第9話

 気怠そうな銀時に茶と菓子を出してやったら、茶を一気に煽った。舌無事か?


「トリはしばらく隣町の兄さんちに預けた。お前達もなるべく人目に付かないようにしろ」


「あら、私も入ってるの?」 

 お蝶さんがキョトンとしている。何事も知らされてないから当然だ。俺もいきなり何だ?と思っているが、蘇芳は一瞬眉を顰めて煙管に火を点ける。足を組み直したからか褌見えてんぞ。お蝶さんに見せんじゃねぇ。


「代官が見目の良いのは男でも女でも婚姻していてもガキでも強引に屋敷に呼んで手を出すらしい。店の者達にもなるべく表に出歩くなと通達した」

 平民が絶対断れないから好き放題か。


「しばらくって言われても生活が掛かっていると無理でしょう?」

 お蝶さんが首を傾げて問う。

 

「一応奉行所には報告してあるがすぐには動かんだろう」

 銀時は菓子を一口で食べて二杯目を飲んでため息を吐く。


「俺も範囲内なのか?」

 一瞬静寂になりおかしな目で見られる。


「お前が見目良くないって言うならそこらの人間はみな範囲外だろう?」


 そりゃ不細工ではないと思うが、女好きのオッサン?に好まれる対象ではないと思うが。男もガキもありなら変態か?なら有り得るのか?


「私が男ならちょっと味見したいわねぇ?」

 は?お蝶さん?俺の事、性的な方で興味ないと思っていたぞ?って言うか男ならって何だ?


 お蝶さん一筋の銀時が無茶苦茶不機嫌になってる。俺のせいじゃないだろ?


 しかし代官って芙蓉を見受けしたばかりだろう?何でそんなあちこち手を出してるんだ?

 見受け出来るほど金があるなら女郎や蔭間買い放題じゃねぇのか?


「お蝶、お前しばらく虎杖屋の奥で住み込みで芸事のお師匠さんやってくんな。一人暮らしはまずいと思うぜ」

 蘇芳が提案する。それなら外に出なくても丁稚や小僧が細かいことをしてくれるだろう。

「あら?なら竜さんもそうしたら?」


「竜はうちの屋敷に来い」


 お蝶さんは店で俺は自宅?


「竜が店にいたらみんなが浮ついて仕事出来ないだろう?それに一人にしておくと何かやらかしそうだ」


 まぁ虎杖屋系の店なら俺に無理矢理迫るのもいねぇと思うがな。やらかすって何を?


「俺はいざとなったら町出て逃げれるしいかねぇ」

 って言った瞬間に蘇芳と銀時に抑え込まれた。

「簡単に抑え込まれるのに逃げられる?この町も簡単に出ていくだと!?」


 いや、お前らが襲って来るとか思った事なかったし今のは仕方なくね?

 無茶苦茶怒気を当てられてびっくりだ。


「あらあらぁ、今のは竜さんが悪いわねぇ」

 何でそんな平気な感じで感想言ってんだ?肝座ってんな?


「おい!今の音は何だ?」


 戸口がダーンって開けられて着崩れた助左が入ってきて抑え込まれている俺を見る。

「・・・取り込み中か!悪かったな」

って出て行こうとした。

 助けに来てくれたっぽいのはありがてぇけどあっさり納得して出ていくな!!


 この状況が一体どんな取り込み中なんだよ?


 お蝶さんが引き留めて、助左は着物を整えたけど、ぜってぇ隣に女置いてきてるから帰してやってくれ。

 


 






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