ありがとうなおじさん」


「にしても嬢ちゃんは食べないのかい?」


「沢山食べ歩きたいから一個買って分けるつもり!悪いね2個買えなくて!」


「美味しいと思ってくれるのなら1個も2個も同じよ!」


「じゃあね」


適当に手を振って別れを告げる。


栞に爪楊枝で刺したたこ焼きを渡す。


「いただきます。はむっあつっ!はふはふ……!」


「ははは!熱いのは分かりきっていただろうに!」


「こういうのは勢いですよ!店長!」


「あっ」


手元からたこ焼きと爪楊枝を奪うと今の私と同じようにたこ焼きを突き出して来た。


「さ!食べましょう!!」


「ふんっ!私は種族的に人間とは違うのだよ。たかだか食べ物の熱さ程度で声を荒げるなどあっつ!!!!」




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