第2話噂①


「神隠し?」


「はい、私達が通っている学校生徒のみならず他校の生徒達も何人か行方不明になっているんです」


「そこまでなら親の了承、そしてダンジョンに潜る為の免許も無しにダンジョンに入り死んだ可能性があるので多少騒がれる程度だと思うんですが少し事情が異なるんですよ」


「事情?その事情っていうのは一体何だい?」


自分達以外の客もいない堂々と話せるとあってたこの子達は随分と饒舌だな。


「さっきも言った通りヤの付く人達が関わっている可能性がかなり高いと噂になっています」


「その根拠は?」


「生徒が行方不明になったと思われる付近でガラの悪い人が必ず目撃されていたらしいんですよ!」


……なるほど子供の誘拐には必ず人相の悪い人間が関与していた。

子供を攫った所で何が出来るというんだ。


「ちなみに聞くが性別は?」


「バラバラらしいです」


「う〜ん」


女子生徒だけなら快楽目的だと断定して良い所だが男子生徒も拐われている……か。

これだけで目的が一気に分からなくなる。

私は探偵じゃないがこの類の話はやはり聞いてて楽しい。

多少男女両方を誘拐する目的に目星が付くがどうしたものか……いっそ関連付けられるような話がないか聞くか。


「やはり考えた所で私の頭じゃ分からない。好奇心だけじゃ事件は解決出来ないって訳か」


「そう簡単に解決出来たら警察の仕事とかなくなっちゃいますよ」


「ははは!確かに!…………栞お前いたのか」


「僕は話の初めからいましたよ」


女子生徒達に同意を求めたら肯定が返って来た。

全くこいつは私の視界に入らない事に関しては一流だな


「この話は考えた所で行き止まりだな。君達他に面白い話はないか?久しく面白い話を聞いていなかったからな。私はどうやら興奮しているらしい」


「いいですよ。栞さんの反応も可愛いので私達も話していてとても楽しいですから!」


「か、可愛いとか言うな……照れるだろ」


「ふふふ本当に面白いです」


「そうだ!この店とも何かの縁ですし店長さんの名前教えてください!友達になろうよ!」


「ん〜?別に構わない、友達になろうか。名前は私から言っていこうかな。私の名前は少し長いぞ?アリエス・ブリス・ユースティティスだ。ミドルネームがあるがそこまで特別な意味じゃないから気にするな」


「店長後半の名前噛みそうっす」


「そのまま舌噛めばいい」


「ひどいっ?!」


「余りうるさくするな栞。ほれ、お前の自己紹介の番だ」


「いつか覚えていて下さい店長。ゔゔっん。僕の名前は愛崎みなさきしおりって言うんだよろしく!」


「よろしくお願いします栞さん」


「次は私が行くよ。私は秋葉あきはかおる!部活に所属していないけど運動は好き!」


3人の女子生徒の中で1番元気そうな子供の名前が秋葉薫だな


「なら次は私ね。私は二条にじょう雪姫ゆき。雪の姫と書いてゆきと言います。よろしくお願いしますね栞さん、アリエスさん」


1番お嬢様という佇まいのこの娘が二条雪姫……未だにそうは読めない言いたくなる漢字組み合わせが理解出来ない時がある。

だが雪の姫でゆき……ギリギリ理解出来る範囲だ。


「最後は私です。私の名前は狐城こしろみやび。前2人と幼馴染なのでとても仲が良いのです」


「よし、全員自己紹介が終わったな。早速で悪いが話の続きを聞いてもいいかい?」


「えぇもちろん!」


「あ、あの話はどう?ほら!ダンジョンの都市伝説!」


「ほう!ダンジョンの!それはとても面白そうだ!」


「ダンジョンと関わりがないから凄い気になる!」


「落ち着け栞。それでその都市伝説っていうのは?」


「今日本にあるダンジョンは34個だというのは分かりますか?」


「それは知っているさ」


「実はダンジョンが出来て十数年……新種が出ないはずのダンジョンで新種を見たという新米ハンターさんの噂が幾つかあるんです!」


「……へぇ。それは面白い」


「……」


口角が上がる。

そして何となく、言い表せない違和感も同時に感じた。


「やはり人の来ない店を持つと情報が古くなる。初めて聞いた楽しいなこの話は!」


「分かる口ですね!アリエスさん!」


そこから1時間

私達は3人と楽しく話しつつ噂話をそれとなく引き出した。

3人も私や栞と話すのが楽しいのか良く喋ってくれたよ。


「今日は楽しかった。面白い都市伝説を聞かせてくれたお礼だ。コーヒーは200円、ケーキは300円におまけしておくよ」


「え?!そんな悪いです!」


「こんなに美味しいのにここまで安いと罪悪感あるよ?!!」


「私達お金持ってない訳じゃないですから相応の値段で大丈夫です!」


「あははは!面白いな3人は。気にするな、本当に今日の話は楽しかったんだ。普段は栞と2人だからな新鮮味があってとても良かった。割引はその正当な報酬と思ってくれ。

 安心出来ないならもう少し付けたそう。私の店は半額以下まで割引した程度で赤字になるほどお金を持って無い訳ではない。実を言うと無料にしても良いくらいだ」


「「「む、えぇ……??」」」


流石に無料の一言には困惑していた。


「まぁ次からは正規の値段で払って貰うから。今日は得をしたと思いなさい」


「「「ありがとうございます!!」」」



カランカラン


3人が店から出て行った。


「栞」


「はい」


「聞いていたな?学生の失踪事件が彼女達の近くの学校以外にも全国で起きているかどうか調べろ。

 他にも新種のモンスターの件や、詐欺、宗教等のダンジョンに関わる全てを調べろとお前の上に伝えろ」


「分かりました」


神隠し、新種のモンスター、詐欺、宗教

全てにダンジョンが関係している。


「また繰り返すつもりなのか?」

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