第3話噂②


店を閉め掃除を栞と分担すると店の出入り口に鍵を閉め2階に上がる。

一応栞はこの店に寝泊まりしているが普段はバイトを掛け持ちしてるからか寝る時とこの店でバイトをする時意以外は帰って来ない。


自分の部屋に入った栞を見ると私も自分の部屋に入り着替えをした。

エプロンを脱ぎ籠に洗濯物を入れる。


「さて、少し探索するのなら余り目立つ格好は駄目だな。うーーむ一体どんな格好が目立たないのか……」


目の前に広がる衣類を眺め思考を巡らせる。

そもそもどれだけ地味な格好をしようと私自身の身長が193㎝もあれば嫌でも目立つ。

どうしても目立つというのならシンプルな格好にすれば逆に目立たないか?


「靴はスニーカー、下は動き易さ重視のスキニー?と言ったかこれを履いて……上は春夏秋冬全てで使えるアンダーシャツ……の更に上に…………選択肢が多すぎる」


まだこのに来る前の生活なら選択肢は今より遥かに少なかったっ!!

嬉しい悲鳴と言うもの何だろうが私は少々複雑だな!


そんな愚痴を溢していた私はあるが目に入る。

これなら違和感は無いと思った。


「ハンターと名乗る奴らは想像しているより多いせいか探索での格好をそのまま普段着にしている者もいるな……なら私の身長でこれを着ればハンターの休日だとでも誤認させる事が出来る。

 ふっ我ながら名案だな。多少目立つだろうがハンターという存在の人口比率から考えると全然あり得る範疇だ。これなら栞も文句は言えんだろう」


即座に着替え財布という出掛ける為に必須のアイテムを持ち部屋を出て栞の部屋へと向かう!





「いや普通に目立つよ店長」


何故だろう栞から冷静なツッコミを入れられると妙に腹が立つ。

一回だけデコピンを入れておく


「いてっ、全く店長今から出掛けるんですからこのノリ控えて下さい」


「腹が立たなければ幾らでも控えるさ。それより栞念の為のは持ったか?ダンジョンに関連事件が起きた場合に無手だと疲れるぞ?」


「17年前のダンジョン事件で私を私を拾いダンジョン生物にも負けないほど強く育ててくれたのは店長ですよ?

 Cランク辺りまでなら無手でも余裕です。それに武器はちゃんと持ってます」


そう言い耳飾りを見せてくる。

私が3年前に上げた装備だったな。

確か使用者の魔力に馴染ませると遠くに離れても強く念じれば手元に戻って来る槍になるんだったか。


私には必要のない物だったが栞にはかなり役立っているようだった。


「それがあるならまぁ良い準備が出来たという事で早速出掛けるだまずは……彼女達の言っていた学生の失踪事件を調べるとしようか。一応私が動く事は伝えたのか?」


「既に伝えていますよ。久しぶりの連絡だったせいか少し慌てていたのは面白かったです」


「私の性格移ったか?」


私の他人が慌てている様子が好きな事が見事に継承されていて……少し嬉しく感じる。

義理の娘になるがそんな事を感じさせない普段のやりとりは戦争でやさぐれた時期が会った私にはとても心地よい。


店を出て彼女達の着ていた制服を良く見かける場所まで歩く。

ハンターと呼ばれる職業の見た目に通ずる服を着ているせいかやはり視線を集めてしまう。

しかし私の店から離れた所にダンジョンがある事も相まって言うほど目立つ格好では無くなっている。


「彼女達の通っている学校はどこに?」


「あそこです」


遠くに見えるそこまで高くない、なんなら低い山の頂上に大きな学校が建っているのが見える。

更にその横にももう一つの校舎が見えた。


「今まで気にも留めなかったが意外と大きい学校だったんだなアレ」


「何かと人が多くなりがちなんですよ女子校って。しかもハンターという職業は意外に女子にも人気なんですよ市民を守るヒーロー的存在に見えるし命を賭ける分実入りは普通のサラリーマンの倍言ったりするし単純にお金持ちとの出会い……とか」


「逞しいねぇ」


栞の自分もやっているハンターの話なだけあって楽しそうに話すな。


「ふふ……っとそう言えば行方不明になった生徒の最後の足跡分かるな?」


「上司に報告したら直ぐに連絡よこしてくれましたよ。また少し歩きます」


「ジュースでも飲みながら行くか」


自販機でミルクの入った紅茶という物を2つ買う。


「ほれ栞」


「ありがとうございます店長」


歩きながら蓋を開け一口飲む。


「んっ……美味い、美味いなこれ!」


「私は結構愛飲してますけど初めて飲むとは意外ですよ」


「そりゃあお前普段家にいないからな。何度も言うがお金の心配はいらないんだからバイトしなくても良いって言ってるだろう?」


「そうしたいですけど甘え過ぎですし自立しないと駄目人間になります。それに親に甘えすぎるから駄目だからバイトを掛け持ちしてる女って肩書きがあると話相手の口が緩くなるよ!」


「ホント逞しいよ……」


言外に「お前に育てた結果が私だぞ!」と言われ苦笑いしか出てこない。

そんなくだらないやり取りをしている間にも足は進み目的の場所に着く。


「ここが最新の」


「生徒が最後に目撃された場所」


そこは人目のつかない路地裏だった。


「小さい車が入って来れる程の余裕も無く、人1人が通るのがやっとの道」


「そして脇にある小さな広場……」


「これはもしかしなくても条件を絞りに絞る代わりに魔導具程度じゃ足を掴ませない超が付く条件特化の魔法を使った誘拐だな」


小さな広場を一瞥する。


「ここまで条件を絞られると流石の私でも解決するのは難儀しそうだ


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