第11話
しばらくは本当に外に出して貰えず、鼈甲簪を延々と研いだり彫ったりしていた。
蘇芳は毎日帰ってくるし、銀時はちょいちょい菓子を持って来ては一緒に茶を飲んで行き、たまに夕飯を3人で食ったり。
俺って囲われてんの?
未だ男女問わず美人が攫われてるそうで。この町そんなに美人が居たんか?
いや女郎屋にいるのは結構綺麗だがぶっちゃけ化粧の勝利だし。
その辺で見かけた娘がどうとかは興味が無かったからわからん。
「東の堀で仏さん2体が捨てられていた」
酒を持ってやって来た銀時が苦い顔で言った。
「かなり暴行の跡があって顔の判別もできない。奉行所は動けないらしい」
かなり有力な後ろがいるって事か?
「このまま好きにさせて、俺はずっと閉じこもってなきゃいけないって!?隠れてやり過ごすっていったって無理があるぞ」
「あんな殺され方するってわかっていて外に出せんだろうが」
何でヤられる前提なんだ!
「雪火を使ってるならそのうち自爆する。もう少し待て」
銀時は諭すように言うが、俺はお前らが守ってくれて暮らせてるが他の町民がこのままじゃ食い詰めるだろう?
奉行が動けないなら誰が助けてくれるんだ?
互いに手酌で酒を飲んでいるが全然酔う気がしねぇ。ずっと篭ってて楽しくなんて飲めるか?
「自分で使って無かったら?」
「いずれ潮目が変わる。待つしかないんだ」
雪火なんて強い薬を自分で入手して使うやつなんかいるか!?あんな薬どんな理由があっても人を弄ぶために使うのだってバカだろう。
ましてや裏の者に狙われる隙になる。
確かにいずれ自爆するだろう。でもそれまでにどれだけ犠牲が?
玄関から音がして蘇芳が帰って来た。
俺たちを見て、
「おう、俺がいない間にずるいじゃねえか」
と、戸棚から酒瓶をいくつか出して来た。
買って来たらしい寿司や煮魚が膳に並べられて。
「店の連中もほとんど外に出せねぇから商売あがったりだ。迷惑なこった」
蘇芳が普段より口調荒くぼやいて煙草盆から葉巻を取り出す。
「代官の筋の客がそこらの店で評判の美人を聞いて回ってるらしい。うちの奴らにゃ店の一番でも言っておくようにしてあるが他の店じゃ竜のことも出たらしい」
「あ“?」
「長屋の方に人を探しに来ているっぽい奴は来てるらしいが助左や捨三が追い返してる」
銀時が思い出したように言う。そこは最優先で出す情報だったろ?
マジで狙われてるのか?でもそこらの奴なら対処出来るんだが?
「竜は年齢的には範囲外だろうが美人度が高いからな」
と、蘇芳が有り難くねぇことを言う。
そのまま酒宴っぽい時間が流れて酒が尽きそうになった頃、玄関から騒音が入って来た。
「銀時さん!」
「兄貴!!」
「若ぁ!!」
銀時の手下たちが慌てて入って来て。
「西堀に女の遺体が!」
「竜兄さんの簪付けてて」
「騒ぎを止めてるんで奉行所が来る前に検分してくだせぇ」
それぞれがまとまり無く喋っている。
俺の簪?そんなんこの町にたくさん出回ってる。
「行く。竜は出るな」
銀時がそう言ったが、簪のデザインで大体誰の物か分かる。身元確認なら俺が出来るだろう?
「・・・大騒ぎになりそうな場所で俺にちょっかい掛けるやつなんか居るもんか」
何を言われても着いて行く。
蘇芳が複雑な顔をしているが流石に止める気はないらしい。
とにかく急いだ方がいいだろうから先に出た。後から慌てて着いてきたが。
「竜、絶対に暴走するな」
確定したような事言うなよ。銀時。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます