第6話・旅に出る準備
土を掘り終えて、全員の遺体を埋めた。
雨は気が付いたら止んでいて今は晴れている。
俺は埋めた遺体の前に座り、そっと手を合わせる。
「イト、ジーク、お父さん、村の皆。俺は今から旅に出るよ。旅に出て英雄になってまた戻ってくるよ」
そう呟いた。
おそらく気のせいだろうが。不思議と頑張ってねという声が聞こえた気がした。
いいや違う、気のせいとかじゃない。天国で皆が俺を応援してくれてるんだ。
「ありがとう」
俺は立ち上がると。旅に出る準備をする為に村にある金物物と装備を集める。
少し申し訳ない思いはある。だけどこれから強くなるために旅に出るとはいえ、お金は必要だし、装備も必要だ。
少なくとも無一文というのはかなりきついものがある。
だからこれは必要なことだ。
そう割り切って焼け落ちた家を漁る。
一人で黙々とお金を探していると村唯一の道具屋から金庫が見つかった。
道具屋の商品はほぼ全て焼けてしまい使い物にならなくなってしまっていたが、金庫はしっかりと残っており、更にありがたいことに熱でダイヤルの部分が解けて簡単に開けることが出来た。
中を見ると金貨が12枚・銀貨が24枚も入っていた。
金貨1枚で子供が入れるくらいの袋一杯の小麦が10個分のお金だから。かなりの額だと思う。
かなり嬉しい気持ちになりつつも。いつも山で取れた薬草を買い取ってくれたり、風邪をひいたときは薬を売ってくれたあの優しい道具屋のおばあちゃんの事を思うと自然と目が熱くなる。
「おばあちゃん。ありがたく使わせていただきます」
罪滅ぼしか、罪悪感を減らす為か俺はそう言って道具屋に再度手を合わせた。
――――――――――――――――――
その後村を漁った結果、更に追加で金貨7枚と銀貨が28枚見つかった。
合計で金貨19枚と銀貨52枚、想像以上のお金に少し怖くなりつつも、大事に使おうと思いながらしっかりと一つの袋にまとめて入れた。
次に装備品だ。
お父さんから買ってもらった剣があるが流石に酷使し過ぎたのか、かなりボロボロでもう使い物にならなくなっていた。しょうがないので代わりの剣を探していた時、ジークの使っていた剣が目についた。
俺の剣はボロボロで刃こぼれだらけなのに、なぜかジークの剣はパッと見た感じはボロボロに見えるが刃こぼれのしてないきちんと使える剣だった。
何となく手に取ると不思議とよく手になじんだ。
まるでずっと使ってきた剣のように。
・・・・・・・・・
「ジーク、お前の剣使わせて貰うぞ」
返事は絶対に返ってこないはずなのに、不思議と、分かった連れて行けと聞こえたような気がした。
「ありがとうジーク」
そうして俺は村から集めたお金にジークの形見の剣、そして親父から貰った投擲ナイフと弓。
後は今日の朝行った狩りの際に迷子には絶対にならないと思うが一応という理由で常に用意して、邪魔にならないように森に隠してある、水筒と保存食が入ったバックを担ぎ生まれてからずっと住んでいた村を今日初めて一人で出た。
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