第6話うねり①


2日前栞と一緒に聞いた話を思い出しながらその時の資料を眺める。

決して楽観視出来るものでは無い内容。

そして悍ましい


「人間の生態情報を持つ見た目が明らかに人ではないモンスター、その姿は人狼系、合獣系、不定形系が確認されている。

 人の形では無い器に人の情報を埋め込む事は至難の業と聞いていたがこれほど多くの新種が見かけられ捕まえられたというのなら……私の想像を超えて技術の進歩が行われているか」


「店長お気に入りのミルク紅茶置いておきますね〜!」


「お〜」


仕事用のテンションになった栞から最近お気に入りになったミルク紅茶を貰う。

一口飲む


「落ち着くぅぅぇ」


「変な出さんで下さい店長」


何か栞に呆れられたが知らん

美味さ優先だろう」


「出てる心の声出てるよ店長」


「はっ!!」


す、少しばかり恥ずかしいが気にしていては負けだ!ここは気にしていないという態度を取るしかない。


「そんなか事より栞上から何か報告はあったのか?」


「…………全国でもやはり誘拐や特定の場所でしか目撃されていない事例があったみたいです」


「…………っ」


思わず額を叩く。

全国で同じ事件が発生しているのなら同じ組織の犯行がほぼ確定する。

そうすると全国という規模でぶつかり合いが発生出て来てしまった。

私1人ではカバー出来る範囲には限界がある……ちっ


「新種に共通するのがどれも移動スピードがBランクのハンターでようやく相手出来るほどに速いという点か、高い性能の新種が早く量産可能であればハンターを集めて戦争になった時まずいな」


「店長みたいに徹底的にバフ、デバフのスペシャリストに特化してるのならある程度ランクが低くても集団で行動の制限は出来そう」


「なら壁役の人数が必要になるか」


「数集めないと行けないのが難点ですね」


────!


「「ん?」」


────────!!!


─────ァア!


「ダンジョンの外なのにモンスターの声?!」


「まさか勘付かれた訳ではあるまいな??」


定休日の日故に格好が動き易いのが幸いしてすぐに現場に迎える。


「栞行くぞ、防具は無し!武器だけで対処するぞ!」


「はい!」


一瞬で仕事モードの口調を辞めハンター、私の養子のとしての力強い口調に変わる。

いつでもモンスターを殺せるよう栞は耳飾りを槍に変えながら走った。


イレギュラーな存在だからまずは様子見からだ!


「は?」


「これは……酷いな」


到着した現場は悲惨の一言だった。

体が上下に分かれた人の死体、散らばる腕、脚等。

中には頭部も


「……栞悪いが手を出すな。お前はまだ生きている市民の避難、警護、救助を全てこなせ。私の目の前にこので遊んでいる」


「はい」


すぐに行動に移し私の側から離れる。


「ハンターから忌み嫌われるゴミクソダンジョン代表巨人庭園からクソ巨人がお出ましとは恐れ入る、迷子か?」


魔力を放出し巨人に纏わり付かせると即座に魔法に作り替えた。


「ガァっ?!!!!!!!」


まるで重力が何倍、何十倍に変わったかのように巨人が膝を着き、腕で体を支える。


「まだ頭が高い」


今度は魔力を魔法に変えて脚を膝から斬り落とした。


「ガァァアアアアアアァア!!」


「次は腕」


また魔法が発動し今度は腕が斬り落とされる。


「巨人庭園の巨人かと思ったが……少しだけダンジョン産のやつとは違う?まるで人間性がゼロの人間のような……だが体が大きいだと?」


資料に載っていた新種は人狼系以外全く見た目に人間っぽさが見えなかった。


「人間の生態情報を巨人に入れたら見た目が少し変化した?」


まぁ、こうも容易く捕まえられたのだから調査は幾らでも出来る


「それでも私からの罰は与えさせて貰うがな。脚が泣く《クライ》腕が泣く《クライ》……夜が笑う《ホラーナイト》」


重度の痛みを伴う悪夢、幻痛でありながら人間に与えればショック死もありえてしまう悪魔的な魔法。

だが同時に死ねぬ恐怖も与えようか


「聖女のヴァージンホープ


癒しの魔法

それは常に精神を正しく律してくれる癒しの声……私製だがな

悪魔が聖女と名の付く魔法を使うのもおかしいが……地球で見た漫画を参照したらこうもなる。


「痛みで暴れ回りたい、だけど動けない、だけど癒しがあるから大丈夫、だけど全然痛い。

 人を潰した痛みを幻痛で済ませているのだから私としては温情だぞ?誰かは知らぬ元人間」


もう目の前の巨人は無力化出来たと判断する。


「死者はざっと30か……しばらく店休業になるかもなぁ」


ため息が溢れる

だが仕方がない明らかに誰かが何かを目的として意図したモンスターの出現に見える。


「────ァア」


「あぁ、店で聞こえてきた声はお前の方だったか」


背後から掠れた声が聞こえる。

振り返ると人型の黒いモヤがいた。


こいつは、何だ?

元の世界でもこんなモンスターは見なかった。

やはりこの世界特有の発想故の実験結果?


「アァア!!!」


「っ!!」


ガン!!!


突如来た攻撃を咄嗟に反射で防ぐ。


この私でも見失いかける速さだと?!!

ぐっ!力も中々に強い!!

押し負けない膂力はむしろ誉めるべきか?!


「今気付いたがモヤなのに鋼鉄の如く硬さがある!」


「ァア!!」


「ちっ!」


胴体を蹴り距離を取ると持ち手が刀身ほどある剣を実体化させる。

そこから私が一歩踏み込み攻撃を仕掛けるが弾かれ、反撃、避け、攻撃を何度も繰り返した。


「……良い」


ガン!


「良い!」


ガン!!!!!!


「良い運動になるぞモヤぁ!!」


ほんの少し理性を飛ばす。

そうする事で膂力が増えるからだ。


「うぅぅらぁあっ!」


だが理性を飛ばしても判断は間違えない。


「ちょっと!空で話そうか!」


「アァア!!」










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